Article読みもの

輸送時の温度管理が必要な理由とコールドチェーンの仕組みを解説

輸送時の温度管理が必要な理由とコールドチェーンの仕組みを解説

食中毒対策HACCP

食中毒

食材や食品の鮮度を保ったまま、輸送するには、温度管理が欠かせません。

多くの人は輸送ときくと、「出荷」をイメージしがちですが、原材料の入荷や外部倉庫の一時保管も輸送に含まれます。

輸送時の温度管理が不十分だと、食中毒リスクを高めたり、食品廃棄ロスに繋がったりと食品事業者の損失が大きくなります。

「輸送時の温度管理は外部の物流業者にすべて任せればいいのでは?」

と思われる人もいるでしょう。

けれども温度管理の知識を知らなければ、自社の製品の輸送は温度管理が徹底されているのか、また輸送された原材料の保管は最適なのか判断できません。

商品を安全にお客様に提供するためにも、輸送の基本的な知識を確認しておきましょう。

原材料や商品の輸送方法

原材料や商品の輸送方法

原材料や商品を輸送するには、物流会社に外部委託する方法と自社車両で輸送する方法の2つがあります。

それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。

物流会社に外部委託するメリット

  • 製造や商品企画などに集中できる
  • コスト削減できる
  • 商品の品質を保持したまま輸送してくれる
  • 一時的に出荷数が増量または減少しても対応できる

