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食品事業における消毒用アルコールの選び方とは?適切な使い方や保管方法についても解説

食品事業における消毒用アルコールの選び方とは?適切な使い方や保管方法についても解説

食中毒対策

衛生管理

製造機器や調理器具の除菌、手指の消毒など食品事業の食品衛生管理には、消毒用アルコールが欠かせません。

しかしながら、事業所の中には同じ製品のアルコール消毒液を、さまざまなところで使いまわしている事業所もあるのではないでしょうか。

消毒用アルコールは用途に応じて、種類や濃度を変える必要があります。

この記事では、食品事業における消毒用アルコールの選び方や適切な使用方法、保管方法にいたるまで分かりやすく解説します。

なぜ消毒用アルコールの選び方が重要なのか

食品事業において消毒用アルコールは、食中毒予防に欠かせませんが、選び方を間違えると衛生環境の悪化や食品を傷める恐れがあります。

一口に消毒用アルコールといっても、その種類はさまざまで使用用途や商品によって、アルコールの濃度や成分、添加物が異なるためです。

例えば、調理用器具の消毒には、高濃度のアルコール消毒液が適しています。

低濃度のアルコール消毒液で調理器具を消毒すると、食中毒菌が死滅せず残留してしまい、食中毒リスクが高まる可能性があるためです。

一方で、食品に直接かける場合は、食品添加物として認められたアルコール消毒液を適量で使用する必要があります。

ここで高濃度のアルコール消毒液を多量に食品に塗布してしまうと、変色したり風味が損なわれたりするためです。

また、手指の消毒用アルコールには、医薬品または指定医薬部外品の商品を使用しなければなりません。

手指は菌やウイルスが付着しやすい部位で、食品添加物アルコール消毒液では菌やウイルスが残留してしまう可能性があるためです。

食品事業で使用する消毒用アルコールの種類と特徴

食品事業で使用する消毒用アルコールは次の2つの種類があります。

種類 主な成分 特徴 用途
食品添加物アルコール消毒液 アミノ酸など添加物を配合 安全性が高く食品に直接使用可能 食品の保存性を高める、調理器具の消毒
指定医薬部外品アルコール消毒液 高濃度なエタノール 殺菌力が強く、広範囲な微生物の除菌に有効 手指消毒

