「HACCP導入の完全義務化に伴って、資料は揃えたけど実際の運用には課題が多い…」
「従業員の業務負担が大きすぎて、HACCP運用まで手が回らない」
HACCP導入の完全義務化からはや数ヶ月が過ぎました。
しかし、多くの小中規模事業者はHACCP導入についてまだ準備段階のところが多いようです。
今回は小中規模事業所のHACCP運用を円滑にするために開催されている、HACCPオンラインセミナーについて解説します。
「HACCPオンラインセミナーは、自社にいながら低コストで、専門家から直接指導やアドバイスを受けられるのでおすすめです。」
実際に開催されているHACCPセミナーについてもまとめましたので、ぜひご覧ください。
HACCP運用3つの課題
2021年6月1日より完全義務化となったHACCP導入。
しかし中小規模事業者からは、新型コロナウイルス感染症対策で現場の業務負担が増えたことから、「HACCP運用まで手が回らない」という声が挙がっています。
現場の声は様々ですが、食品事業者はHACCP運用について主に3つの課題に悩まされています。
食品事業者が抱えるHACCP運用3つの課題
- 作成したHACCPプランに不備がある
- HACCPプランを全従業員が把握していない
- HACCPプランを実施する余裕がない
それでは1つずつ見ていきましょう。
課題1:作成したHACCPプランに不備がある
農林水産省は令和2年6月に、「令和元年度の食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況の実態調査」の結果を公表しました。
出典:令和元年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果(概要)
調査結果の1つである、販売金額別のHACCP導入状況に注目すると、100億円以上の事業者の導入済み割合が90.3%。
それに対し売上規模5,000万円未満及び5,000万円以上1億円未満の小中規模事業者の導入済み割合は、わずか1割程度となっています。
つまり、小中規模事業者のHACCP導入が遅れていることがこの調査で明らかになったのです。
2021年9月時点で、HACCP未導入による事業者への罰則規定はありません。
しかしながら、HACCP導入については営業許可及び届出の検査の対象に含まれています。
未導入の場合は、指導の対象になったり営業許可の更新手続きが滞る恐れがあります。
そのため、HACCPに必要な資料作成だけで「導入済」としている事業所も少なくありません。
また保健所の指導を恐れて、間に合わせで作ったHACCPの資料も専門家ではない現場の従業員が作成したので、不備が多い可能性も。
しかしながら、小中規模事業者はHACCPコンサルタントのような専門家を雇う資金がありません。
その結果、間違ったHACCPプランを実施してしまう恐れがあります。
間違ったHACCPプランは、衛生管理に落とし穴があるので、異物混入や食中毒のリスクが高まり危険です。
課題2:HACCPプランを全従業員が把握していない
ClipLine株式会社は、HACCP完全義務化となった2021年6月、全国の食料品製造業・飲食店に所属する経営者及び従業員400名を対象にHACCP義務化の認知度調査を行いました。
出典:【調査リリース】2021年HACCP完全義務化後の導入状況 |ClipLine株式会社のプレスリリース
HACCPの認知度を管理職、一般社員それぞれ調査した結果によると、ともに「知っている」及び「ある程度知っている」は半数を超えています。
しかしながら、管理職以外の社員の約40%は「聞いたことはある」「全く知らない」と回答していることがわかりました。
出典:【調査リリース】2021年HACCP完全義務化後の導入状況 |ClipLine株式会社のプレスリリース
また一般社員を対象とした「HACCPに基づいた管理ができていますか」という質問の回答結果では、「正確に管理できている」と答えたのは3割にも満たない28%。
さらにHACCPに基づいた管理ができているか分からないと回答した人はなんと全体の1/4を占めるという驚きの結果が出ています。
このことから、HACCPプランを作成したとしても、多くの事業者では全従業員に把握されていないことが明らかになりました。
課題3:HACCPプランを実施する余裕がない
ClipLine株式会社では、課題2で紹介した質問のほかにHACCPに基づいた衛生管理ができていない理由について、尋ねています。
出典:【調査リリース】2021年HACCP完全義務化後の導入状況 |ClipLine株式会社のプレスリリース
その結果によると、「従業員の理解度に差がある」という回答が半数を占め、その他にも「人手が足りない」、「調理や接客などに追われ優先順位が低い」という回答が多数ありました。
このことから、HACCPに基づく衛生管理が現場の従業員にとって、負担になっていることが予想できます。
HACCPオンラインセミナーの開催が増えている理由
このような課題を踏まえて、最近では小中規模食品事業者を対象にした多くのHACCPオンラインセミナーが開催されています。
HACCPオンラインセミナーの開催が増えている理由は次の通りです。
理由1:新型コロナウイルス感染症の拡大により会場での開催が難しい
2020年に爆発的な感染力で日本を襲った新型コロナウイルス感染症。
飛沫感染することから、3密にならないよう国や地方自治体から指導が出されています。
多くのセミナーや会議がオンライン化する中、HACCP運用のセミナーも例外ではありません。
現在、さまざまな食品団体がHACCPオンラインセミナーを不定期で開催しています。
理由2:HACCP運用したてで様々な問題が生じている
HACCP運用の課題でも触れましたが、小中規模食品事業者はHACCPプランを作成したものの、
HACCP運用のさまざまな問題
- どうやって運用していけばいいのか
- 問題が起きたけどどこに相談すればいいのかわからない
など現場でさまざまな問題が出ています。
しかし、HACCPコンサルタントなどプロを雇う資金のない小中規模事業者は、問題が起きてもどう対処すればよいか分からずそのまま。
