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アレルギー物質で表示義務があるものは?その理由と表示例を徹底解説

アレルギー物質で表示義務があるものは?その理由と表示例を徹底解説

アレルゲン管理食品にまつわる法律

飲食店

※2024年11月11日時点の情報です

「エビ・カニはアレルギーの表示義務の品目にあたるけどイカは?」

アレルギー発症数が多くなっている今、多くの商品でアレルギー表示を目にするようになりました。

とはいえ、「表示義務化されているアレルギー物質8品目を全て答えて!」と言われても迷う人が多いのではないでしょうか?

「食品業界に従事している方で、表示義務化されているアレルギー物質8品目を覚えていないのは危険です。」

なぜならアレルギー情報の表示ミスや混入事故が起きてしまうと、食べてしまったお客様に重篤な健康被害が及んでしまう恐れがあるからです。

さらに2024年10月より、消費者庁はアレルギー表示義務品目(特定原材料)にカシューナッツを追加するか検討することを発表しています。

そこで今回は、アレルギー物質で表示義務化されている8品目と表示推奨されている20品目を再確認。

さらに、食品の原材料欄に表示されるアレルギー物質の表記方法の違いについても解説します。

アレルギー物質で表示義務があるものは?

アレルギー物質で表示義務があるものは?

アレルギー物質で表示義務があるものは、次の8品目です。

!表示義務化されているアレルギー物質(品目)

  • 小麦
  • 落花生
  • えび
  • そば
  • かに
  • くるみ(2023年追加)

この8品目は、アレルギー発症数が他の食品よりも多くアナフィラキシーショックが起こる可能性も高いことから、食品の表示が義務化されています。

食品表示については、以下の記事で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。

カシューナッツが表示義務化の動きへ。その理由は?

カシューナッツがアレルギー表示義務化検討されたのは、2023年の消費者庁の調査でカシューナッツが原因の食物アレルギーの症例数が、全体の4.6%を占めたためです。

昨年、消費者庁に報告された食物アレルギー症例件数は、全部で6033件。そのうち、カシューナッツが原因の症例数は279件と、原因食物の中で7番目の多さとなっています。

12年前の調査では、14番目で全体に占める割合も0.4%とごく少数でしたが、徐々に上昇しています。

さらにアナフィラキシーなど重篤なショック症状も37件報告されており、これは5番目に多い件数です。

消費者庁は、2024年度内にカシューナッツの表示義務化検討のための有識者会議を開くと公表していることから、近い将来、カシューナッツが表示義務化される可能性は非常に高いと言えるでしょう。

2023年にはくるみがアレルギー表示義務化

2023年3月には、食物アレルギーの義務表示対象品目にくるみが追加されています。

アレルギー表示義務化の品目が増えたのは、2008年6月に【えび】・【カニ】が特定原材料に追加されて以来のことです。

くるみがアレルギー表示義務化になったのはなぜ?

くるみによるアレルギー発症数が10年間で急増しているからです。

消費者庁が医療機関と協力し、3年毎に実施しているアレルギー「即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」から、くるみのデータを抜粋してみました。

【くるみのアレルギー症例数】

  2011年 2014年 2017年 2021年
即時型症例数 40 74 251 463
ショック症例数 4 7 42 58

参照
第1回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2021年2月15日) | 消費者庁
第67回 食品表示部会【参考資料】 - 内閣府

即時症例数とは、アレルゲンを口にして数時間から数日の間に目のかゆみや喉の腫れ、皮膚疾患などの症状が出た数のこと。

ショック症例数は、重篤なアナフィラキシーショックの症状が出た数のことを表しています。

まず2011年と2021年の即時症例数を比較すると、10倍以上増加していることがわかります。

さらにアナフィラキシーなど重篤な症状も過去3年間で58例。

この数字は同じ時期に調査した、落花生のショック症例数の48例よりも多い数です。

実はくるみの表示義務化の動きは、以前から検討されていました。

ただ表示義務化にすると罰則を伴うことから、慎重に議論され、ようやく表示義務化への運びとなりました。

ただ、法整備には時間がかかるので、いつから表示義務化になるのか、具体的な施行日は決まっていません。

くるみアレルギーの発症数が急増したのはなぜ?

