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テイクアウトの衛生管理方法とは?販売時の注意点も確認

テイクアウトの衛生管理方法とは?販売時の注意点も確認

食中毒対策

食中毒衛生管理

コロナ禍により多くの飲食店がテイクアウトを始めたことにより、見切り発車でテイクアウトを実施した飲食店もあるのではないでしょうか。

コロナの流行が治まった今でもテイクアウトやデリバリーに需要があるため、継続している飲食店も少なくないかもしれません。

見切り発車で始めたテイクアウトサービスですが、コロナが落ち着いた機に、衛生管理を見直してみてはいかがでしょうか。

もしかすると今まで運がよかっただけで、実は食中毒リスクの高い調理・販売をしているかもしれません。

この記事では、テイクアウト商品を調理・販売するときの衛生管理を解説します。

テイクアウトを始めるときに営業許可が必要か不要かについてもまとめましたので、ぜひご覧ください。

テイクアウト商品を調理するときの衛生管理

テイクアウト商品は、店内で提供する商品と比べると調理してからお客様の口に入るまでの時間が長くなります。

そのため、衛生管理をいつも以上に徹底しないと、食中毒のリスクが高まるので注意が必要です。

テイクアウト商品に限らず、食中毒の予防には3つの原則の徹底が重要になります。

食中毒3原則

  • 菌をつけない
  • 菌を増やさない
  • 菌をやっつける

ここからは、具体的な予防方法を見ていきましょう。

菌をつけない

食中毒を引き起こす菌やウイルスは、食材や調理器具、調理担当の従業員を介して持ち込まれます。

食品に菌やウイルスが付着すると、食中毒のリスクが高まるので「つけない」衛生管理を徹底しましょう。

手洗いの徹底

調理担当者の従業員の手洗いを徹底しましょう。

食材や調理器具を洗浄しても、従業員の手に食中毒菌が付着していると汚染されてしまうからです。

以下の記事に食中毒を予防する手洗い方法のマニュアルを掲載しております。

必要に応じてダウンロードし、手洗い場に掲示してみてはいかがでしょうか。

調理器具の洗浄・除菌

使用後の調理器具は、しっかり洗浄し除菌しましょう。

調理器具の洗浄や除菌が不十分だと、調理器具に菌やウイルスが残り食材に付着してしまうからです。

また調理器具の洗浄が不十分だとアレルゲンが残留し、交差接触してしまう可能性があります。

食物アレルギーは、お客様の命を危険にさらしてしまうこともあるため、注意が必要です。

調理器具の使い分け

テイクアウト商品も他の商品と同じく、調理器具の使い分けを行いましょう。

調理器具を肉・魚・野菜ごとに使い分けることで、それぞれの食材に由来する菌やウイルスからの汚染を防げます。

ただ現場の規模によっては、調理器具の使い分けが難しいこともあるでしょう。

その場合は、せめてまな板と包丁だけでも使い分けるのがおすすめです。

またせっかく調理器具の使い分けを決めても、間違って他の食材の調理器具を使用してしまっては意味がありません。

誰が調理しても、間違えることがないよう色分けするなどの工夫をしましょう。

菌を増やさない

手洗いや調理器具の洗浄、使い分けを徹底しても、調理後の食品を常温のまま放置してしまうと食中毒菌が増えます。

食中毒の原因となる菌の多くは、20℃~50℃の温度帯で増えるからです。

テイクアウトの食中毒リスクを低減させるには、これらの温度帯を避けた調理法や保管方法を徹底する必要があります。

テイクアウトに適さない食材・メニューは入れない

イートインでは問題ない食材でもテイクアウトで提供すると食中毒リスクが高まる食材やメニューがあります。

たとえば、刺し身やレアな肉、半熟卵など加熱しない生鮮食品はNGです。

またひき肉はミンチにする段階で大腸菌が内部に入り込み、きちんと火を通さなければ食中毒リスクが高まります。

ハンバーグやつくねなどはしっかりと中心まで加熱をしましょう。

その他にもテイクアウトとして控えたい食材やメニューは次の通りです。

  • きのこ類
  • 生のフルーツ
  • 炊き込みご飯
  • 貝類(生はNG、加熱する場合も注意を)
  • 常温で置いたままにしたカレーやシチューなど

彩りとして入れたいレタスやキャベツなどは、消毒された市販品を使った方が食中毒リスクを抑えられます。

また、自家製ドレッシングは水が分離しやすく、菌の温床になりがちです。

生野菜と同じように市販品で、乳化剤の入ったものを使うとよいでしょう。

調理済みの食品は適切な温度管理の上で保存

調理済みの食品は60℃以上、もしくは10℃以下で保存しましょう。

20℃~50℃は食中毒菌が増殖しやすい危険な温度帯だからです。

調理済の食品を常温でそのまま保管してしまうと、食中毒菌が増殖しやすい温度帯に長い時間さらすことになるため、食中毒リスクが高まります。

食中毒リスクを低減させるためにも調理済の商品をできるだけ早く20℃以下にする必要があるため、小分けにして冷ましたり、持ち帰りの際に保冷剤を使用したりするとよいでしょう。

