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衛生管理の7Sとは?5Sとの違いから実施するためのポイントまで簡単解説

衛生管理の7Sとは?5Sとの違いから実施するためのポイントまで簡単解説

個人衛生

衛生管理

「衛生管理の7Sって具体的には何をするの?」
「衛生管理の5Sとの違いは?」
食品の製造業者でよく唱えられている7S。
いずれも既に知っている言葉ばかりで、すぐに実施できそうなものばかりです。
しかしながら、この7Sを怠ったがゆえに食中毒や異物混入など大きな事故が発生しています。
今回は衛生管理7Sの定義をおさらいするとともに、確実に実施するためのポイントをご紹介します。
「衛生管理7Sは、実際に現場で活躍する従業員に周知・徹底してもらうことではじめて効果が出ます。」
衛生管理5Sとの違いについても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

衛生管理の7Sとは?

衛生管理7Sとは?

食品の衛生管理の7Sは、2004年に食品安全ネットワークが作った衛生管理活動です。

食品企業が取り組みやすくわかりやすい活動として、7Sを提唱し、普及活動を行ってきました。

後ほど詳しく解説しますが、7Sとそれぞれの定義は次の通りです。

7S定義
整理(Seiketsu) 要るものと要らないものを区別し、要らないものを処分する
整頓(Seiton) 要るものの置く場所・置き方・置く量を決めて識別
清掃(Seisou) 必要なものについたごみやほこりなどの異物を除去し、きれいに掃除すること
洗浄(Senzyou) 水・湯・洗剤などを用いて、機械・設備などの汚れを洗い清めること
殺菌(Sakkin) 微生物を死滅・減少・除去させたり、増殖させないようにする
躾(Sitsuke) 整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌におけるマニュアルや手順書、約束事、ルールを守ること
清潔(Seiketsu) 整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌が躾によって維持され、発展していく製造環境

それぞれの衛生活動が【S】から始まるので、7S となっています。

衛生管理7Sの目的

衛生管理7Sの目的は、安全で美味しい商品を消費者に提供することです。

衛生管理7Sを実施すると、食品の安全を保てるのはもちろんのこと、 従業員の衛生管理の意識が高まったり、効率よく製品を製造したりとメリットも多くあります。

衛生管理の7Sと5Sの違い

衛生管理7Sと5Sの違い

  • 衛生管理7S…微生物レベルの清潔さを求める
  • 衛生管理5S…工場の生産効率向上を求める

5Sは機械工場等がモデルとなった衛生管理活動で、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」が該当します。