物流会社に外部委託するデメリット

  • イレギュラーな対応が難しい
  • 自社の物流管理のノウハウが蓄積されない
  • 物流会社選びに失敗すると大きなトラブルに発展する

自社輸送のメリット

  • 自社に最適な独自システムを作れる
  • 何か問題があったときにすぐに対応できる
  • お客様の声が届きやすい
  • 各部門で情報共有しやすい

自社輸送のデメリット

  • コストがかかる
  • 繁忙期になると車両が足りず物流遅延を招く
  • 従業員の欠員によって品質低下や物流遅延の可能性

それぞれ2つの方法、どちらもメリット・デメリットがあることがわかります。

ここからは、どちらの輸送方法でも気を付けておくべき温度管理についてご紹介します。

輸送時の温度管理が必要な3つの理由

輸送時の温度管理が必要な3つの理由

野菜や魚介類などの生鮮食品、加工品、冷凍食品などを保管するときには、それぞれ品質を保つための温度管理が必要です。

これは何も、飲食店や製造業のみに限ったことではありません。

原材料や商品を輸送するときにも同じように品質を保つための温度管理が必要になります。

輸送時の温度管理が必要な理由は次の通りです。

  • 食中毒のリスクを低減させる
  • 食品の廃棄ロスを低減させる
  • 物流業界にHACCP対応が求められている

それではそれぞれ詳しく見ていきましょう。

食中毒のリスクを低減させる

食品の温度管理を怠り、食中毒菌が増殖する危険ゾーンの温度帯で原材料や商品を輸送すると、食中毒のリスクが高まります。

特に鮮度が劣化しやすい魚介類や肉類は温度管理を怠ると次の食中毒リスクが高まります。

!温度管理を怠ると発症しやすい食中毒

  • 腸炎ビブリオ
  • カンピロバクター
  • 黄色ブドウ球菌

魚介類や肉類などの生鮮食品を輸送する際には、保冷車の保管温度を変えるなどの温度管理が必要です。

給食や総菜など温かいものを運ぶ場合には、逆に危険ゾーンである60℃以下にならないよう温度管理する必要があります。

食品の廃棄ロスを低減させる

食品事故が発生していなくても、食品を適切な温度で輸送できなかった場合、もったいないですが食中毒リスクが高いので廃棄しなければなりません。

また廃棄も無料ではなく、廃棄費用がかかります

輸送時の温度管理ができないと食品廃棄率が高くなるため、廃棄ロスや機会損失に繋がり店の売上ダウンに繋がります。

物流業界にもHACCP対応が求められるから

HACCPと聞くと、飲食店や製造現場に求められる衛生管理だと思われがちです。

しかし、HACCPは飲食店や製造現場だけでなく、食材の搬入、製造、出荷(飲食店の場合は提供)までの衛生管理が求められます

よって、物流業界にもHACCP対応が求められるのです。

物流業界のHACCP対応はさまざまですが、最も重要な対応が温度管理です。

食品に合わせた温度帯で搬出・搬入することで、食中毒リスクを低減させたり、品質を保持したりすることができます。

輸送時の温度管理―4つの温度帯を解説

輸送時の温度管理―4つの温度帯を解説

食品の輸送時には、食品に合わせて4つの温度帯で品質管理を行います。

4つの温度帯

  • 常温(ドライ):15℃~25℃
  • 定温:10℃~20℃
  • 冷蔵(チルド):5~-5℃
  • 冷凍(フローズン):-15℃以下

ここからは4つの温度帯を詳しく見ていきましょう。

常温

常温とは、10℃~30℃の温度帯を表します。

常温での保管または輸送時には、温度調整をおこないません。

そのため、外気温により輸送時や保管時の庫内の温度は変化するので注意が必要です。

よって常温輸送・保管では、温度や湿度の変化で品質が損なわれない食品が扱われます。

《常温輸送・保管に適した食品例》

  • 食用油
  • 缶詰
  • ペットボトル飲料など

定温

定温とは10℃~20℃の温度帯を表します。

常温と異なり、保管または輸送時には厳格な湿度・温度調整が必要になります。

定温で運ばれる食品の多くは、温度変化に弱いデリケートな食品です。

《定温輸送・保管に適した食品例》

  • ワイン
  • チョコレート
  • 生鮮果実
  • 生鮮野菜

なお、定温輸送されるのは、食品だけとは限りません。

薬品や化粧品、結露の発生が厳禁な精密機器なども定温輸送・保管されます。

冷蔵

冷蔵とは、5~-5℃の温度帯を表します。

輸送・保管する食品の品質を保つため、「冷蔵」「氷温」「パーシャル」の温度帯に分けられることもあります。

それぞれの温度帯で輸送・保管される食品例は次の通りです。

《冷蔵輸送・保管に適した食品例》

  • 冷蔵(5℃~-5℃):固形油脂、乳製品、生クリーム、肉類
  • 氷温(0℃~-3℃):漬物、鮮魚
  • パーシャル(-3℃~-5℃):鮮魚類

冷凍

冷凍とは、-15℃以下の温度帯を表します。 倉庫業法では、冷凍の温度帯を等級別に次のように区分しています。

 等級  温度帯  食品例 
 C1級  -10℃から-20℃  パン生地、調理用冷凍食品
  F1級  -20℃から-30℃  アイスクリーム
 F2級  -30℃から-40℃  
 F3級  -40度から-50℃ 冷凍マグロ 
 F4級   -50℃以下  冷凍マグロ

  出典:保管温度帯について | 見る・学ぶ | 一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会

輸送時の温度管理を徹底し品質を保つコールドチェーン

輸送時の温度管理を徹底し品質を保つコールドチェーン

原材料や商品を新鮮な状態でお客様に届けるには、低温輸送が欠かせません。

商品を生産地から消費地まで、低温を保持したまま流通させる仕組みをコールドチェーンと言います。

コールドチェーンのシステムを導入すると次のようなメリットがあります。

コールドチェーンシステム導入のメリット

  • 流通段階での廃棄ロスの削減
  • 食材や食品を鮮度を保ったままお客様に届けられる
  • 食中毒のリスクの低減

このようにさまざまなメリットがあるコールドチェーンですが、システムを機能させるには自社の温度管理だけでなく、車両やコンテナ、食材の保管庫なども一元管理できるよう整える必要があります。

ここからは、コールドチェーンシステムを機能させるために

  • 生産・加工
  • 流通
  • 消費

3つの工程でそれぞれ気を付けるべきことを解説します。

生産・加工

生産・加工では、品質や新鮮さを保ったまま輸送するために食材毎に前準備が必要です。

ここからは、野菜や果物、冷凍精肉や鮮魚にスポットを当て、それぞれで気を付けることを見ていきましょう。

野菜や果物の前準備

野菜や果物を輸送する前には、【予冷】を行います。
予冷とは、青果の収穫後、すぐに一定期間低温に置くことです。
青果は低温の環境下に置かれると、呼吸量が減り新鮮な状態を長く保つことができます。

冷凍精肉や鮮魚の前準備

精肉や鮮魚を冷凍して流通する場合、収穫後は素早く冷凍することが大切です。
ただ時間をかけて行う通常冷凍では、組織が破壊され品質が低下してしまう恐れがあります。
品質を保ったまま冷凍を可能とする、急速冷凍機などの使用がおすすめです。

