
国内だけでなく、海外に自社商品を輸出したいと考えている事業者も少なくないでしょう。
数ある貿易国の中でも、まずは貿易大国であるアメリカへの輸出を検討している事業者もいるのではないでしょうか。
「郷に入れば郷に従え」という言葉があるように、アメリカに食品を輸出するには、アメリカの法律や規律を遵守する必要があります。
この記事では、日本からアメリカに食品を輸出するために遵守しなければならない、米国食品強化法 FSMAをわかりやすく解説します。
アメリカへ自社商品を輸出しようと検討している食品事業者の方はぜひご覧ください。
米国食品強化法 FSMAとは?
米国食品強化法(FSMA)とはFood Safety Modernization Actのことで、2011年にアメリカが制定した食品安全に関する法律です。
アメリカで制定された法律ですが、FSMAはアメリカに流通する全ての食品―つまり輸入食品にも適用されます。
2024年、日本の農林水産物・食品の輸出先ランキングでアメリカが初めて首位となり、輸出額は過去最高の2,429億円(前年比17.8%増)を記録しました。
このことからも、FSMAを無視しての取引は不可能です。
アメリカへの食品輸出を突然ストップさせられないよう、食品事業者はFSMAの内容を理解し、法を遵守するため適切な対応をする必要があります。
米国食品強化法 FSMAが制定された背景
米国疾病予防管理センター(CDC)は、2019年にアメリカ国内で発生した食中毒について、主な7つの病原体による影響を推計しました。
対象となる7つの病原体
- カンピロバクター(Campylobacter spp.)
- ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)
- リステリア菌(Listeria monocytogenes)
- ノロウイルス(Norovirus)
- サルモネラ菌(Salmonella(チフス以外))
- 腸管出血性大腸菌(STEC)
- トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)
2019年にアメリカ国内で発生した食中毒(推計)
- 食中毒件数 990万件
- 入院患者 5万3,000人
- 死亡者 931人
米国疾病予防センターによる推計値によると、アメリカ国内では、食中毒による死亡事故が年間約1,000件発生しています。
事故原因を追及するとそのほとんどは、予防可能なものであったと推測されています。
そこで、食品を供給する時点で事故を予防するための対応を徹底するためにFSMAが制定されました。
米国食品強化法(FSMA)の対象
FSMAが適用される対象は、アメリカ国内で流通する農産物・食品を育成・製造・加工・包装・保管する事業者です。
アメリカ国内の事業者はもちろんのこと、アメリカ国内へ農産物や食品を輸出する企業も対象となります。
対象となる農産物・食品の一覧
- 野菜・果実
- 精米
- 水産物
- ジュース
- 低酸性缶詰食品
- 栄養補助食品
- 栄養補助成分
- 乳児用ミルク
- 清涼飲料水
- 殻付き卵
- 乳製品
- 食品添加物
- 緑茶
- その他加工食品全般(パン・菓子類・調味料など)
一方、米国農務省(USDA)が管轄する食品(畜肉・家禽肉・卵製品)のみを扱う事業者はFSMA対象外です。
食肉加工品の輸出は、米国農務省(USDA)や米国農務省食品安全検査局(FSIS)の規定を満たす必要があります。
輸出したい商品のジャンルや特性によって、対象となる法令や関連規則が決まっているのでそれぞれ内容を確認しましょう。
アメリカへ食品を輸出をするには?