くるみの消費量が増加したからです。国内で消費されるくるみは90%以上が輸入品です。

ここからは、くるみの輸入量から国内のくるみ消費量を確認してみましょう。

《くるみ(むきみ)の輸入量》

2011年 2014年 2017年 2021年
輸入量(トン) 9,872 14,111 19,179 18,826

参照:特用林産物生産統計調査:農林水産省

2011年~2021年の10年間でくるみの輸入量は約2倍も増加。

先ほどの症例数と照らし合わせると、くるみの消費量増加に伴い、くるみアレルギーも増加していることがわかります。

また、くるみは消化しにくく、体内を通過するときに口、のど、胃や小腸など各種臓器で症状を発症する恐れがあります。

さらに長く体内に留まることから、重症化しやすいとの報告も出ているので注意が必要です。

食品事業者には、既定の表示で正しい情報を消費者に伝える義務があります。

とくに今回のような、法改正時には注意が必要です。

アレルギー表示は、消費者の命にかかわるので、「知らなかった」では許されません。

そのためにも、今後新しい製品の開発や包装資材の発注、表示シール作成の際には、表示義務の適用時期などの情報にしっかりアンテナを立てておきましょう。

アレルギー物質が表示義務されている理由

アレルギー物質が表示義務されている理由

食の欧米化や生活習慣の変化に伴い、さまざまな原因でアレルギー症状を訴える人が増えています。

じんましんや体の痒みなど私たちに不快な症状を引き起こすアレルギーですが、原因となるアレルゲン(抗原)の種類は身体の侵入経路により次の3種類に分けられます。

アレルゲンの種類

  • 吸入性アレルゲン
  • 食物性アレルゲン
  • 接触性アレルゲン

とくに近年では食物性アレルゲンによるアレルギー症状を訴える患者が急増しています。

中にはアナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な症状が出て、命の危機にさらされてしまう人もいます。

2012年東京都調布市の小学校では、重度の乳製品のアレルギーを持った女児が給食のチヂミを食べた後、アナフィラキシーショックを起こし、死亡するという痛ましい事故が起きました。

このようにアレルギー物質を摂取して、重篤な症状を起こしたり、命の危機にさらされたりするのを未然に防ぐため、アレルギー物質は表示義務化されています。

アレルギー物質が表示義務されるまでの経緯

アレルギー物質が表示義務されるまでの経緯

アレルギーによる健康被害を防ぐため、日本では2001年の食品衛生法改正で初めてアレルギー物質が表示義務化されました。

その後、食物アレルギーの被害が報告されるたびに、表示義務または表示推奨する品目が増えていきました。

【アレルギー物質の表示義務を含む食品表示の経緯】

年月内容
2001年3月 食品衛生法改正により、アレルギー物資の表示が義務化
  • 【表示義務】特定材料5品目(卵・乳・小麦・そば・落花生)
  • 【表示推奨】特定材料に準ずるもの19品目
2004年12月 アレルギーの表示が推奨されている食品に「バナナ」が追加
2008年6月 特定原材料に準ずるもの20品目の中にある「えび」、「かに」の2品を【表示義務】特定材料に追加。【表示義務】の特定材料が7品目になる。
2013年9月 【表示推奨】特定材料に準ずるものに「ごま」・「カシューナッツ」を追加
2019年 【表示推奨】特定材料に準ずるものに「アーモンド」を追加
2024年 【表示推奨】特定材料に準ずるものに「マカダミアナッツ」を追加。松茸を削除。

参照:【資料 6】消費者庁における主な取組み|厚生労働省

2024年11月時点で、表示義務化されているアレルギー物質(特定原材料)は8品目。表示が推奨されているアレルギー物質は20品目になります。

アレルギー物質の表示義務が規定されている食品表示法が施行された経緯

2015年以前、食品表示に関するルールは、食品に関する次の3つの法律が別々に管理・規定していました。

食品に関する次の3つの法律

  • 食品衛生法…健康の保護を図るために必要な食品表示ルール
  • 健康増進法…健康増進を図るために必要な食品表示ルール
  • JAS法…食品の品質表示の適正化を図るために必要な食品表示ルール

