食中毒の予防には、食品の温度管理が欠かせません。
「製造現場や厨房での温度管理は徹底しているから問題ない」と思っていても、仕入れ時の食品の温度管理や納品先へ輸送するときのの温度管理を怠ると、食中毒事故のリスクが高まります。
とくに気温が高くなり、湿気が多くなる梅雨から夏にかけては、食中毒が起きやすいので注意が必要です。
この記事では、食中毒予防のために気を付けておきたい温度管理の方法や主要な食中毒菌やウイルスの温度管理早見表をご紹介します。
食中毒予防するための温度管理の方法を知っておけば、食中毒を未然に防ぐことができ、食中毒事故から事業所を守ることができるでしょう。
食中毒を予防するための温度管理
食中毒を予防するには、食中毒の原因菌やウイルスを増やさないよう、食品の温度管理を徹底する必要があります。
食品中に付着した食中毒菌やウイルスが増殖するには、次の3つの条件が必要です。
- 栄養分
- 水分
- 温度
食品中の栄養分・水分を管理することはほぼできません。しかし、温度だけは私たちがコントロールできます。
食品の温度管理のポイント
食中毒予防に有効な食品の温度管理のポイントは次の3つです。
- 原材料保管時の温度管理
- 食中毒菌を加熱して殺菌
- 調理後の温度管理
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原材料保管時の温度管理
食品の製造中や製造後の納品前の温度管理と比べて、原材料の搬入・保管時の管理はつい見落とされてしまいがちです。
原材料の仕入れ時は、業者が徹底した温度管理をしていると信じてしまうからです。
仕入れ先の業者を疑えというわけではありませんが、人は誰しもミスをしてしまうものです。
搬入時に冷蔵車が故障していたり、誤って冷蔵のものを常温で配送してしまったりすることがあるかもしれません。
温度管理を誤った原材料を使って、食品を製造してしまうと食中毒リスクが高まります。
安全な食品を消費者に提供するためにも、原材料の搬入・保管時の温度管理には十分気を付けましょう。
原材料搬入時の温度管理
原材料受け入れ時は、決められて温度よりも高い状態で商品が搬入されていないか確認しましょう。
冷蔵・冷凍食品の場合、車内の温度管理は徹底していたか、原材料に触れた時に溶けていたり、冷たくなかったりしていないかを確認します。
なお、冷蔵・冷凍食品を仕入れる業者を選定するときは、車内の温度管理をシステムなどでおこなっている業者がおすすめです。
人の手による温度計測は、手間もミスも増えてしまうため、正確な温度を計測できない可能性があります。
原材料搬入後はすぐに冷蔵・冷凍庫へ保管
原材料搬入後は、すぐに冷蔵・冷凍庫へ保管しましょう。
食中毒菌は、10~60℃までの「危険温度帯」と呼ばれる温度帯で繁殖しやすくなるためです。
10℃~60℃ | 危険温度帯。食中毒菌が繁殖しやすい |
10℃以下 | 菌の繁殖スピードが落ちる |
0℃ | ほとんど繁殖できない |
一方で、10℃を下回ると菌の繁殖スピードが落ち、0℃付近ではほとんど繁殖できなくなります。
食品の温度管理を徹底させるため、すぐに冷蔵・冷凍庫へ保管しましょう。
冷蔵・冷凍庫の温度管理も怠らない
食物を冷蔵庫や冷凍庫に保管しておけば、菌の繁殖スピードを減らしたり止めたりすることができますが、過信は禁物です。
設定された温度で冷やされているか定期的にチェックし、万が一設備に異常があった場合もすぐに対応できるようにしておきましょう。
以下、それぞれの設備に求められる設定温度です。
冷蔵・冷凍機器 | 設定温度 |
冷蔵庫 | 10℃以下 |
冷凍庫 | -18℃以下 |
チルド室 | 0℃ |
パーシャル室 | -3℃ |
冷蔵設備においては食材の詰め込みすぎにも注意が必要です。
容量の7割を超えて保存すると効果が低下し、食材を十分に冷やすことができなくなります。
食材は適切な量を保存するほかにも、必要以上に扉を開けないなど、冷気がしっかりと庫内に行き渡るよう気をつけましょう。
また、加熱後の食品は粗熱をしっかりととってから庫内に保管することも重要です。
冷蔵・冷凍庫内の温度管理はIotの導入がおすすめです。エッセンシャルワークスおすすめの温度っちの詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
