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ウェルシュ菌食中毒がカレーで発生しやすい理由とは?菌の特徴や対策を解説

ウェルシュ菌食中毒がカレーで発生しやすい理由とは?菌の特徴や対策を解説

食中毒対策食中毒菌

食中毒食中毒菌衛生管理

「カレーは一晩寝かせると美味しいから」と言って、常温で鍋のまま作り置きしている人もいるかもしれません。

しかしながら、カレーやシチューなど煮込み料理を常温のまま長時間置くと、ウェルシュ菌食中毒を発症する恐れがあるため大変危険です。

ウェルシュ菌は、増殖してしまうと加熱しても失活しにくくなります。

ウェルシュ菌増殖を抑える対策をおこない食中毒を防ぎましょう。

そこで今回は、ウェルシュ菌の特徴や発症するメカニズム、予防方法をご紹介します。

一晩寝かせたカレーや大鍋料理を安心して美味しく食べるためにも、ぜひご覧ください。

なぜ?ウェルシュ菌食中毒がカレーで発症しやすい理由

ウェルシュ菌食中毒がカレーなどの煮込み料理で発生しやすい理由は、加熱調理するときに鍋の中の酸素量が少なくなり、ウェルシュ菌が増殖しやすい環境ができるからです。

とくにカレーは大鍋で作ることから、鍋のまま冷蔵庫に入れるのが難しく、常温のまましばらく放置してしまいがち。

しかし、常温で放置している間にも生き残ったウェルシュ菌は、増殖のタイミングを待っています。

そしてカレーの温度が徐々に下がるとウェルシュ菌が急速に増殖してしまうのです。

食中毒の発症原因となるエンテロトキシンを排出するウェルシュ菌も同じく増殖していきます。

さらにやっかいなのが、エンテロトキシン排出時に作られるウェルシュ菌の芽胞です。

この芽胞も同じく発芽後に菌となり、芽胞を生成するときにエンテロトキシンを放出します。

芽胞は熱に強く産生されると死滅させるのが難しくなります。

その結果、エンテロトキシンを排出するウェルシュ菌および芽胞が大量に含まれたカレーができあがり、喫食してしまうことで、ウェルシュ菌食中毒を発症してしまうのです。

ウェルシュ菌とは?

ウェルシュ菌とは、土壌や海・河川の汚泥などに生息する土壌菌の1つです。

人や動物の大腸にも存在しており、健康な人の便からも検出されることもあります。

そもそもウェルシュ菌にはさまざまな種類があり、そのほとんどは無害なものです。

食中毒の原因は、増殖時に芽胞を形成するときにエンテロトキシンという毒素を排出する一部のウェルシュ菌になります。

ウェルシュ菌食中毒発症のメカニズムは次の通りです。

ウェルシュ菌食中毒発症のメカニズム

  1. 食品中のウェルシュ菌が増殖
  2. ウェルシュ菌の一部が芽胞形成時に、食中毒の原因となる毒素「エンテロトキシン」を排出
  3. エンテロトキシンを排出するウェルシュ菌や芽胞が大量に付いた食品を喫食
  4. 腸管内でウェルシュ菌が増殖し、芽胞を形成するときにエンテロトキシンが腸内に大量放出
  5. ウェルシュ菌食中毒の発症