3つの法律の中で、アレルギー物質の表示に関する法律は、食品衛生法によって定められていました。

ただ、それぞれが食品表示のルールを定めていたことで、消費者も事業者も理解しにくいことが難点でした。

3つの法律の中にある、食品表示に関する事項を集めて分かりやすくまとめたものが、2015年に施行された食品表示法です。

食品表示法には、アレルギー物質の表示以外にも、

  • 内容量
  • 原産地
  • 保存方法
  • 賞味期限

などの消費者が安心・安全な食品を選択するための情報をわかりやすく伝えるための表示ルールが定められています。

アレルギー物質で表示が推奨されているものは?

アレルギー物質で表示が推奨されているものは?

アレルギー物質で表示推奨されている20品目は次の通りです。

!アレルギー物質で表示推奨されている20品目

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、マカダミアナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

これら20品目は、表示義務化されているアレルギー物質に比べると、症例数や重篤な症状は少ないです。

しかし、症例数や重篤な患者が継続して相当数みられることから、20品目も積極的に表示するよう指示されています。

【要注意】アレルギー物質の表示義務がない商品もある

【要注意】アレルギー物質の表示義務がない商品もある

事例のように、食品によるアレルギーで亡くなる人を防ぐためにも、食品に含まれる原材料を正確に知ることができるアレルギー物質の表示義務は必須です。

しかし、アレルギー物質の表示が義務化されているのは「容器包装された加工食品」に限られています

一方、飲食店で提供される食事や対面販売されているお惣菜やパン、アルコールにはアレルギー物質の表示が義務化されていません。

だからと言って、アレルギー物質を気にせず商品を製造・販売してもいいというものではありません。

  • 飲食店で提供する食事や店頭で販売する商品に表示義務化されている8品目のアレルギー物質は入っていないか。
  • 同じ調理場や製造現場で表示義務化されているアレルギー物質を使った商品を調理・製造していないか。

事業主は確認しておく必要があります。

またアレルゲンの混入事故が起こらないよう、商品を製造・調理する従業員にも、アレルギー物質の取扱いについて、指導・教育を徹底しましょう。

お客様に商品に含まれているアレルギー物質の有無を尋ねられても、どの従業員も正しく答えられるようにするのがベストです。

アレルギー物質の表示例①代替表記と拡大表記

アレルギー物質の表示例①代替表記と拡大表記

食品のアレルギー物質の表示には、表示が義務化されているもの(品目)と表示が推奨されているもの(20品目)があることがわかりました。

しかしながら、製品に表記されるアレルギー物質は先ほど説明した、原材料名―「卵」や「小麦」がそのまま表記されるとは限りません。

商品によって様々な表記方法があります。 ここでは商品に記載されるアレルギー物質の表記方法や表示例をご紹介します。

代替表記

代替表記とは、アレルギー物質の表記が特定原材料名と違うが、同一であると理解できる表記のことです。 たとえば、アレルギー物質の表示義務品目の1つである「卵」は、次の書き方が認められています。

【卵】の代替表記

  • 玉子
  • たまご
  • タマゴ
  • エッグ
  • 鶏卵
  • あひる卵
  • ウズラ卵

上記のような表記は、「代替表記」と呼ばれています。 つまり、商品に必ずしも「卵」と書かれているわけではないのです。

卵アレルギーを持っている方は、これらの表記がある場合、食べないよう注意する必要があります。

拡大表記

拡大表記とは、特定原材料名または代替表記を含んだ食品名を表記することです。

たとえば、厚焼き玉子・ハムエッグなどは「卵」を用いた食品であると理解できるので、食品表示の際にこの名称を使っても問題ありません。

表示義務化されているアレルギー物質の代替表記・拡大表記例

アレルギー物質の表示義務8品目の代替表記と拡大表記例は次の通りです。

特定原材料8品目代替表記拡大表記(表記例)
えび 海老、エビ えび天ぷら、サクラエビ
かに 蟹、カニ 上海がに、マツバガニ、カニシューマイ
小麦 こむぎ、コムギ 小麦粉、こむぎ胚芽
そば ソバ そばがき、そば粉
卵※1 玉子、たまご、タマゴ、エッグ、鶏卵、あひる卵、うずら卵 厚焼玉子、ハムエッグ
ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム アイスミルク、ガーリックバター、プロセスチーズ、乳糖、乳たんぱく、生乳、牛乳、濃縮乳、加糖れん乳、調整粉乳
落花生 ピーナッツ ピーナッツバター、ピーナッツクリーム

