Article読みもの

貯水タンクの法律にはどんなものがある?設置者が押さえておくべき4つのポイント

貯水タンクの法律にはどんなものがある?設置者が押さえておくべき4つのポイント

水の管理食品にまつわる法律

飲食店食中毒衛生管理

「貯水タンクの管理は法律があるの?」

「貯水タンクの管理を怠るとどんなリスクが生じる?」

貯水タンクとはその名の通り、水を一時的に溜めておく設備です。

食品製造工場やビル内にある飲食店など、一度に大量の水を使う施設で水道水の供給量が減らないよう設置されます。

「貯水タンク内は汚れやすい環境のため、検査や管理を怠ると水質が汚染され安心・安全な食の提供ができなくなります。」

そこで、今回は貯水タンクに定められている法律から設置者が押さえておくべきポイントを紹介します。

貯水タンクの法律にはどんなものがある?

飲食店や製造工場などで利用する貯水タンク容量が、10立方メートルを超えるものは「簡易専用水道」と呼ばれます。

貯水タンクが簡易専用水道とみなされると、水道法に従い貯水タンクの清掃・点検を定期的に実施する必要があります。

貯水タンクの清掃・点検に関連する法律は次の3つです。

  • 水道法第34条の第2項
  • 水道法施行規則第55条
  • 水道法施行規則第56条

ここからは、上記3つの法律を確認し、貯水タンクの設置者が押さえておくべき管理のポイントを解説します。

貯水タンクの法律1:登録検査機関による定期検査

「簡易専用水道」とみなされた貯水タンクは、水道法第34条の2と水道法規則第56条に従い、設置者は年に1回以上の定期検査を受ける必要があります。

第三十四条の二 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。
水道法(第三十四条の二・2) | e-Gov法令検索
第五十六条 法第三十四条の二第二項の規定による検査は、毎年一回以上定期に行うものとする。
2 検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。
水道法施行規則(第五十六条) | e-Gov法令検索

定期検査は、厚生労働大臣の許可を受けた登録検査機関に依頼して実施しなければなりません

登録検査機関による貯水タンクの検査内容は次の通りです。

貯水タンクの検査内容

  • 施設及びその管理状態に関する検査
  • 給水栓における水質検査
  • 書類の整理等に関する検査

登録検査機関による検査結果が出たら、設置者は管轄の保健所に連絡する必要があるので忘れずに行いましょう。

貯水タンクの法律2:管理基準に従い管理

貯水タンクは検査だけすればいいというものではありません。

第34条2の第1項から「簡易専用水道」とみなされた貯水タンクは、厚生労働省令で定める基準に従って、管理する必要があります

では、厚生労働省令で定める基準とはどのようなものなのでしょうか? その答えは、水道法規則第55条に記載されています。

第五十五条 法第三十四条の二第一項に規定する厚生労働省令で定める基準は、次に掲げるものとする。
一 水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと。
二 水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
三 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
四 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。

水道法施行規則(第五十五条) | e-Gov法令検索

それでは、1つずつ見ていきましょう。

貯水タンクの清掃

貯水タンクの清掃は、毎年1回以上必ず実施する必要があります。

貯水タンクの清掃は管理者自ら行うのではなく、専門的な技術や技能を持ったプロに依頼します。

各都道府県の「建築物環境衛生管理事業登録事業者名簿」に記載されている業者に依頼すると間違いないでしょう。

貯水タンク・周辺施設の点検

水道法施行規則第55条で行う点検は、水道法第三十四条の二で行う専門業者の点検ではなく、管理者自ら行う点検のことを言います。

次のチェック項目に従って、貯水タンク及び周辺施設を適宜点検しましょう。

貯水タンク及び周辺施設のチェック

  • 貯水タンクに亀裂は入っていないか
  • 雨水の混入などタンク内の水が汚染されていないか
  • タンク内に害虫などの混入はないか
  • 通気孔や排水管部分に防虫ネットは設置しているか
  • 貯水タンク周辺の整理整頓はできているか
  • 貯水タンクの蓋の施錠はしているか

