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砂糖で食品の腐敗を防げるのはなぜ?砂糖の防腐効果を徹底解説

砂糖で食品の腐敗を防げるのはなぜ?砂糖の防腐効果を徹底解説

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「砂糖を使った食品は腐敗しやすい」というイメージを持つ人は少なくないでしょう。

確かに砂糖を多量に使用したケーキやシュークリームなどの生菓子は、常温では1日も持ちません。

しかし砂糖には防腐効果があり、ジャムや砂糖漬けなど保存食にすると長期間保存が可能なことをご存じでしょうか。

この記事では砂糖の防腐効果を解説します。

砂糖が腐敗を防ぐメカニズムや長期保存するための注意点もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ食品は腐敗するの?

食品が腐敗するのは、食品内に含まれるたんぱく質などの有機物を栄養とする微生物が増殖するからです。

微生物が増殖するには、有機物などの栄養素の他に適度な水分が必要になります。

微生物は食品に含まれる栄養分だけでなく、水分も使って増殖するからです。

しかし、微生物は食品中のすべての水分を利用できるわけではありません。

食品に含まれる水分は糖や塩分、たんぱく質などに取り込まれて存在する「結合水」と食品内を自由に出入りできる「自由水」の2種類にわけられます。

このうち微生物が利用できるのは「自由水」のみです。

そのため生ものなど水分を多く含む食品の腐敗速度は速くなります。

食品中に含まれる「自由水」の割合は水分活性とも呼ばれ、食品中に占める割合が高いほど腐敗しやすく、低いほど保存性が高くなります。

砂糖が食品の腐敗を防止する理由

砂糖が食品の腐敗を防止できるのは、微生物が増殖に利用する「自由水」を引き出す脱水作用があるからです。

食品に占める自由水の割合を砂糖の脱水作用によって、低くすることで腐敗を防止できます。

脱水作用は、食品と砂糖との浸透圧差によって引き起こされます。

?浸透圧とは?

濃度の異なる2種類の液体を隣り合わせに置くと、互いに同じ濃度になろうとすること。同じ濃度になろうとする力を浸透圧と言います。

いちごジャムを例に挙げて、浸透圧のメカニズムをみてみましょう。

浸透圧と脱水作用のメカニズム

浸透圧と脱水作用のメカニズム

  1. いちごに大量の砂糖を入れる
  2. いちごの細胞内の水分が出て砂糖水が生成(脱水)
  3. いちごの細胞内に砂糖がしみこむ(浸透)
  4. 細胞膜が壊れて砂糖水と混ざる