※1「卵白」「卵黄」については、特定原材料名の「卵」を含んでいますが、事故防止の観点から、拡大表記として(含む)旨の表示を省略するこは出来ません。例)卵白(卵を含む)など

引用:食品表示基準について別添アレルゲン関係 別表3|消費者庁

このように1つのアレルギー物質に対して、さまざまな代替表記と拡大表記が使われています

家族や知り合いなど身近な人がアレルギーを持っている場合は、誤ってアレルゲンを食しないよう、事前にこれらの表記を確認しておきましょう。

アレルギー物質の表示例②個別表示と一括表示

 アレルギー物質の表示例②個別表示と一括表示

商品に表示する原材料を細かく表記すると、表示欄に入りきれないことがあります。 たとえば、パンの原材料のマーガリンは加工品の一つです。 その原材料を書きだすと、次の通りになります。

  • 発酵乳
  • 精油した植物油(大豆油・コーン油・菜種油など)
  • 食塩
  • ビタミン類

原材料に加工品が出るたびにこのように書いていては、表示欄がすぐに埋まってしまい、重要なアレルギー物質が表示できなくなります。

よって、マーガリンのような原料加工品はそのまま表記してもいいことになっているのです。

しかしマーガリンの中には、表示義務の乳や表示推奨されている大豆といった、アレルギー物質が含まれています。

原料加工品にアレルギー物質が含まれている場合、含まれているアレルギー物質は別途書きだす必要があります。

原料加工品に含まれるアレルギー物質の表記方法は次の通りです。

  • 個別表記
  • 一括表記

原材料表示欄にアレルギー物質を表記する場合、個別表示が原則です。 しかし、原材料表示欄が狭いなどやむを得ない場合は「一括表示」も認められています。

ここでは、アレルギー物質の個別表示と一括表示を詳しく解説します。

個別表示

原料加工品にアレルギー物質が含まれているとき、原料加工品名の後にカッコ書きでアレルギー物質を表記する方法です。 個別表記をすると、アレルギー物質が含まれている原材料は何かを知ることができます。

《個別表示例》

名称 パン
原材料名 小麦粉、砂糖、マーガリン(大豆、乳成分を含む)、脱脂粉乳、卵、パン酵母、食塩/乳化剤(大豆由来)

この表記では、マーガリンにアレルギー物質の大豆、牛乳が使われていることがわかります。

一括表示

一括表記は、商品に含まれるアレルギー物質を、原材料表示欄の最後に一覧表記する方法です。

《一括表示例》

名称 パン
原材料名 小麦粉、砂糖、マーガリン、脱脂粉乳、卵、パン酵母、食塩/乳化剤(大豆由来)、V.C(一部に卵・乳成分、小麦・大豆を含む)

カッコ書きを見れば、アレルギー物質を一目で確認できます。

しかし、個別表記のようにアレルギー物質を含む原材料は何かを知ることができません。

まとめ:アレルギーからお客様を守るために最大限の表示努力をしよう

まとめ:アレルギーからお客様を守るために最大限の表示努力をしよう

食物アレルギーは生まれつきだと思われがちですが、大人になってから発症する人も少なくありません。

そのため、アレルギー症状を訴える人は幼児から高齢者まで様々です。

まとめ

  1. 表示義務化されているアレルギー物質は8品目
  2. 表示が推奨されているアレルギー物質は20品目
  3. アレルギー物質の表示が義務化されているのは包装加工品や缶詰
  4. アレルギー物質の表記方法は食品によって異なる

飲食店や対面販売の商品にアレルギー物質の表示義務はありません。

しかし販売しているからには、商品に表示義務化されているアレルギー物質が含まれているか否かを確認し、お客様に尋ねられたときは回答する必要があります。

アレルギーを持つ人が安心して食品を口にできるよう、食品業界に従事している私たちは最大限の努力をしましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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