これらは、視覚的な清潔さと生産効率の向上を求めているのが特徴です。

食品衛生では、視覚的な衛生だけでなく、食中毒菌など微生物レベルの清潔さが求められます。

そのため、食品の衛生管理では5Sに「洗浄・殺菌」の2つのSが加わった7Sが衛生管理の基本として唱えられているのです。

近年では、新型コロナウイルス感染拡大のため、洗浄・殺菌は多くの工場や飲食店でも徹底されています。

衛生管理7Sの要素を徹底解説

衛生管理7Sの要素を徹底解説

食品の衛生管理7Sの1つ1つの単語は、小中学生で習うものなので馴染み深いものとなっています。

しかし、食品の衛生管理のにおける7Sの定義は私たちが知っている単語の意味と若干異なるかもしれません。

ここからは、7Sの定義をおさらいし、それぞれの衛生管理活動の理解を深めましょう。

整理

定義

要るものと要らないものを区別し、要らないものを処分する

整理は衛生管理における基本中の基本ですが、きれいにできている現場は意外とすくないのが現状です。

食品事業者において、整理がうまくできない理由は次の通りです。

整理がうまくできない理由

  • 工場内・冷蔵庫・保管庫・休憩室など整理の対象が多い
  • 要るもの・要らないものの判断がしづらい

ほとんどの食品事業者では、要らないものが多いことで整理しづらい状態となっています。

事業所内を「要るもの」だけがある状態にするには、要らないものを処分する習慣づけが必要です。

事業主はもちろんのこと、従業員にも徹底するよう根気よく実施していきましょう。

整頓

定義

要るものの置く場所・置き方・置く量を決めて識別

整頓の基本は、定位置管理です。

要るものの置く場所を作り、その場所に収まる置く量や数を決めていきます。

新入社員もベテラン社員も関係なく、誰でも同じ位置に同じ量を置けるよう、写真やイラストを使ってわかりやすく提示するのがおすすめです。

定位置管理することにより、道具や備品などを探す手間や時間が省け、仕事の効率アップにも繋がります。

清掃

定義

必要なものについたごみやほこりなどの異物を除去し、きれいに掃除すること

清掃は文字通り、掃除をすることです。

目に見えるごみや埃、製造で出た食品くずなどを乾燥した状態で掃いたり、拭いたりします。

清掃は頻度が大切です。

清掃の頻度

  • 毎日行う日常清掃
  • 1週間ごとに行う清掃
  • 月例ごとに行う定期清掃
  • 特殊な汚れや場所を対象に行う重点清掃

どの清掃を誰が担当しても同じように綺麗になるよう、事業所は衛生作業手順書を作成する必要があります。

衛生作業手順書には、誰が・いつ・どこを・どのように清掃をするのかをわかりやすく記載しましょう。

作業手順書例

出典:日本のものづくり~品質管理、生産管理、設備保全の解説 匠の知恵 

洗浄

定義

水・湯・洗剤などを用いて、機械・設備などの汚れを洗い清めること

洗浄は清掃と違い、水や湯を使った湿潤状態で行う掃除のことです。

食品の製造業者では食中毒を防ぐために微生物レベルの清潔さが求められます。

そのため、水やお湯で拭き上げるのはもちろんのこと、洗剤などの薬剤を使用して洗浄度を高める必要があるのです

洗浄を行うときは、何の汚れかを確認し、

  • 酸性洗剤
  • 中性洗剤
  • アルカリ洗剤

のいずれかを使い分けます。

先ほどの清掃と同じく、誰がどの汚れに遭遇しても、正しい洗剤が使い分けられるよう、衛生作業手順書を作成しましょう。

また清浄度が保たれているか、定期的にATP検査やふき取り検査を行うのも忘れないようにします。

殺菌

定義

微生物を死滅・減少・除去させたり、増殖させないようにする

新型コロナウイルス感染症拡大により、殺菌については多くの食品事業所や飲食店で徹底されてきました。

しかしながら、殺菌が徹底していても「清掃」と「洗浄」が適切にできていないと、効果が十分発揮できません。

殺菌とともに日々の清掃や洗浄にも目を向けるようにしましょう。

しつけ

しつけ

整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌におけるマニュアルや手順書、約束事、ルールを守ること

食品の衛生管理7Sの中で最も重要といえるのが「躾」です。

なぜなら、整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌におけるマニュアルや手順書が素晴らしくても、これらを従業員が実施しなければ意味がないからです。

そのため、経営者はマニュアルや手順書に書かれたルールを正しく実施させるため、従業員へ躾を行う必要があります。

ルールの意味や必要性を教えるのはもちろんのこと、守らなかった者に対して叱責したり、ときにはペナルティを与えることも必要です。

またしっかり守っている人を称賛するのも大事です。

さらにルールは定期的に見直し、改めるのも躾の1つになります。

清潔

定義

整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌が躾によって維持され、発展していく製造環境

食品の衛生管理7Sの最後は「清潔」です。

食品事業では、見た目の清潔はもちろんのこと、食中毒を防止するための微生物レベルでの清潔さも求められます。

整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌が躾によって、管理できるようになると、食の安全を脅かす食中毒や異物混入などがなくなります。

つまり、安心・安全な食品を消費者に届けられるようになるのです。

清潔が保たれると職場の人間環境も良くなり、より生産性がアップする効果も期待できます。

衛生管理7Sを確実に実施するためのポイント

衛生管理7Sを確実に実施するためのポイント

衛生管理7Sのそれぞれの定義や重要性はわかりました。

では、7Sを食品事業者が確実に実施するためにはどうすればいいのでしょうか?