これらのチェックを怠ったときのリスクについては、後ほど詳しく説明します。

貯水タンクの水質確認

1日1回、蛇口から採取した水の状態を確認しましょう。

  • 臭い
  • にごり

これら4つに問題がないか、チェックします。

何か1つでも気になることがあれば、管轄の保健所または水道局に問い合わせましょう。

水の異常時の対応

貯水タンク内の水が人の健康を害する恐れがあることがわかったら、すぐに給水を停止します。

そして、水を利用している人に、貯水タンク内の水を使用するのは危険であることを速やかに伝えましょう。

その後、管轄の保健所に連絡し、指示を仰ぎましょう。

貯水タンクの管理が法律によって義務付けられている理由

貯水タンク内には、水道管から引かれた水が常に満たされ、使用頻度によって1日に何度も入れ替わります。

貯水タンクは設置から月日が経つと、タンク内に湿気がこもってカビが生えたり、水垢がこびりついたりと不衛生な状態になります。

もし汚染された貯水タンクの水を飲食店や食品を扱う工場が使用してしまったら、食中毒や異物混入の事故が発生するリスクが高まるでしょう。

食中毒にならなかったとしても、臭いがしたりムシなどの異物が混入したりする恐れがあるので、飲食店や工場のイメージダウンに繋がりかねません。

大きな損害を被る前に、貯水タンクの法律で定められている年1回以上の清掃・点検を必ず行いましょう

貯水タンクの法律に従わなかったときの罰則

水道法第34条の2の第2項に従い、貯水タンクの定期検査や管理を適切に実施しなかった場合、法律違反となり100万円以下の罰則が適用されることがあります。

第五十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
第八項 第三十四条の二第二項の規定に違反した者
水道法(第五十四条の第八項) | e-Gov法令検索

法律で定められている貯水タンクの定期検査や清掃は、お客様へ安心・安全な食品を届けるために欠かせません。 貯水タンク内の水が汚染されないよう、適切な管理を実施しましょう。

貯水タンクの清掃・管理を怠ることによるリスク

貯水タンクの管理を怠ると次の4つのリスクが高まります。 いずれも貯水タンク内の水の水質汚染に繋がるので、怠らないようにしましょう。

汚泥や赤さびなどがタンクの底に溜まる

貯水タンクの清掃を怠ると、タンクの底に水垢が溜まり、やがて汚泥に代わります。

また、貯水タンクの材質によってはサビがこびりついてしまう恐れも。 汚泥も赤さびもどちらも貯水タンク内に滞留すると水質汚染に繋がります。

法律では1年に1回と決まっていますが、適宜清掃を行い、汚泥や赤さびが貯水タンクの底に溜まらないよう管理しましょう。

貯水タンクの亀裂から光が入り藻が繁殖

貯水タンク内に亀裂が入ると、漏水するのはもちろんのこと、亀裂から太陽の光が入り込みます。

水と光が組み合わさると、藻やヘドロ、苔が繁殖し貯水タンク内にこびりつきます。

藻やヘドロを繁殖させないよう、貯水タンクに亀裂を見つけたら、太陽光が内部に届く前に修繕を依頼しましょう。

雨水が入り込み水質が汚染

貯水タンクの点検時に蓋を閉め忘れてしまうと、雨水が入り込みます。

雨水には大気汚染物質などが含まれているため、貯水タンク内の清潔な水を汚染してしまう恐れがあります。

また大気汚染物質だけでなく、雨水が貯水タンクの入り口の汚れを伝って入り込むことにより、砂や微生物が入り込むこともあるかもしれません。

貯水タンク内の水を雨水で汚染しないためにも、点検後は蓋の締め忘れに注意しましょう。

害虫が貯水タンクに侵入

貯水タンクの蓋が空いていたり、貯水タンクと繋がる排水口に防虫網が設置されていなかったりすると、そこから害虫が侵入して貯水タンク内に入り込む恐れがあります。

害虫は寄生虫や病原菌などを持っているので、貯水タンク内に入り込み、水没してしまうと水を汚染してしまいます。

侵入したことに気付かずに水道水を使い続けると、蛇口から虫が出てくる恐れも。 想像しただけでも恐怖ですよね。

そうならないよう、貯水タンクの蓋は必ず施錠し、貯水タンクと繋がる排水口には防虫網を忘れずに設置しましょう。

まとめ:商品の安心・安全を保持するために貯水タンクの管理は重要

貯水タンクは、製造工場やビル内にある飲食店など大量の水を一度に供給する施設に欠かせない設備です。

しかし、水道水を一時的に貯めおくので定期的な清掃や管理をしないと、タンク内が汚れて水質が汚染されてしまう恐れがあります。

まとめ

  • 貯水タンクの管理・清掃は法律により定められている
  • 貯水タンクの法律を違反すると100万円以下の罰金が科される可能性あり
  • 貯水タンク内は水垢やカビが繁殖しやすいので適宜検査・清掃するのが望ましい

貯水タンクの設置・管理を任されている事業主の方は、安心・安全な食を提供するためにも、法律に従い定期的な検査と清掃を実施しましょう

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

この記事と同じカテゴリの記事を読む