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貯水槽の水を食品製造用水として使用するには?検査や点検の頻度や怠ったときの罰則を解説

貯水槽の水を食品製造用水として使用するには?検査や点検の頻度や怠ったときの罰則を解説

水の管理食品にまつわる法律

食中毒衛生管理

貯水槽は、水道水を一時的に貯めておくための設備や施設のことです。

食品製造工場やビル内にある飲食店など、一度に大量の水を使う施設で水道水の供給量が減らないよう設置されることがあります。

貯水槽の中身は水道水なので、開業するときはそのまま使用しても問題ないと思う事業者もいるのではないでしょうか。

実は貯水槽の水を使って食品製造や調理をするには、水質検査が必要になります。

この記事では、なぜ水道水で満たされた貯水槽で水質検査が必要なのか、管理するときに確認しておきたい法律もあわせて解説します。

貯水槽の水を食品製造用水として使用するには?

貯水槽の水を食品製造用水として使用するには、【水道法に基づく水質検査登録機関】に水質検査を依頼する必要があります。

貯水槽に入るまでの水は水道局で管理されますが、貯水槽に入った水は貯水槽を設置した食品事業者の管理になるためです。

貯水槽は食品事業者の財産となるので、水道局の管理から外れてしまいます。

貯水槽の管理が悪いと、水質が悪化し貯水槽を利用する工場や施設で製造された商品が原因で食中毒などの健康被害が発生するリスクが高まります。

食品衛生法では、貯水槽の水を使って食品事業を営む場合、使用水が食品製造用水に適合しているかどうか水質検査をするよう義務付けています。

食品製造用水の水質検査は以下の記事で詳しく解説しているので、ご覧ください。

貯水槽の定期的な清掃や検査は法律で義務付けられている

貯水槽は設置者である食品事業者の財産の1つです。

貯水槽内に運ばれた水道水の水質を維持し、安全な水を使用するため水道法では設置者に定期的な検査や水槽内の清掃を法律で義務付けています。

貯水槽の管理に関する法律は次の3つです。

貯水槽の管理に関する法律

  • 水道法第34条の第2項
  • 水道法施行規則第55条
  • 水道法施行規則第56条

ここからは、上記3つの法律を確認し、貯水槽の設置者が押さえておくべき管理のポイントを見ていきましょう。

なお、法律によって規制されているのは貯水容量が10立方メートルを超える「簡易専用水道」です。

10立方メートル以下の容量の貯水槽には法律の規定はありません。

ただ、食品を扱う事業所なので、法律で決められた頻度での検査・清掃を実施しましょう。

登録検査機関の定期検査

「簡易専用水道」とみなされた貯水槽は、水道法第34条の2と水道法規則第56条に従い、設置者は年に1回以上の定期検査を受ける必要があります。

第三十四条の二 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。
水道法(第三十四条の二・2) | e-Gov法令検索
第五十六条 法第三十四条の二第二項の規定による検査は、毎年一回以上定期に行うものとする。
2 検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。
水道法施行規則(第五十六条) | e-Gov法令検索

