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黄色ブドウ球菌食中毒とは?手指をケガしたまま調理するのはNG!

黄色ブドウ球菌食中毒とは?手指をケガしたまま調理するのはNG!

食中毒対策食中毒菌

食中毒

「黄色ブドウ球菌による食中毒はどんな特徴があるのだろう」
「黄色ブドウ球菌食中毒を防ぐためにはどうしたらいいのかな」
黄色ブドウ球菌による食中毒は減少傾向にあるものの、依然として年間に数十件ほど発生しています。
今回は黄色ブドウ球菌を原因とする食中毒について詳しく解説します。
「黄色ブドウ球菌は非常に身近な細菌ですが、条件によって食中毒発生のリスクが非常に高まるので注意が必要です。」
あらかじめ黄色ブドウ球菌について正しく知っておき、できる限り食中毒発生のリスクを減らしましょう。
あわせて黄色ブドウ球菌による食中毒の予防方法についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

黄色ブドウ球菌食中毒とは?

黄色ブドウ球菌食中毒とは?
黄色ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌そのものが食中毒の原因となるわけではありません。
食中毒を引き起こすのは黄色ブドウ球菌が産生する、「エンテロトキシン」と呼ばれる毒素です。
エンテロトキシンは、 熱に強く100℃の熱で20分間加熱しても、分解されない非常にやっかいな毒素 です。
以下では黄色ブドウ球菌食中毒の特徴を詳しくみていきましょう。

黄色ブドウ球菌食中毒の症状と潜伏期間

黄色ブドウ球菌を原因とする食中毒の潜伏期間は、平均すると3時間ほどと毒素型なので感染型よりも短いのが特徴です。
黄色ブドウ球菌食中毒の症状は次の通りです。

黄色ブドウ球菌食中毒の症状

  • 突然の激しい吐き気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛
高熱が出ることはあまりありませんが、水分が大量に排出されることで脱水症状や血圧低下などを引き起こすことも。
ただ一般的に症状は12時間ほどで落ち着き、回復へ向かいます。
しかし 乳幼児や高齢者などはまれに命にかかわるおそれ があり、注意する必要があります。

黄色ブドウ球菌食中毒の原因となりやすい食品

黄色ブドウ球菌が付着することによって食中毒リスクが高まるため、あらゆる食品が原因となりえます。
とくに多いのがおにぎりや寿司、サンドイッチなど素手で調理するメニュー。
また、カレーや煮物など、長時間放置しがちな食品も食中毒リスクが高くなりやすいメニューです。
黄色ブドウ球菌による食中毒の発生はその多くが飲食店や仕出し店となっています。
ただ家庭で発生するケースもあり、いずれにせよ調理にかかわる人は気をつけなければなりません。

黄色ブドウ球菌食中毒の発生しやすい時期

黄色ブドウ球菌による食中毒は とくに5〜10月が多く、最近の統計によると7月がもっとも多く食中毒事故が発生 しています。
これは高温多湿の時期が続き、黄色ブドウ球菌に限らずさまざまな菌が増殖しやすくなるためです。
しかし条件が重なることで、年間を通して黄色ブドウ球菌を原因とした食中毒が発生するおそれはあります。
寒くて乾燥した時期であっても、調理の際は食中毒のリスクがあることを知っておきましょう。

黄色ブドウ球菌の潜伏場所

黄色ブドウ球菌はとくに珍しい菌ではなく、私たちを取り巻く環境に多く存在し、調理用の生肉や生魚などに付着している場合があります。
また、健康な人でも頬や鼻の表面、目のまわりなどの肌、鼻腔、腸管内などにも生息し、保菌率は全体の40%ほどです。
それだけではなく、化膿菌として傷口や手荒れ、ニキビなどにも黄色ブドウ球菌が存在しています。
食材だけでなく、顔を触った後の手や、 傷や手荒れのある手には、黄色ブドウ球菌が潜伏しているおそれがある ということです。

