「食中毒を予防するには具体的にどうやって温度管理をすればいい?」
「食中毒対策に有効な温度管理のコツとは?」
食中毒を防ぐには食中毒菌を増やさない温度管理が非常に重要です。
温度管理を正しく実施することで、効率よく効果的に食中毒を防止できます。
しかし「具体的な方法がわからない」と感じていたり、「とりあえず加熱さえしておけばいい」といった誤った意識で温度管理を行っていませんか?
そこで今回は食中毒予防のための温度管理について解説します
「温度管理の手を抜くと食中毒発生リスクが高まります。ポイントを押さえて、効率的に温度管理を行うことが大事!」
科学的な根拠に基づいて適切な温度管理を実行し、菌の繁殖を防いで食中毒リスクを減らしましょう。
食中毒予防には温度管理が重要な役目を果たす
食中毒の予防には、食中毒菌を増やさない温度管理の実施が求められます。
そもそも食品に食中毒菌が増えるためには以下の3つの条件が必要です。
- 栄養分
- 水分
- 温度
通常、食品にはこれらの条件が揃っており、「栄養分」と「水分」はほぼ管理できません。
しかし「温度」に関しては管理することが可能です。
つまり食中毒菌をふやさないために、唯一管理・対策できる要素が温度である、というわけです。
したがって、食中毒を予防するには適切な温度管理がもっとも重要となります。
【温度管理早見表】細菌を死滅させるために必要な温度管理は?
食中毒菌にはさまざまな種類があり、それぞれに適切な温度管理は異なります。
以下、おもな食中毒菌が死滅するのに必要な加熱温度と加熱時間をまとめました。
細菌名 | 死滅温度 | 時間 |
---|---|---|
サルモネラ | 60℃ | 3分間 |
病原大腸菌 | 75℃ | 1分間 |
カンピロバクター | 60℃ | 1分間 |
腸炎ビブリオ | 65℃ | 5分間 |
黄色ブドウ球菌 | 65℃ | 10分間 |
参考:東京都食中毒予防ガイド
食中毒菌によって死滅する温度はそれぞれ違いますが、この表によると主な食中毒菌は75℃以上で死滅するようです。
食中毒を防ぐ温度管理のポイント1:食中毒菌を加熱して殺菌
食中毒を防ぐために重要なのは食中毒菌を加熱し、殺菌することです。
加熱する際の具体的なポイントや注意点を解説します。
一般的に75℃で1分間以上の加熱が必要
▼殺菌するために必要な温度管理
一般的な菌 | 75℃で1分間 |
ノロウイルス | 90℃で90秒以上 |
食中毒菌はそれぞれに死滅する温度が異なると前述しましたが、一般的に75℃で1分間加熱することで大半を殺菌することができます。
ただし、ノロウイルスの場合は90℃で90秒以上の加熱が必要です。
リスク発生の可能性に応じて、加熱温度や時間を調整しましょう。
加熱による温度管理は食品の中心温度を測る、「中心温度計」を使って行います。
測定の際は「火が通りにくい箇所」や、いくつもの食材を使った製品であれば「もっとも火が通りにくい食材」で測ることがポイントです。
加熱しても死なない食中毒菌もいるため注意
食中毒菌によっては加熱しても効果がない種類もあります。
たとえばセレウス菌やウェルシュ菌は土壌細菌として、穀物や野菜などによく付着していますが、加熱しても死滅しません。
いずれも100℃で6時間の加熱にも耐える、やっかいな食中毒菌です。
また、酸素がない状態でも生き延びることができ、これらの条件のもと、食中毒の原因となる毒素を排出するようになります。
したがってこれら菌の場合は加熱よりも、増殖を抑える工夫が必要です。
ポイントは調理後すばやく冷却し、冷蔵庫や冷凍庫に保存すること。10℃以下で保存し、菌の増殖を抑えましょう。
食中毒を防ぐ温度管理のポイント2:原材料保管時の温度に注意
原材料を保管する際の温度にも注意が必要です。
つい見落としてしまいがちな2つのポイントを解説します。
原材料受け入れ時にも温度チェックを
▼食中毒菌と温度の関係
10℃〜60℃ | 危険温度帯。食中毒菌が繁殖しやすい |
10℃以下 | 菌の繁殖スピードが落ちる |
0℃ | ほとんど繁殖できない |
原材料を受け入れる際にも温度チェックを行いましょう。
室温や冷凍冷蔵設備内の温度を記録します。
食中毒菌が繁殖しやすいのは「危険温度帯」と呼ばれる10〜60℃までの温度帯です。
10℃を下回ると菌の繁殖スピードが落ち、0℃付近ではほとんど繁殖できなくなります。