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【温度管理早見表】で食中毒菌を殺菌できる温度と時間を確認
食品に付着している食中毒菌の多くは、加熱調理によって殺菌します。
しかしながら、加熱温度や時間が不十分だと食中毒リスクが高まるため注意が必要です。
食中毒菌を死滅させるために必要な加熱温度とその時間をまとめた【温度管理早見表】は次の通りです。
細菌名 | 死滅温度 | 時間 |
---|---|---|
サルモネラ | 60℃ | 3分間 |
病原大腸菌 | 75℃ | 1分間 |
カンピロバクター | 60℃ | 1分間 |
腸炎ビブリオ | 65℃ | 5分間 |
黄色ブドウ球菌 | 65℃ | 10分間 |
参考:東京都食中毒予防ガイド
食中毒菌によって死滅する温度はそれぞれ異なりますが、上記の早見表に挙げている食中毒菌は75℃以上で死滅します。
食中毒予防のためにも、調理場の見えるところに掲示しておき、商品製造時には、加熱温度や時間がクリアされているか定期的に確認していきましょう。
加熱しても死なない食中毒菌もいるため注意
食中毒菌によっては加熱しても効果がない種類もあります。
たとえばセレウス菌やウェルシュ菌は土壌細菌として、穀物や野菜などによく付着していますが、加熱しても死滅しません。
いずれも100℃で6時間の加熱にも耐える、やっかいな食中毒菌です。
また、酸素がない状態でも生き延びることができ、これらの条件のもと、食中毒の原因となる毒素を排出するようになります。
セレウス菌やウェルシュ菌は加熱による殺菌はできないため、10℃以下に冷却し、増殖や芽胞の産生を抑える対策が有効です。
調理後の温度管理
加熱すれば食中毒のリスクがなくなるわけではありません。
一度加熱した食材もそのまま放置しておくと食中毒菌が増殖してしまうおそれがあります。
多くの食中毒菌は10~60℃の危険温度帯で増殖しやすくなるためです。
食中毒菌によっては5~10℃でも繁殖する種類もいるため、低温度だからと安心はできません。
したがって一度加熱した食材であっても、できる限りその温度帯となる場所に置かないようにすることが重要です。
加熱後に食中毒菌が付着してしまったり、熱に強いウェルシュ菌やセレウス菌が付着していたりするケースも考えられます。
とくに飲食店の厨房は高温になりやすいため、注意しなければなりません。
粗熱をとる際にも、いかにその温度帯を早く通りすぎさせるかを意識し、効率的な方法で冷却するようにしましょう。
温度管理については、TT管理の方法を採用するとよいでしょう。TT管理については以下の記事をご覧ください。
TCS食品とは?TT管理で食中毒リスクを最小限に抑えよう
TCS食品は、食中毒菌が繁殖しやすい食品のため、運搬や保管・調理には適切な時間と温度管理が必要です。...
配送時の温度管理も忘れずに
製品を配送する際にも温度管理が必要です。
食品の流通は広域化が進み、長い時間を要する場合もあり、温度管理に気をつけなければなりません。
自社で配送する場合、保冷もしくは保温設備の整った運搬車を使い、10℃以下または65℃以上を保ち、危険温度帯を避けるようにしましょう。
輸送時の温度管理が必要な理由とコールドチェーンの仕組みを解説
輸出時の温度管理が不十分だと、食中毒リスクを高めたり、食品廃棄ロスに繋がったりと食品事業者の損失が大きくなります。...
まとめ:食中毒は適切な温度管理で予防しよう
食中毒予防には、食品の温度管理が欠かせません。
しかし、多くの事業者は調理中・調理済みの食品の温度管理には気を配るものの、仕入れ時の食品の温度チェックや納品後の配送時の温度管理については疎かになっている人もいるのではないでしょうか。
仕入れや配送は外部の業者に任せているところも多いため、仕方ないことかもしれません。
しかし、万が一食中毒が発生した場合、真っ先に疑われるのは、食品製造業者です。
仕入れ業者や配送業者を選定する際には、温度管理が徹底しているかどうかも確認する必要があります。
まとめ
- 食品の温度管理は製造時だけでなく仕入れや出荷時も徹底する
- 食中毒菌の多くは熱に弱いが菌によって死滅する温度と時間は異なる
- 商品製造後、調理後は素早く冷却し危険温度帯を早く通過させる
安全・安全な食品を提供するため、適切な温度管理をおこない、食中毒リスクを減らしていきましょう。
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