ここでは2つのポイントをご紹介します。

作業手順を定めてマニュアルを作成

経営者がどんなに衛生管理7Sの重要性を唱えても、具体的に何をするのか分からなければ、従業員はルールがわからないので、それぞれの指標で衛生管理を実施してしまいます。

7Sを確実に実施するために、新入社員もベテラン社員も同じ衛生管理ができるよう、作業手順を定めてマニュアルを作成しましょう。

マニュアルは誰が見ても分かるよう、写真やイラストを入れるのがおすすめです。

また、業務中に確認できるよう、わかりやすい場所に掲示したり、掃除用具入れなどにマニュアルをぶら下げたりと掲示場所にも気を付けます。

マニュアルは定期的に見直し、従業員の意見を取り入れながらよりわかりやすく具体的なものに改めていくのも大事です。

作業手順を守らせるための従業員教育

作業手順マニュアルがしっかりしていても、従業員がそれを確認しなかったり、自分勝手にルールを決めたりしていたら、清潔を保つことはできません。

なぜ作業手順マニュアルがあるのか、ルールを守らないとどんなリスクがあるのか、従業員教育をする必要があります。

従業員教育は座学で行ったり、実際の現場で行ったりとさまざまな方法があります。

従業員教育については、次の記事が参考になりますので、こちらもご覧ください。

衛生管理7Sを怠った食品事故2つの事例

衛生管理7Sを怠った食品事故2つの事例

衛生管理の7Sを怠ると、食中毒や異物混入などのリスクが高まります。

ここからは、衛生管理を怠ったがゆえに起こった2つの大きな食品事故事例をご紹介します。

いずれも、どの事業所でも起こりうる事故なので、同じような事故が起こらないよう7Sの衛生管理を徹底しましょう。

冷凍食品農薬混入事件(2014年群馬県)

2014年にアクリフーズ群馬工場(同年マルハニチロ統合)で製造した冷凍食品に農薬マラチオンが混入された事件。

この事件により、冷凍食品640万個が回収され、健康被害を訴えた消費者は2800人以上に上りました。

事件で逮捕されたのは、契約社員で以前から要注意人物だったとのこと。

犯行の動機は人間関係によるものだったことから、7Sの中でも躾が上手くいかなかったパターンであることが予想されます。

高齢者施設で発生したO-157食中毒事件(2012年北海道)

2012年に高齢者施設で白菜の漬物を食べた入所者がO-157食中毒に感染し、うち8名が死亡した事件です。

O-157はベロ毒素と呼ばれる強い毒素を出す大腸菌の一種で、感染すると激しい腹痛・下痢、嘔吐を発症し、最悪の場合死に至る恐ろしい食中毒菌。

この事件では、地元の漬物会社が製造した白菜の浅漬けにO-157が感染したことが原因となっています。

後の調査でこの漬物会社は、

  • 製造における記録がない
  • 殺菌液を従業員が目分量で計って入れていた

などずさんな衛生管理を行っていたことが判明しています。

まとめ:衛生管理の7Sを徹底して安全な食品を提供しよう

まとめ:衛生管理の7Sを徹底して安全な食品を提供しよう

衛生管理7Sは、安心・安全な食品を消費者に届けるために定められました。

しかしながら、衛生管理を怠ったがゆえに起こった食中毒事故は未だに発生しています。

まとめ

  • 衛生管理5Sと7Sの違いは微生物レベルでの清潔を求めるか否かである
  • 衛生管理7Sを怠ると食中毒や異物混入のリスクが高まる
  • 衛生管理7Sを確実に実施するには従業員の教育が必須

衛生管理7Sをきちんと実施すれば、安全な食品が提供されるのはもちろんのこと、職場環境の風通しが良くなったり、製造効率が向上したりとメリットも多くあります。

自社の衛生管理をもう一度見直し、食中毒や異物混入などの事故を未然に防ぎましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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