黄色ブドウ球菌食中毒の予防方法

黄色ブドウ球菌食中毒の予防方法
やっかいな黄色ブドウ球菌食中毒ですが、正しく対策を講じることで予防につながります。
ポイントは黄色ブドウ球菌を食材に付着させないことと、増殖させないことです。
以下、効果的な予防方法をご紹介しましょう。

予防方法1:手洗い消毒の徹底

黄色ブドウ球菌食中毒はもともと食材に付着していた菌だけでなく、調理者の手についた菌による食材の汚染も大きな原因です。
そのため、 手洗いや消毒の徹底 が予防の基本。
黄色ブドウ球菌だけでなく、ノロウイルスなどさまざまな菌やウイルスに手洗いは効果を発揮します。
調理の前など食材に触れる前だけでなく、調理中もこまめに手を洗うようにしましょう。
また、アルコール消毒もあわせて行うとさらに効果的です。

予防方法2:手指に傷があるときは絆創膏と手袋を着用

ケガによる傷や手荒れなどには黄色ブドウ球菌が潜んでいます。
そこで手や指に傷や手荒れがある場合には黄色ブドウ球菌が食材に付着するのを防ぐため、 絆創膏を貼りさらに手袋を着用して作業 にあたりましょう。
飲食店や仕出し店、食品工場などで、手に傷や手荒れのある従業員がいる場合は直接食材に触れたり調理をしたりしないよう、担当を変更するのがベターです。

絆創膏が万が一外れてしまい商品に混入したまま出荷しないよう、青色絆創膏プラスメタルを使用するのがおすすめです。

予防方法3:食材の適切な温度管理

黄色ブドウ球菌は10℃以下になると繁殖しにくくなります。
そこで食材や食品を菌が繁殖しにくい、適切な温度で管理することが重要です。
黄色ブドウ球菌が繁殖してしまうとエンテロトキシンが産生されやすくなり、さらに一度産生されたエンテロトキシンは加熱しても破壊することはできません。
菌を繁殖させないように温度管理を行うことがポイントです。

予防方法4:調理時の十分な加熱

食材は十分に加熱し、調理することを心がけましょう。
黄色ブドウ球菌は 75度の熱で1分間加熱すると死滅 します。
したがって調理の際には、食材の中までしっかりと火を通すことが重要です。

予防方法5:長時間常温で放置した食品は廃棄

調理後、 長時間常温に置いたままにした食品は、廃棄 するようにしましょう。
増殖した黄色ブドウ球菌から、エンテロトキシンが産生しているおそれがあるためです。
50度以上になると、黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンを産出できなくなるといわれていますが、他の食中毒菌のことも考えると保管する場合は60度以上が望ましいといわれています。
もし、一度毒素を産生すると再度加熱したとしてもエンテロトキシンを破壊することはできず、食中毒の原因となりかねません。
残った調理済み食品は、再加熱して利用するのは避けましょう。

まとめ:調理の際は黄色ブドウ球菌食中毒に注意しよう!

まとめ:調理の際は黄色ブドウ球菌食中毒に注意しよう!
2000年に大手乳業メーカーによって引き起こされた、「黄色ブドウ球菌食中毒事故」を覚えている人も多いのではないでしょうか。
事故の被害者数は1万人を超え、戦後最大規模の食中毒事故となりました。
近年黄色ブドウ球菌食中毒の発生数は減少しつつあるとはいえ、常にリスクはあるため、調理する際には注意しましょう。
レストランやカフェなどの飲食店や仕出し店、食品を扱う工場などは、万が一食中毒が発生した場合、大規模な事故となるためとくに気をつけなければなりません。

まとめ

  • 黄色ブドウ球菌食中毒は菌から産生されるエンテロトキシンによって引き起こされる
  • 黄色ブドウ球菌食中毒を予防するには食品に菌を付着・増殖させないことが重要
黄色ブドウ球菌食中毒の危険性や注意点を正しく知り、おいしく、安全な食事を提供したいですね。
ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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