アメリカへ食品を輸出するには、米国食品医薬品局(FDA)への施設登録および2年ごとの更新が必要です。
また、日本からの輸出だけでなくアメリカに日本企業が進出し、国内で製造・流通する場合にも同じ手続き・更新が必要なので覚えておきましょう。
米国食品医薬品局(FDA)は、定期的にアメリカ国内だけでなく登録された海外の企業への査察をおこなっています。
PCHF規則の対応が必須
アメリカへ自社商品を輸出するには、FDAへの施設登録とともに、製造から保管までの全ての工程でPCHF規則の対応が必要です。
PCHF規則とはPreventive Control for Human Food Ruleのことで、FSMAの第103条で定められたヒト向け食品に対する予防コントロールのことです。
PCHF規則は7つのサブパート(章)に分けられており、原則ABCFGのサブパートで決められた要件を満たす必要があります。
それぞれのサブパートのタイトルと内容は次の通りです。
| パート | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| サブパートA | 一般規定 | 定義・個人の適格性・免除など |
| サブパートB | 現行適正製造規範 | 衛生的な業務・衛生的な施設および管理・機器及び用具など |
| サブパートC | 危害分析およびリスクに応じた予防管理 | 食品安全計画、危害分析、予防管理、リコール管理、モニタリング、是正措置、修正、検証、妥当性確認など |
| サブパートD | 修正要件 | 適格施設に適用される修正要件、非エクスポージャー包装済み食品の管理のみに従事する施設に適用される修正要件など |
| サブパートE | 適格施設免除の撤回 | FDAが適格施設に対する免除を取り消す可能性がある状況など |
| サブパートF | 作成・保管が必要な記録に適用される要件 | 本サブパートの要件が適用される記録、記録に適用される一般要件など |
| サブパートG | サプライチェーン・プログラム | 原材料仕入れ先の管理の構築、実行のための要件、受入施設の責任など |
これらサブパートの中で特に重要なのが、サブパートB・C・Gになります。
アメリカへ食品を輸出するのに認証規格はいらない
アメリカへ食品を輸出するには、FSSC22000やISO22000などの認証規格が必要だと思われがちです。
サプライヤーによっては求められることもあり、認証規格を取得しておいた方がスムーズにいくこともありますが、義務ではありません。
アメリカへ食品を輸出するには、米国食品強化法(FSMA)の基準に則った食品製造である必要があります。
輸出したい製品の品目や特性によって、該当する法令や関連規則が決まっているので、以下の資料から内容を確認しましょう。
米国食品安全強化法(FSMA)概要 | 食品安全強化法(FSMA)に関する情報FDAの査察は日本まで来る!
2011年のFSMAの制定以降により、FDAの外国施設への査察が強化されました。
日本のFDAの登録施設件数は、2020年3月時点で14,092件。アメリカ国外の登録施設数では最も多い登録者数です。
日本貿易振興機構(ジェトロ)のデータによると、2011年~2019年の間にFDAが日本でおこなった査察累計数は573件にもなります。
なおFDAの査察件数が最も多かったのが2012年で126件。直近のデータによると2019年のFDA査察件数は39件となっています。
FDAは海外の製造施設への抜き打ち検査を拡大(2025年5月発表)
FDAは食品や医薬品、医療機器などアメリカ国内向けに製造している海外の工場に対して、抜き打ち検査を拡大する方針を発表しました。
これまで、海外の製造施設に対してFDAは事前に査察の日程が通知されることが多く、アメリカ国内の企業に比べて甘い対応となっていたとのこと。
実際に、FDAの調査によると海外の企業へ事前に通知して査察をしても、深刻な違反がアメリカ国内の2倍以上の頻度で見つかっていることが判明しています。
今後は、全ての海外企業に対してもアメリカ国内企業と同等の厳しい監視を実施するとのことです。
その他、FDAの抜き打ち検査について、以下の内容が改善されます。
- FDA職員は、業者からの交通・宿泊などの提供を一切断れるようにルールを明確化(利害関係の排除)
- 検査は事前通知なしが基本。ごく一部の例外を除き、日程調整や立ち会い人の準備などを理由に、企業側が日時を交渉することはできません。
- 査察を拒否・妨害した企業には、規制上の処分が下される
これからはFDAが抜き打ちで査察に来訪するため、日本を含む海外企業は米国食品強化法(FSMA)の基準に則った食品製造を遵守しておく必要があります。