ウェルシュ菌の多くは、肉類や魚類に付着しています。

これらの食材を使ったカレーやシチューなど、煮込み料理で発生することが多いです。

煮込み料理の常温放置が原因で食中毒が発生する事例が多く見られます。

ここからは、ウェルシュ菌の特徴を1つずつ見ていきましょう。

酸素に弱い

ウェルシュ菌は、ボツリヌス菌と同じく嫌気性菌の一種で、酸素の多い場所では増殖できません。

しかし言い換えれば、酸素の少ない場所では増殖します。

ウェルシュ菌の一部は増殖し、芽胞を形成するときに食中毒の原因となるエンテロトキシンを生成するので、菌の増殖を抑える対策が必要です。

熱に強い

ウェルシュ菌は、酸素が多い場所や低温下など劣悪な環境下に置かれても生きられるよう、芽胞を形成します。

ウェルシュ菌自体は他の食中毒菌と同じく熱に弱い特性を持ちますが、芽胞は熱に強く100℃で1~6 時間でも生存します。

つまり加熱調理してウェルシュ菌本体が死滅しても、芽胞は生存し増殖に適した環境になるのをじっと待つのです。

もちろん芽胞のままでは増殖できません。

しかし芽胞が発芽できる温度、50℃以下になると発芽しウェルシュ菌を生成します。

さらに発芽時には加熱調理で他の食中毒菌が死滅しており、増殖を妨げる菌がいない好環境となっているため、短時間で爆発的に増殖してしまいます。

発症するには多くの菌数が必要

ウェルシュ菌食中毒の発症菌数は、1gあたり10*6万個と非常に多いのが特徴です。

なぜならウェルシュ菌にはさまざまな種類があり、その多くは摂食しても食中毒を発症しないから。

ウェルシュ菌食中毒発症の原因となるエンテロトキシンと呼ばれる毒素を産生するものは、ごく一部です。

しかし先ほども述べた通り、ウェルシュ菌は酸素が少なく50℃以下の環境下に置くと、爆発的に増えます。

ウェルシュ菌の総数が増えれば、エンテロトキシンを排出するウェルシュ菌も同じく増えるため食中毒発症のリスクが高まります。

発症菌数が多いからといって、安心できないのもウェルシュ菌の特徴です。

ウェルシュ菌食中毒の症状

ウェルシュ菌食中毒の主な症状は腹痛と下痢で、嘔吐や発熱などの症状が生じることはきわめて少ないのが特徴です。

潜伏期間は、平均6時間と他の食中毒菌と比べて短くなっています。

症状は軽く、患者さんの多くは1~2日で回復します。

ただし基礎疾患のある患者さんや子供、高齢者では稀に重症化することもあるので注意が必要です。

ウェルシュ菌食中毒事件数と患者数の特徴

ウェルシュ菌食中毒事故は、1事件あたりの平均患者数が他の食中毒事故に比べて圧倒的に多いのが特徴です。

まずは、厚生労働省が集計した2023年の食中毒統計のウェルシュ菌とカンピロバクター食中毒事故件数を比較してみましょう。

食中毒菌 食中毒事故件数 患者数
ウェルシュ菌 22件 1,467人
カンピロバクター 185件 822人

出典:食中毒統計|厚生労働省

ウェルシュ菌の食中毒事故件数は、カンピロバクター食中毒事故件数の8分の1の件数です。

しかし、ウェルシュ菌の患者数はカンピロバクター食中毒の約1.8倍。

さらに1事故あたりの平均患者数は、カンピロバクター食中毒の13倍となっています。

なお、2022年に最も多い食中毒患者数を叩き出したノロウイルスの1事件あたりの平均患者数が34.5人となっています。

対して、ウェルシュ菌食中毒の平均患者数は66人なので、ノロウイルスの約2倍の患者数となっています。

次に過去5年のウェルシュ菌食中毒の事故件数・患者総数の推移を見てみましょう。

西暦 食中毒事故件数 患者数 1件あたりの平均患者数
2022年 22 1,467 66
2021年 30 1,916 63.8
2020年 23 1,288 56
2019年 22 1,166 53
2018年 32 2,319 72.4

出典:食中毒統計|厚生労働省

統計調査した年によって若干の変動はありますが、サルモネラ菌や腸炎ビブリオのように大幅な減少はみられず横ばいとなっています。

発症するには多くの菌数が必要

直近では、2024年2月に埼玉県にある総合病院の病院食でウェルシュ菌食中毒が発生しています。

病院食を食べた481人の入院患者のうち、72人が下痢や腹痛などの症状を訴え、そのうち25人からウェルシュ菌が検出されたとのことです。

どの料理が原因で食中毒が発生したのかはわかっていません。

しかし総合病院は給食業務をある企業に委託していたため、県は受託している企業に3日間の営業停止処分を出しています。

ウェルシュ菌食中毒4つの予防法

ウェルシュ菌は自然界のどこにでもいる菌なので、持ち込まないようにするのは不可能です。

食中毒を防ぐには、喫食前に食品中のウェルシュ菌数をできるだけ減らす対策が有効です。

ここからは、ウェルシュ菌食中毒を予防する4つの方法をご紹介します。

調理から喫食までの時間を短くする

作り置きはできるだけ避けるようにし、加熱調理後はすぐに提供し喫食までの時間を短くしましょう。

ウェルシュ菌が増殖する前に喫食するのがポイントです。

保管時の温度管理

調理から喫食までの時間が長くなりそうな場合は、速やかに10℃以下に冷却または55℃以上の保温しましょう。

ウェルシュ菌の芽胞は、50℃を下回ると発芽し、43℃~45℃の温度帯で増殖スピードが速くなります。

冷却する場合は、危険ゾーンである50℃~20℃の温度帯を速やかに通過させ、10℃以下に冷却する必要があるのです。

短時間の冷却が難しい場合は、ウェルシュ菌の芽胞が発芽しない55℃以上で保管する必要があります。

芽胞が発芽できない環境下を作ることで、ウェルシュ菌の増殖を抑えられます。

調理時はよくかき混ぜる

カレーなどの煮込み料理を高温加熱すると他の食中毒菌を滅菌できますが、酸素が抜けるためウェルシュ菌が増えやすい環境を作ってしまいます。

食品中の酸素濃度が減らないよう、調理時はよくかき混ぜ食品に空気を含ませましょう。

また、ウェルシュ菌は加熱後温度が50℃以下になると、芽胞から発芽し、ウェルシュ菌が生成されます。

ウェルシュ菌自体は熱に弱いため、再加熱すると菌の数を減らせて食中毒リスクが抑えられます。

小分け保存ですばやく冷却

調理後の食品を作り置きする場合は、小分けに保管しましょう。

食品を小分けに保管すると、酸素に触れる面積が増えウェルシュ菌の増殖を抑えられます。

さらに中心部まですばやく冷却でき、食中毒の危険ゾーンの温度帯を素早く通過することができるでしょう

まとめ

カレーやシチューなどの煮込み料理は、他の料理と同じく冷めてしまっても十分に再加熱すれば食中毒にかからないと誤解されがちです。

またカレーやシチューは大鍋に作って作り置きしがちなので、鍋ごと冷蔵庫に入れられず、常温に置きっぱなしにすることもあるかもしれません。

しかしながら、このような誤った知識や思い込みにより、今日もどこかでウェルシュ菌食中毒事故が発生しています。

まとめ

  1. ウェルシュ菌食中毒の原因食品は肉類や魚を使った煮込み料理
  2. ウェルシュ菌食中毒は1件当たりの平均患者数が多い
  3. ウェルシュ菌食中毒は食品中の菌を減らす予防方法が効果的

ウェルシュ菌食中毒事故は大量調理を行う給食施設で発生しやすく、同じ食べ物を不特定多数の人が口にするため大規模食中毒になる恐れがあります。

多くの人が喫食する給食施設で、ウェルシュ菌食中毒が起こらないよう55℃以上の保温もしくは素早い10℃以下の冷却の温度管理を徹底しましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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