「TCS食品って何?」
「TCS食品にはどんなものがあるの?」
TCS食品は、生鮮食品やたんぱく質の多い大豆製品、乳製品など多岐に渡ります。
TCS食品は、食中毒菌が繁殖しやすい食品のため、運搬や保管・調理には適切な時間と温度管理が必要です。
この記事ではTCS食品とは何か、TCS食品に該当する食品やその扱い方からTCS食品の適切な冷却プロセスまでを解説します。
お客様に安心・安全な食を提供するためにも、TCS食品の管理方法や提供時の注意点を確認しましょう。
TCS食品とは?
TCS食品とは、安全のため時間と温度コントロールが必要とされる食品のことです。
TCS食品に該当する食品は、時間と温度コントロールが適切でないと食中毒の危険性が高まります。
熱い食べ物は一定温度で保温し、冷たい食べ物は冷蔵または冷凍保管する。 TCS食品を扱うときは、この基本を遵守しましょう。
また、TCS食品を一定時間「危険ゾーン」と呼ばれる菌が繁殖しやすい温度帯で、放置してしまった場合、その食品は廃棄対象となります。
もったいない…と思うかもしれませんが、TCS食品は食中毒菌が発生しやすく、口にする人によっては命に関わる危険性があります。
廃棄も安全な商品を守るための業務の1つであることを覚えておきましょう。
TCS食品に該当する食品の例
時間と温度コントロールが必要なTCS食品とは、次のような食品を指します。
肉類 | 牛肉・豚肉・鶏肉 |
乳 | 牛乳・乳製品 |
魚 | 鮮魚・甲殻類・貝類 |
野菜・果物 | 大豆製品・茹でたジャガイモ・スプラウト・かいわれ・もやし・スライスしたメロンやカット生野菜 |
その他 | ごはん・生ニンニクをつけたオイル |
肉類でもとくに気を付けたいのが鶏肉です。 鶏肉は、高い確率でカンピロバクターと呼ばれる食中毒菌に汚染されています。
カンピロバクターは、令和2年度の細菌性食中毒の年間発生件数の約2割を占める原因菌です。
参照:食中毒統計調査 令和2年度食中毒統計調査 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
鶏肉を扱うときはカンピロバクターが増殖しないよう、適切な温度で保管し、調理するときには十分加熱する必要があります。
その他の肉類も、加工度が高いほど食中毒菌の保菌率が高くなるので、適切な温度管理をしましょう。
また、TCS食品に該当する食品には次のような特徴があります。
TCS食品に該当する食品の特徴
- 高たんぱく質
- でんぷん質が高い
- 野菜類
- 水分を多く含む
今回紹介した食品例は、あくまでも一部です。
TCS食品の特徴を確認し、1つでも該当する食品がある場合は、保管・保存に十分注意しましょう。
TCS食品を安全に提供するために必要なTT管理
TCS食品を安全に提供するためには、適切な頻度で食品の中心部もしくは保管している冷蔵・冷凍庫の温度を測り、記録する必要があります。
なぜなら、記録を確認しながらTCS食品が一定時間、危険ゾーン内の温度にならないよう、冷却・再加熱する必要があるからです。
食品を温度(Temperature)と時間(Time)を組み合わせて、食品の品質と衛生を守る管理をTT管理と言います。
適切なTT管理を行うとTCS食品で増殖しやすい食中毒菌も抑制することができます。
適切な温度を測るために必要なこと
TCS食品の温度を測る時は、交差汚染しないよう、1回1回必ず洗浄と消毒を行いましょう。
また、温度計は経年劣化により数値がずれてしまうことがあります。
定期的に公正を行い、適切な温度を測れなくなったら、廃棄するようにしましょう。
丈夫で長持ちすると思われがちな冷蔵庫や冷凍庫も、消耗品の1つです。
むしろ食材の出し入れで、毎日頻回に開閉するので、家庭用の冷蔵庫よりも耐久年数は短い恐れがあります。
冷蔵庫や冷凍庫を過信せず、定期的に冷凍庫・冷蔵庫内の温度も徹底しましょう。
冷凍庫・冷凍庫内の温度管理は人の目ではなく、Iotに任せるのがおすすめです。
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TCS食品を調理するときの適切な温度
TCS食品は適切な温度で調理することで、細菌や食中毒菌を死滅させることができます。
とくにTCS食品を加熱調理する場合は、食品の中心温度が適切な温度帯に達しているかどうかを確認しましょう。
また、交差汚染しないよう洗浄・消毒された調理器具を使用し、一度使用した調理器具は、再利用せず調理のたびに1回1回洗浄・消毒をします。
TCS食品ごとに調理するときの適切な温度を以下にまとめました。
調理時の適切な温度 | TCS食品とその調理法 |
---|---|
73.8℃(165°F) | ・鶏肉・ソーセージ、ウィンナー(加熱調理した食品を2時間以内に再加熱) |
68.3℃(155°F) |
|