むしろ、問題が起きていることさえ気づいていない可能性もあります。
HACCPオンラインセミナーに参加することで、問題の早期発見と解決が期待できます。
理由3:低コストで専門家のセミナーを受けられる
HACCPコンサルタントなどの専門家を雇うにはある程度のお金が必要です。
とくにコンサルタントの場合は、現場に直接行って、アドバイスや指導をすることが多いので、交通費などの費用も別途請求されるかもしれません。
HACCPオンラインセミナーならば、全国どこにいてもPC1つで専門家とつながることができます。
プロと1対1の個別コンサルはもちろんのこと、コストを抑えるためにグループでのセミナーも開催されています。
そのため、コンサルを雇うよりも安い費用で、HACCP運用のアドバイスや指導を受けられます。
HACCPオンラインセミナー3つのメリット
HACCPオンラインセミナーの開催は、主催者・参加者ともにメリットがあります。
ここからは、HACCPオンラインセミナーの3つのメリットを解説します。
場所や時間の制約を受けにくく気軽に参加できる
HACCPオンラインセミナーは、ネット回線があれば全国どこからでも参加でき、人数制限もありません。
会場を押さえる必要もなく、手間もかからないので、主催者の都合が合えば何度もセミナーを開催することができます。
安い費用でセミナーを受けられる
HACCPセミナーを会場で実施する場合、主催者側は次の費用を捻出するため、参加者にセミナー代の徴収を行います。
セミナー開催にかかる費用
- 会場のレンタル代
- スタッフの交通費、給料
- 資料の印刷代など
セミナーの内容や規模にもよりますが、会場で行う場合の参加費は基礎講座であっても、1回あたり1人10,000円~30,000円ほどかかる場合があります。
また会場までの交通費も支払わなければならないので、参加者の負担は大きくなりがちです。
しかしオンラインセミナーであれば、主催者側の運用コストがほとんどかからないので、参加者は無料もしくは数千円の費用負担でセミナーに参加できます。
主催者とのコミュニケーションが取りやすい
オンラインセミナーを開催するときは、Zoomなど「ウェビナーツール」と呼ばれるITツールを使います。
ウェビナーツールには、アンケートやチャットなど主催者と参加者が互いにコミュニケーションを取れる機能が付いています。
そのため、セミナー内でわからないことがあれば主催者に質問することも可能です。
主催者と参加者の距離が近く感じるのもオンラインセミナーのメリットの1つです。
HACCPオンラインセミナー2つのデメリット
HACCPオンラインセミナーはメリットがある一方、デメリットもあります。
ここからはHACCPオンラインセミナーの2つのデメリットを解説します。
集中力が続かない
HACCPオンラインセミナーの受講はネット環境が整っていれば、どこでも受講することができます。
そのため多くの参加者は、事業所内の事務所などで受けることになるでしょう。
しかしながら事業所内で受講するとなると、途中で来客の対応をしたり、トラブル対応で席をやむを得ず席を外したりとセミナーに集中できない恐れがあります。
経営者は、HACCPオンラインセミナーを事業所内で従業員に受けさせる際には、次のような対応を取るといいでしょう。
- 個室を用意して他の従業員の出入りを制限する
- 受講中は作業人員を増やす
このような配慮をすることで、HACCPオンラインセミナーを集中して受講することができます。
同業者との交流が難しい
HACCPオンラインセミナーは主催者とのコミュニケーションが取りやすい一方で、 参加者同士の交流が取りにくいというデメリット があります。
主催者がセミナーで話している横で、オンライン上で同業者と話をしていたら、他の参加者に迷惑をかけてしまいますから。
しかしセミナーは、同業者と交流が取れる貴重な機会でもあります。
HACCPオンラインセミナーの中には、少人数で座談会のようなものも開催されており、そこでは互いに自己紹介したり自社の課題を話し合ったりしているようです。
同業者と交流を深めたい方は、少人数制のセミナーに参加するのがおすすめです。
全国で開催されているHACCPオンラインセミナー
ここまでHACCPオンラインセミナーのメリット・デメリットについてお話ししてきました。
では実際のHACCPオンラインセミナーにはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、2つのHACCPセミナーをご紹介します。
主催団体 | 一般社団法人 食品経営支援協議会 |
セミナー名 | 2時間半で学ぶHACCPセミナー |
研修内容 | HACCPとはどういうものかを学習するプログラム。講師がリアルタイムで配信。 |
開催方法 | ZOOMのリアル配信。5名以上の参加で開催 |
受講料 | 無料 |
申込URL | https://fmsc.or.jp/2-5h/ |
主催団体 | 株式会社グローバルテクノ |
セミナー名 | 食品安全・HACCP基礎コース |
研修内容 | HACCP導入のポイントやHACCP認証から今日からはじめられる食品安全の取り組みまでわかりやすく解説 |
開催方法 | Zoomのリアルタイム配信 |
受講料 | 22,000円 |
申込URL | https://gtc.co.jp/semn/iso22000/fsmiweb.html |
まとめ:HACCPオンラインセミナーに積極的に参加しよう
HACCPオンラインセミナーは、場所を選ばず低コストで専門家からの指導を受けることができます。
新型コロナウイルス感染症対策で、HACCP導入を見送っていた小中規模事業者も、今ならまだ間に合います。
まとめ
- HACCP運用において小中規模事業所はさまざまな問題を抱えている
- HACCPオンラインセミナーは人数制限や場所を選ばず参加できる
- 経営者は従業員がHACCPセミナーを円滑に受けられるよう配慮する必要がある
低コストなHACCPオンラインセミナーを受けて、HACCPに基づいた衛生管理をしていきましょう。
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