また、テイクアウト商品を販売する時には、調理済み食品を保冷や保温できるボックスなどに入れておきます。

定期的に保冷ボックスや保温ボックスの温度を確認し、保管時の温度管理を徹底しましょう。

菌をやっつける

食材に菌がつかないよう、増殖えないよう徹底していても、食材に食中毒菌が付着し増殖してしまうことはあります。

食中毒菌の多くは、適度な温度と時間による加熱で死滅・不活性化が可能です。

肉や魚などは中心部温度計を用いるなどして、 食材の中心温度が75℃以上で1分以上熱するようにしましょう。

とくに寄生虫が潜んでいることの多い豚肉や、カンピロバクターによる食中毒が発生しやすい鶏肉は注意が必要です。

また条件が揃ったときに菌の増殖が早いと言われているものに、魚貝類に付着している腸炎ビブリオがあります。

食材ごとに気をつける食中毒菌の特性を知り、十分な加熱をおこなうことも重要です。

テイクアウト商品を販売するときの衛生管理

テイクアウトの衛生管理は、調理だけでなく販売にも気を付ける必要があります。

イートインの延長のような形で、テイクアウトサービスを実施してしまうと、作業効率が悪く時間や人員のムダにしてしまう恐れがあるため注意が必要です。

その結果、衛生管理が疎かになり、テイクアウトでの食中毒リスクが高まります。

ここからは、テイクアウト商品を販売するときに気を付けたい衛生管理を解説します。

店舗規模に応じた食数を提供する

テイクアウトサービスをするときには、店舗の規模に見合った食数を提供する よう心がけましょう。

厨房の広さや設備状況によって提供できる食数は限られます。

また、規模だけでなくスタッフのレベルや熟練度、メニューの種類や数など、調理能力も鑑みることも大切です。

お客さまが食べる時間から仕込みまでを逆算し、安全に作れる量を提供数として決めるとよいでしょう。

消費期限や保管方法を明記する

提供後はできるだけ早く食べていただけるよう、消費期限や保管方法を書いたシールを貼りつけるなどしておきましょう。

店内調理品をテイクアウトする際には消費期限や内容量などを表示する義務はありません。

しかし、お客さま自身にも「早く食べること」を意識していただけるよう、明記するのがおすすめです。

また、お渡しする際に「○時までに食べてくださいね」などと声がけするのもよいでしょう。

テイクアウトの消費期限の目安は、調理から2時間以内です。

お客さまに安全に美味しく食してもらうためにも、消費期限の注意喚起を怠らないようにしましょう。

可能であれば、商品を第三者機関の検査に出して食品安全を担保できているか確認してから提供しましょう。

商品に適した衛生的な容器を使用する

テイクアウトをするときは、溶出試験の基準をクリアした包装容器を用意しましょう。

テイクアウトに使う包装容器は、食器の代わりとなるものです。

「コストが安いから」と安全性に問題がある包装容器を使用すると、食品に触れることで化学物質が溶けだし、お客様の健康に影響を及ぼす可能性があります。

コスパも大事ですが、安全・安心な食品を提供するためにも包装容器の安全性も確認しておきましょう。

商品の温度管理を徹底する

テイクアウト商品を販売するときは、商品の温度管理を徹底しましょう。

屋外など気温が高い場所で販売すると、食中毒が発生しやすい温度帯にすぐ到達してしまうからです。

20℃~50℃は食中毒菌が増殖する危険な温度帯になります。

店頭でテイクアウト商品を販売する時には、商品を陳列せずメニューだけ置き、商品は保冷庫または保温庫に保管し、必要に応じて取り出すというような対処をするとよいでしょう。

テイクアウトを始めるのに営業許可はいるの?

店舗で調理した商品をテイクアウトやデリバリーで販売する場合、飲食店営業許可があれば、新たに営業許可を取得する必要はありません。

調理する場所と販売する場所が異なる場合は、別途営業許可が必要となります。

また以下の商品をテイクアウトで販売する場合は、別途営業許可が必要となります。

販売する食品 必要な営業許可
ケーキ・パン 菓子販売業
アイスクリーム 乳類販売業
ハム・ベーコン・ローストビーフ 食肉製品製造業
刺身のみ 魚介類加工業
仕入れた食品をそのまま販売 食料品販売業

あくまで上記は一例です。ケースバイケースですので、自社の商品をテイクアウトするのに営業許可が必要かわからないときはネットの情報だけで勝手に判断するのではなく、管轄の保健所に相談しましょう。

まとめ

イートインできない人に、テイクアウト商品を提供するのは、新規顧客の開拓につながり、売り上げアップが期待できます。

しかしながら、テイクアウトは食中毒リスクが高いため、イートインをするときよりも衛生管理を徹底しなければなりません。

まとめ

  • テイクアウトは販売する商品によって営業許可が必要なケースがある
  • テイクアウトは食中毒リスクが高いため普段以上の衛生管理が必要
  • 店舗規模や従業員の能力に合わせてテイクアウトの販売数を決める

事業主のみがテイクアウトの衛生管理の重要性を把握しても、実際に作業をする従業員が理解できなければ、食中毒リスクが高まります。

テイクアウトを開始する前に、従業員の衛生管理教育をおこない、しっかりと準備してから臨むようにしましょう。

またテイクアウト商品を必要以上に量産してしまうと、食材のムダやコスト増につながりかねません。

無理のない提供数を消費期限内に完売できるよう心がけましょう。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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