62.7℃(145°F) |
|
57.2℃(135°F) |
|
5℃以上~57.2℃(41°F~135°F) | 危険ゾーン ※食中毒菌が増殖しやすい温度帯※ |
5℃以下(41°F以下) | 調理済の食品を冷蔵・冷凍食品 |
原則として、TCS食品は2時間以内に適切な温度帯にコントロールする必要があります。
冷たい食品の場合、安全な温度帯は5℃以下。熱い食品の場合、74℃以上です。
また冬場の寒い時季であっても、TCS食品を常温で放置するのは厳禁です。
TCS食品に該当する食材を入荷したときには、食中毒菌が増殖しないよう、冷蔵庫や冷凍庫にすばやく保管するようにしましょう。
TCS食品の冷却プロセス
適切な温度で加熱調理したTCS食品は、調理後すぐに食べるのであれば問題ありません。
飲食店などで作り置きする場合は、冷却プロセスに従い素早く冷却し冷蔵保存しましょう。
TCS食品の冷却には、2段階の冷却プロセスが必要です。
【2段階の冷却プロセス】
時間制限 | 冷却温度 |
---|---|
2時間以内 | 21℃(71°F)まで |
6時間以内 | 5℃(41°F)まで |
TCS食品を可能な限り食中毒菌が増殖する危険ゾーンの温度にならないよう、冷却するまでの時間制限と温度制限が設けられています。
もし、時間制限内に既定の温度までTCS食品を冷却できなかった場合は、その商品は廃棄しましょう。
TCS食品を冷却処理するときは、1時間おきに食品の温度を測り記録します。
《TCS食品の冷却記録簿(例)》
日付 | 食品 | 開始時 | 1時間 | 2時間 | 冷却チェック | 3時間 | 4時間 | 5時間 | 6時間 | 冷却チェック |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2月1日 | 豆のスープ | 9:00 60℃ |
10:00 48℃ |
11:00 25℃ |
× 廃棄 |
|||||
2月1日 | ご飯 | 9:00 55℃ |
10:00 32℃ |
11:00 20℃ |
○ | 12:00 13℃ |
13:00 10℃ |
14:00 7.2℃ |
15:00 5℃ |
○ |
豆のスープとご飯を冷却したときの記録簿をみてみましょう。
1時間毎に温度を計測したところ、2時間後の中心温度は、豆のスープで26℃(80°F)、ご飯は20℃(68°F)でした。
この場合、豆のスープは規定温度よりも4℃高くなっています。
わずか4℃くらいと思われるかもしれませんが、豆のスープは2時間以内に21℃以下に冷却できなかったので、ここで廃棄します。
ご飯はその後も計測し続け、6時間以内に5℃以下に冷却することができたので、そのまま保存することが可能です。
TCS食品を素早く冷却するための工夫
熱いTCS食品を冷却する場合、危険ゾーン(約20℃~50℃)の温度帯の時間をできる限り短くする必要があります。
熱いTCS食品を素早く冷却するには、次の方法が効果的です。
- 冷却機を用いる
- 衛生的な場所で洗浄、消毒した容器に小分けする
厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、加熱調理済の食品を冷却する場合、次の指示をしています。
TCS食品の冷却プロセスで決められた温度設定よりも厳しいものとなっていることを覚えておきましょう。
TCS食品を適切に管理するメリット
TCS食品は食中毒菌が発生しやすいので、お客様に安全な食を提供するためにも、適切な管理が必要です。
少しのミスでも廃棄対象となってしまうことがあるので、取り扱いが難しい食品です。
しかし、TCS食品を適切に管理すると次のメリットがあります。
TCS食品を適切に管理するメリット
- TCS食品だけでなく他の食材も適切な管理ができる
- 廃棄物の削減
- 食中毒事故の予防
- 冷蔵・冷凍庫の異常を迅速に確認
お客様に安心・安全な食を提供し続けられることで、結果的に売り上げアップも期待できます。
まとめ:TCS食品には適切な時間と温度管理が必要
TCS食品とは時間と温度管理が必要な食品のことで、食中毒菌が増殖しやすい食品とも言えます。
TCS食品を取り扱うときは、食中毒菌が増殖しやすい危険な温度帯をできるだけ避けるため、適切なTT管理を行う必要があります。
まとめ
- TCS食品を管理するには時間ごとの記録も重要
- 加熱処理したTCS食品は2段階の冷却プロセスが必要
- TCS食品を適切に管理することで廃棄物の削減ができる
食品事業者は食中毒事件を防ぐためにも、TCS食品の特徴を理解し、適切な管理・保管を徹底する必要があります。
お客様にいつでも安心・安全な食品を提供するためにも、TCS食品の取扱いには十分注意しましょう。
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