流通

流通は、生産地から消費者までを結ぶ工程です。

コールドチェーンの流通とは、冷凍・冷蔵車で食品を輸送し、冷蔵・冷凍庫で一時保管するまでの工程のことを言います。

輸送時は食品の温度が上がってしまいがちです。

とくに食品を庫内から車内に、車内から庫内に出し入れするときは、食品の温度が上がってしまいます。

少しの温度変化であれば問題ないのですが、長時間食品の温度が上がると品質低下や食中毒リスクが高まります。

その結果、輸送した食品を廃棄せざるを得なくなることもあるかもしれません。

そうならないよう、流通時には以下のコールドチェーン対策が必要です。

  • 輸送中の温度をモニタリングできるロガーの設置
  • 荷積時にしっかり冷やし込んでから積み込む
  • 荷積時に車両と庫内の温度が上がらないようカーテンを設置

また予算の関係で、保冷車を準備できない場合は、低温を維持できるよう次のような工夫も大切です。

  • 車両に遮熱シートを張る
  • 保冷ボックスを用意し、低温管理が必要な食品を入れる

食品の温度が上がったまま流通を継続してしまうと、せっかく輸送した食品を廃棄しなければならないケースも生じるでしょう。

消費

食品の輸送時の温度管理が徹底されていても、消費者が適切な温度で食品を管理できなければ、せっかくの食材や商品が台無しです。

輸送された食品を、速やかに冷蔵庫内に入れて保管するまでがコールドチェーンシステムです。

食品に合わせて、冷蔵・冷凍庫内に入れましょう。

また、多くの人は「冷蔵・冷凍庫に食材を入れれば一安心」と思いがちですが、冷蔵・冷凍庫も消耗品の1つなので、故障することもあります。

冷蔵・冷凍庫を過信せず、定期的に庫内の温度チェックするのを忘れないようにしましょう。

輸送時の温度管理を徹底するコールドチェーンの課題

輸送時の温度管理を徹底するコールドチェーンの課題

コールドチェーンは輸送時の温度管理を徹底させ、食品の安全性や品質を保持する画期的な仕組みです。

しかし未だに全国で確立できておらず、輸送時の温度異常による食中毒事故発生は後を絶ちません。

コールドチェーンの課題は次の通りです。

コールドチェーンの課題

  • 構築までにコストがかかる
  • 低温処理の技術・知識が必要
  • 管理者の負担が大きい

それでは、1つずつ見ていきましょう。

構築までにコストがかかる

コールドチェーンシステムを導入するには、最低限次の施設・設備が必要です。

コールドチェーンシステム導入に必要な施設・設備

  • 温度管理ができる保管庫
  • 冷蔵・冷凍車両
  • 保冷箱

これらは決して安いものではなく、小規模な事業所の場合、経営を圧迫する恐れもあるでしょう。

流通時のコールドチェーンを外部委託に委託するとしても、委託費がかかります。

さらにコールドチェーンの需要が高まっているため、冷蔵・冷凍設備が全国的に不足しているという課題もあります。

低温処理の技術・知識が必要

コールドチェーンを実施するには、低温処理の技術や知識を持った従業員が必要です。

たとえば、次の作業をするには、低温処理の技術や知識が必要です。

低温処理の技術や知識

  • 青果を出荷する前には低温処理をする
  • 保冷車両を用意できない場合は、保冷Boxや遮熱カーテンを活用する
  • ロガーを使って車内や庫内の温度が一定かチェックする

また、「安全な食のため温度管理を徹底させる」という責任感と高い意識も求められます。

従業員の心身負担が大きい

コールドチェーンでは、製品の詰込みや搬出を低温下で行う必要があり、身体に大きな負担がかかります。

また少しの気の緩みで、食品の温度が上がり商品廃棄に繋がることもあるので、精神的な負担も計り知れません。

これらを解決するために、IoTの導入や在庫管理システムの確立などが進められていますが、まだ浸透していないのが現状です。

まとめ

まとめ

温度管理ときくと、自社が扱う商品や入荷した原材料の温度管理をイメージしがちです。

しかし、安全な商品を提供するには、原材料の入荷、商品の出荷・一時保管を行う輸送時の温度管理にも気を配る必要があります。

まとめ

  1. 輸送時は一般的に4つの温度帯に分けて温度管理されている
  2. 輸送時の温度管理を徹底すると廃棄ロスの削減や食中毒リスクの低減が期待できる
  3. 生産者から消費者まで一貫して温度管理をするコールドチェーンは課題が多い

輸送時の温度管理を徹底させ、安心・安全な食をお客様に提供しましょう。

関連記事