食材に含まれる自由水が砂糖の脱水作用により低減され、微生物が自由水を利用できなくなります。

その結果、食品に占める自由水の割合が減り、食品の保存性が高まるのです。

一方で、砂糖の量が少ないと脱水作用が働かず水分が残ってしまうため腐敗が進んでしまいます。

食品を防腐させるのに必要な砂糖の量

砂糖が防腐効果を保つには、大量の砂糖を必要とします。

たとえばジャムを長期間保存したい場合、食品中に含まれる砂糖濃度は60~70%も必要です。

甘露煮では30%、あんこでも30~50%もの砂糖濃度が必要になります。

なお同じ防腐効果を持つ塩の場合、味噌に必要な塩濃度は13%、最も高い塩分濃度を必要とする梅干しでさえ22%です。

また、砂糖の浸透はゆるやかで漬け込みが完了するまでに時間を要します。

そのため、シロップ漬けなどを作るときには漬け込み中に微生物が入り込まないよう、消毒した密封容器に入れるなどの対応が必要なので覚えておきましょう。

防腐だけでない!砂糖の5つの効果

砂糖の効果は防腐だけではありません。砂糖の脱水作用により次のような効果が期待できます。

食品をやわらかくする

砂糖には食品をやわらかくする効果があります。それは砂糖にたんぱく質と水分を結び付ける作用があるからです。

たとえば、たんぱく質が多い肉は熱により固まりやすいという性質を持ちます。

肉の下味に砂糖を加えると、肉の組織に砂糖が入り込み水分を引き付け、たんぱく質内に含まれるコラーゲンと水分を結びつけやすくするのです。

その結果、たんぱく質の多い肉に熱を加えても固くなるのを防ぐことができます。

泡立ちを保つ

砂糖にはメレンゲの泡立ちを保つ効果があります。

卵白に砂糖を入れると卵白の水分を吸収して、気泡が壊れにくくなるからです。

メレンゲの泡立ちが保たれると、焼いても膨らみが縮むことなくしっとりとした仕上がりになります。

パンの発酵を促す

砂糖には発酵を促す効果があります。砂糖はパン発酵に欠かせないイースト菌の栄養源となるからです。

イースト菌の「砂糖を摂取し炭酸ガスとアルコールを生成する」という性質を利用し、パンの発酵を促します。

油の酸化を防ぐ

砂糖には油の酸化を防ぐ効果があります。油の中に砂糖を加えると、油の中の水分と砂糖が結びつき、酸化しにくくなるからです。

クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子を作るときにバター(油)とともに多量の砂糖を加えるのは、油の酸化を防ぐため。

バターに含まれる水分が砂糖と結びつき、空気中の酸素がバターに入り込む隙間を少なくすることで、油の劣化を防ぎ美味しさや香りが長持ちします。

でんぷんの老化を防止する

砂糖を含むだいふくや求肥などの餅菓子が常温でも滑らかなのは、砂糖にでんぷんの老化を防ぐ働きがあるからです。

餅やご飯は時間が経過すると、でんぷんが老化し硬くなります。

でんぷんを含む食品に砂糖を入れると、でんぷんに含まれる水分と砂糖が結びつき、粘り気のある状態を保つことが可能です。

その結果、でんぷんの老化を遅らせ餅が硬くなるのを防ぐことができます。

砂糖には賞味期限がない

実は砂糖には賞味期限が記載されていません。なぜなら、砂糖は腐敗や品質劣化の恐れが極めて少ないからです。

これは、JAS法の「賞味期限を表示する必要のない食品」に定められています。

砂糖は適切に保管することで、長期間使用できる調味料なのです。

砂糖には賞味期限がありませんが、製造時には受入日や納品日、製造番号でトレーサビリティを記録できるようにしておきましょう。

また、商品の品質を保つためにも開封後はなるべく早く使用するようにします。

適切な保管をしないと塊ができる

砂糖には結晶同士がくっつきやすい性質があるため、開封後の保管方法を誤ると塊ができやすくなります。

工場集荷時の砂糖に塊がないのは、結晶同士の結合を防ぐため水分を含む糖蜜が吹きかけられているからです。

砂糖を開封後、時間が経つとコーティングされた糖蜜の水分が抜け、結晶同士がくっつきやすくなります。

また過度な湿気も砂糖が固まる原因の1つです。

砂糖が水分を吸うと糖蜜のコーティングが溶けて結晶同士がくっつきやすくなります。

結晶同士がくっついた状態で乾燥すると、結晶同士が結合した状態で固まるため塊が大きくなります。

砂糖を保管するときには、密閉容器に入れましょう。

また砂糖は常温保存も可能ですが、季節の変化による湿気・乾燥から砂糖を守るためにも冷蔵庫での保存がおすすめです。

まとめ

食品が腐敗するのは、微生物が増殖するからです。微生物の増殖にはたんぱく質と水が欠かせません。

砂糖には脱水作用があり、食物中に含まれる水分を抜き取ります。

そのため砂糖漬けやジャムは腐敗せず長期保存が可能となるのです。

まとめ

  • 砂糖が持つ脱水作用は微生物の増殖を防ぐ
  • 砂糖の防腐効果を最大限発揮するには多量の砂糖が必要である
  • 砂糖には賞味期限がないが保存方法を誤ると固まる

砂糖には防腐効果以外にも、さまざまな効果があります。

砂糖の作用や効果を確認し、食品製造や調理に役立ててみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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