FDAの査察の流れ
FDAの査察は次の6ステップに分けられます。
ステップ1│査察の事前通知
今まで海外企業へのFDA査察は、査察日の約3ヵ月前に事前通知がありました。
しかし今後、FDAの査察は予告なしで突然始まります。いつFDAの査察が来ても対応できるよう準備しておきましょう。
ステップ2│オープニングミーティング
査察官が自己紹介を行い、査察の流れやスケジュールを説明します。
品質保証・法規制担当・製造管理者など、キーパーソンがすぐに参加できるよう体制を整えておきましょう。
チーム紹介やハザード分析などコミュニケーションが難しい部分については、英語版の資料を準備しておくと、査察がスムーズに進むのでおすすめです。
食品安全計画書以外でヒアリングを受ける内容としては、会社概要・グループ企業の有無・組織図・売上(総額だけでなく、国内・海外・対米の割合も)などの背景も聞かれます。
これらもしっかり準備しておきましょう。
ステップ3│施設内の巡回(Facility Tour)
製造現場や保管エリアなどを実際に巡回して、工程や衛生管理の実態を直接確認されます。
現場では、HACCPプラン通りに製造され、かつGHP(適正衛生規範)に沿って運用されていることが重要です。
ステップ4│文書確認(Document Review)
食品安全計画書とSSOPで決められた計画や手順を適切に実施した記録があり、さらにその検証が行われているかを確認されます。
例えば、次のような文書です。
FDAが確認する文書
- 教育訓練に対し教育を実施した記録
- 使用している薬剤の管理や濃度の検証
- 使用水の検査
- 予防管理
食品接触面の拭き取り検査、アレルゲンの検査、落下菌の検査、冷蔵庫の温度検査 - サプライチェーンプログラム
商流フロー、サプライヤーの監査、輸送管理、購買品の管理(SDSなど)
これらの文書を見てもわかるように、FDAの査察だからと言って特別なものを求められているわけではありません。
特に検証については、エビデンス・頻度を証明できる記録があるとよいでしょう。
ステップ5│従業員へのインタビュー
FDAの査察官は、現場の従業員にも声をかけて、手順の理解度や教育状況、実務との整合性をチェックします。
定期的な従業員教育を実施し、全ての従業員が自信をもって受け答えできる状態にしておきましょう。
ステップ6│クロージングミーティング(最終報告会)
査察の最後には、観察事項や懸念点の口頭報告があります。
内容を正確にメモし、わからない点は積極的に確認・質問しましょう。
ステップ7│ Form483の発行(該当時)
重大な違反があった場合、観察内容を記載した「Form 483」が交付されます。
是正措置(CAPA)を立て、迅速かつ具体的に対応書を提出することが求められます。
ステップ8│フォローアップと最終対応
査察終了後から数か月後に査察報告書が送付されます。査察内容がこと細かく記載されているので、製品の衛生管理の見直しに役立てましょう。
FDA Form 483を受け取った後の対応
FDA Form 483を受け取った場合、発行日から「15営業日以内」にFDAに対して、是正措置の計画や内容、対応予定日などを公式に報告するよう強く推奨されます。
これを怠ると、警告書(Warning Letter)や輸出入規制など厳しい処罰を受ける可能性があります。
まとめ
FDAの査察通知は突然届くため、査察までのスケジュールがタイトになる恐れがあります。
しかしその内容はよく読み解くと、特別なことを求めているわけではなく、本質的な内容が求められています。
また、普段からFSMAの規定に則った衛生管理をしていないと、いざ査察が来たときに従業員に大きな負担がかかる恐れがあります。
いつ査察の通知が来ても、余裕を持って対応できるよう普段からしっかりと準備しておきましょう。
まとめ
- アメリカに食品を輸出するにはFSMA則った手続きや対応をする
- アメリカに食品を輸出するのに認証規格は義務ではない
- アメリカに食品を輸出する前にFSMAの要求を理解し日頃の運用に盛り込んでおくのがベスト
そのためには、米国食品強化法 FSMAを理解し、遵守した食品製造をすることが大事です。
ジェトロのサイト内にあるFSMAの導入ガイドや食品安全計画作成ガイドを読み込み理解しておきましょう。
またFDAの査察では、エビデンスや頻度の証明を求められることが多いのでいつ査察が来ても問題ないよう、しっかりと準備しておきましょう。
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