定期検査は、厚生労働大臣の許可を受けた登録検査機関に依頼して実施しなければなりません

登録検査機関による貯水タンクの検査内容は次の通りです。

貯水槽の検査内容

  • 施設及びその管理状態に関する検査
  • 給水栓における水質検査
  • 書類の整理等に関する検査

登録検査機関による検査結果が出たら、設置者である食品事業者は管轄の保健所に届け出る必要があるので忘れないようにしましょう。

貯水槽の管理基準

貯水槽は「定期的な検査をすればそれで終わり」ではありません。

第34条2の第1項から「簡易専用水道」とみなされた貯水タンクは、厚生労働省令で定める基準に従って、管理する必要があります。

厚生労働省令で定める基準は、水道法規則第55条に記載されているので確認してみましょう。

貯水槽の清掃

貯水槽の清掃は毎年1回以上実施する必要があります。

また貯水槽の清掃は、設置者である食品事業者が自ら行うのではなく、専門的な技術を持ったプロに依頼します。

貯水槽の清掃を依頼するときは、「建築物環境衛生管理事業登録事業者名簿」に記載されている業者に依頼すると間違いないでしょう。

貯水槽・周辺施設の点検

水道法施行規則第55条で行う点検は、水道法第三十四条の二で行う専門業者の点検ではなく、管理者自ら行う点検のことを言います。

次のチェック項目に従って、貯水槽及び周辺施設を適宜点検しましょう。

貯水タンク及び周辺施設のチェック

  • 貯水タンクに亀裂は入っていないか
  • 雨水の混入などタンク内の水が汚染されていないか
  • タンク内に害虫などの混入はないか
  • 通気孔や排水管部分に防虫ネットは設置しているか
  • 貯水タンク周辺の整理整頓はできているか
  • 貯水タンクの蓋の施錠はしているか

貯水槽の水質確認

貯水槽を管理する食品事業者は、その日の稼働を始めるまえに蛇口から摂取した水の状態を確認しましょう。

  • 臭い
  • にごり

食品事業者はこれらに問題がないか確認します。

安全な水は安全な商品を製造するのに欠かせません。

「いつもと違う」「何か気になる」このように気になることがあれば、管轄の保健所または水道局に問い合わせましょう。

貯水槽の水の異常時の対応

食品製造工場や飲食店の厨房で使う貯水槽の水に異常がみつかったら、すぐに給水を止めましょう。

その日の製造や調理はストップし、従業員に蛇口の水は飲まないよう伝えます。

その後、管轄の保健所に問い合わせて、指示を仰ぎましょう。

貯水槽の検査や点検を怠ったときの罰則

水道法で定められている年1回の貯水槽の検査や点検を怠った事業者には、100万円以下の罰金が課される可能性があります。

第五十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
第八項 第三十四条の二第二項の規定に違反した者
水道法(第五十四条の第八項) | e-Gov法令検索

法律で定められている貯水槽の定期検査や清掃は、お客様へ安心・安全な食品を届けるために欠かせません。

貯水槽内の水が汚染されないよう、適切な管理を実施しましょう。

食品事業所が貯水槽の清掃・管理を怠ったときのリスク

貯水槽は年1回の検査・清掃が義務付けられていますが、貯水槽の設置場所によって、貯水槽内が汚れやすかったり、貯水槽内が劣化しやすかったりします。

貯水槽の清掃や管理が疎かになると次のリスクが高まります。

  • 汚泥や赤さびなどが槽の底に溜まる
  • 貯水槽の小さな亀裂に光が入り藻が繁殖する
  • 貯水槽の蓋の閉め忘れで虫などの異物が混入する

いずれも貯水槽内の水質汚染の原因となる重大なインシデントです。

このようなことにならないよう、事業主は定期的に検査や点検を行い必要に応じて貯水槽内の清掃や修繕を実施しましょう。

なお、貯水槽の耐用年数は約15年とされています。

貯水槽の耐用年数は設置場所や適切なメンテナンスによって前後しますが、15年を目安に交換する必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

貯水槽の水を食品製造用水として使用するには、【水道法に基づく水質検査登録機関】に水質検査を依頼し、その結果を保健所に提出しなければなりません。

貯水槽は所有者である食品事業主の財産の1つであり、施設に安全な水を供給する責任があるためです。

貯水槽の水が食品製造用水として使用が認められた後も、水道法で定められた定期的な検査と清掃を実施する必要があります。

まとめ

  • 貯水槽の管理・清掃は法律により定められている
  • 貯水槽に関する法律を違反すると100万円以下の罰金が科される可能性
  • 貯水槽は設置場所や施設規模に応じて検査・清掃の頻度を上げる

貯水槽に破損があったり汚れていたりすると水質が変化し、製造した商品に有害な菌や成分が混入してしまう恐れがあります。

貯水槽の水質に異常が見つかった場合は、消費者の健康被害を拡大させないよう速やかに製造を中止し、施設所在地が管轄する保健所へ連絡しましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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