したがってできるだけ「危険温度帯」に食材を置く時間を短くすることは重要な温度管理のポイントです。
原材料受け入れの際には決められた温度よりも高い状態となっていないか確認しましょう。
厚生労働省による「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、原材料や製品の適切な保存温度が示されています。
たとえば食肉であれば10℃以下、冷凍食肉製品であれば-15℃以下といった具合です。
もちろん受け入れ時だけでなく、その後の保管の際も同様です。
冷蔵冷凍設備にも注意が必要
食物を冷蔵庫や冷凍庫に保管しておけば、菌の繁殖スピードを減らしたり止めたりすることができますが、過信は禁物です。
設定された温度で冷やされているか定期的にチェックし、万が一設備に異常があった場合もすぐに対応できるようにしておきましょう。
以下、それぞれの設備に求められる設定温度です。
冷蔵・冷凍機器 | 設定温度 |
冷蔵庫 | 10℃以下 |
冷凍庫 | -18℃以下 |
チルド室 | 0℃ |
パーシャル室 | -3℃ |
冷蔵設備においては食材の詰め込みすぎにも注意が必要です。
容量の7割を超えて保存すると効果が低下し、食材を十分に冷やすことができなくなります。
食材は適切な量を保存するほかにも、必要以上に扉を開けないなど、冷気がしっかりと庫内に行き渡るよう気をつけましょう。
また、加熱後の食品は粗熱をしっかりととってから庫内に保管することも重要です。
冷蔵・冷凍庫内の温度管理はIotの導入がおすすめです。エッセンシャルワークスおすすめの温度っちの詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
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食中毒を防ぐ温度管理のポイント3:調理後も温度管理が必要
加熱すれば食中毒のリスクがなくなるわけではありません。一度加熱した食材もそのまま放置しておくと食中毒菌が増殖してしまうおそれがあります。
調理後は以下の点に注意して温度管理を行いましょう。
できあがりは素早く冷却
前述したように多くの食中毒菌は10〜60℃の危険温度帯で増殖しやすくなります。
食中毒菌によっては5〜10℃でも繁殖する種類もいるため、低温度だからと安心はできません。
したがって一度加熱した食材であっても、できる限りその温度帯となる場所に置かないようにすることが重要です。
加熱後に食中毒菌が付着してしまったり、熱に強いウェルシュ菌やセレウス菌が付着していたりするケースも考えられます。
とくに飲食店の厨房は高温になりやすいため、注意しなければなりません。
粗熱をとる際にも、いかにその温度帯を早く通りすぎさせるかを意識し、効率的な方法で冷却するようにしましょう。
たとえば
- 小分けにして冷却
- 流水で冷ます
- 清潔な空間で扇風機などで風を当てる
といった方法が有効です。
その後は冷蔵庫や冷凍庫で保存し、食中毒菌が繁殖しにくい状態をキープしましょう。
温度管理については、TT管理の方法を採用するとよいでしょう。TT管理については以下の記事をご覧ください。
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配送時の温度管理も忘れずに
製品を配送する際にも温度管理が必要です。
食品の流通は広域化が進み、長い時間を要する場合もあり、温度管理に気をつけなければなりません。
自社で配送する場合、保冷もしくは保温設備の整った運搬車を使い、10℃以下または65℃以上を保ち、危険温度帯を避けるようにしましょう。
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まとめ:食中毒は適切な温度管理で予防しよう
食中毒対策には食中毒菌を死滅させる、増殖させないための温度管理が必要です。加熱や保管する温度、すばやい冷却などが求められます。
ポイントを押さえた温度管理の方法で、効率よく食中毒対策を実行したいですね。
まとめ
- 食中毒菌の大半は75℃1分間以上の加熱で死滅する
- 食材や食品、製品を保存する際は10〜60℃の危険温度帯の場所を避ける
適切な温度管理を行い、食中毒リスクを減らしていきましょう。
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