それぞれ詳しく見ていきましょう。

食品添加物アルコール消毒液

食品添加物アルコール消毒液は、食品添加物として認可されたアルコールを主成分にし、食品に直接塗布しても安全に使用できるよう作られています。

食品添加物アルコール消毒液の用途は、食品に直接塗布するケースと食品製造機器や調理器具に塗布するケースの2種類です。

食品に直接塗布するケース

食品への使用は、食品の菌を抑え保存性を高める目的で使用します。

食品へ使用するときに、濃度が高すぎたり塗布する量が多すぎたりするとたんぱく質変性を起こし、食品が変色・変質する可能性があるので注意が必要です。

またアルコール臭が強くなり、食品の風味が損なわれてしまいます。

食品に直接塗布するときは、食品に対して1%~4%の範囲で食品添加物アルコール製剤の添加量を調整するのが一般的です。

食品製造機器や調理器具に塗布するケース

食品添加物アルコール消毒液は、食品と直接触れる食品製造機器や調理器具の消毒に使用されます。

調理器具や食品製造機器の全体に消毒液がいきわたるよう、スプレーやエアゾールを使い、直接噴霧するのがおすすめです。

作業台や調理台を消毒するときは、消毒液を布に染み込ませた不織布で拭くのも効果的です。

また、調理器具や食品製造機器に食品添加物アルコール消毒液を使用する場合、エタノールの濃度は60%~70%にしましょう。

エタノールの濃度が低すぎると、殺菌できない微生物が調理器具や製造機器に残留してしまい、食中毒リスクが高まるためです。

指定医薬部外品アルコール消毒液

厚生労働省は手指の消毒液として、指定医薬部外品アルコール消毒液を使用するよう求められています。

指定医薬部外品アルコール消毒液のエタノール配合量は70%~80%と高濃度で、手指に付着している食中毒菌やウイルスのほとんどを除菌できるためです。

エタノールの濃度が低すぎる消毒液や、食品添加物の消毒液を手指の消毒液として使用すると、手指に菌が残り食品を汚染してしまう可能性があります。

コロナ禍では、指定医薬部外品アルコール消毒液が欠品し、転売等されたことから、一時的に食品添加物アルコール消毒液を手指消毒液として使用するケースもありました。

しかしながら、今は指定医薬部外品アルコール消毒液も安定供給できているため、食品添加物アルコール消毒液を手指消毒液として使用するのは止めましょう。

また除菌力が高いからといって、エタノール濃度が高ければ高いほど効果があるというわけではありません。

濃度が高すぎると、手の常在菌も殺菌してしまうため、手が荒れやすくなります。

また、濃度が高すぎると消毒液の蓋を開けただけでアルコールが揮発してしまい、濃度が70%前後まで下がることが報告されています。

揮発が抑えられたとしても、使い続けると濃度が下がるため適正濃度であるエタノール濃度70%~80%のアルコール消毒液を使用しましょう。

食品事業者が消毒剤を選ぶ際のポイント

食品事業者がアルコール消毒液を選ぶときは、食品保存用・調理器具や製造機器用・手指消毒用とそれぞれ異なる種類の消毒液を選択するのがおすすめです。

まず食品添加物アルコール消毒液を手指消毒液として使用するのは食中毒のリスクが高まるので止めましょう。

手指はさまざまな菌やウイルスが付着していることが多く、食品添加物アルコールでは手指の菌やウイルスをすべて除菌できないためです。

手指のアルコール消毒液は、エタノール濃度が70%以上90%未満の指定医薬部外品または医薬品のアルコール消毒液を選ぶようにしましょう。

食品保存用・調理器具や製造機器用はともに食品添加物アルコール消毒液を使用します。

食品添加物アルコール消毒液は、食品に触れても安全な成分で作られているためです。

食品保存目的で使用する食品添加物アルコール消毒液と製造機器や調理器具の消毒目的で使用する食品添加物アルコール消毒液は同じものを使用しても問題ありません。

共通のものを使用する場合は、エタノール濃度が70%程度のものを選択しましょう。

食品添加物アルコール消毒液のエタノール濃度は45%~80%と幅広いですが、その中で食中毒菌やウイルスを除去するのに効果的な濃度が70%のためです。

調理器具や製造機器の消毒目的で使用するときは、高濃度のエタノールが配合されたアルコール消毒液でないと、菌が残留してしまい食品が汚染される可能性があります。

食品の防腐目的でアルコール消毒液を使用する場合、エタノール濃度に比例して、食品に塗布したときにアルコール臭が強くなるため注意しましょう。

食品にアルコール臭を残さないためには、適正量を守ったり塗布する方法を変えたりするのが有効です。

それでも、アルコール臭が食品に残ってしまう場合は、エタノール濃度が低い消毒液を選び使用しましょう。

ただし、食品に直接塗布する場合でもエタノール濃度が45%以上のものを選択します。

たとえば、エタノール濃度が20%のアルコール消毒液では、菌を抑制することができますが、菌を抑えるまでに時間がかかったり消毒液が消えると再び菌が発生したりと効果が弱くなります。

消毒用アルコールの使用方法と注意点

消毒用アルコールは用途によって使用方法が異なります。

ここでは、用途ごとの使用方法と注意点を解説します。

調理器具・製造機器の消毒

調理器具・食品製造機器を消毒するときは、まず調理器具・食品製造機器を洗浄し、乾燥させましょう。

調理器具や機器に汚れや濡れた部分があると、アルコール消毒液の濃度が低下し殺菌力が弱まる可能性があるためです。

使用時には汚れや水分を取り除いておきましょう。

食品の保存効果を高める

アルコール消毒液を食品の防腐目的で使用するには次の方法で使用します。

  • 食材への練りこみ
  • 食材への漬け込み
  • 食材への噴霧

食品添加物アルコールを使用するため、塗布しても安全に使用できます。

しかし、塗布する量が多すぎるとアルコール臭が強くなったり、食品が変色や変質してしまう恐れがあるため注意が必要です。

食品に対して1~4%の範囲で食品添加物アルコール消毒液の添加量を調整するとよいでしょう。

また、アルコールは水を含むと濃度が薄まり、効果が低減してしまう恐れがあります。

食品に使用するアルコール消毒液は、水分に強いものを選びましょう。

手指の消毒

手指の消毒としてアルコール消毒液を使用するときは、手をしっかり洗い水分をふき取ってから使用するようにしましょう。

手に汚れや水分が残っていると調理器具や機器と同じく、消毒液の濃度が低下し、殺菌力が弱くなるためです。

手指の場合、皮膚のしわに汚れや水分が残っていることが多いので手洗い時は注意しましょう。

食品事業で推奨されている手洗いの方法は以下の記事をご覧ください。

消毒液の保管方法や有効期限

アルコール消毒液のうち、エタノール濃度が60%以上のものは、危険物に該当します。

法律により、アルコール消毒液を常時80リットル以上400リットル未満保管する場合は少量危険物設置届け出が必要です。

少量危険物設置届け出の規定や手続き方法は各地方自治体で異なる可能性があるため、手続き方法は最寄りの消防署に尋ねましょう。

少量危険物設置届け出をしたからといって、アルコール消毒液を適当な場所に保管するようなことは止めましょう。

アルコール消毒液の保管場所や保管時の注意は次の通りです。

消毒液の保管方法や有効期限

  • 可燃性のため書き・直射日光・高温を避ける
  • 換気のよい場所に保管する
  • 落下の危険がない場所で保管ずる
  • 食材の近くに保管しない

アルコール消毒液に含まれるエタノールはリスクアセスメント対象物の1つです。

アルコール消毒液を扱うには、化学物質管理者の選任が必要なので覚えておきましょう。

またアルコール消毒液には有効期限があります。

指定医薬部外品のアルコール消毒液の有効期限は、法律で3年と定められています。

一方、食品添加物のアルコール消毒液は法律で定められておらず、商品ごとに有効期限が異なり約1~3年です。

この期限はあくまでも未開封の場合の有効期限です。

開封後は、エタノールが揮発して濃度が低下しやすいので早めに消費するようにしましょう。

ノロウイルス対策には次亜塩素酸ナトリウムが効果的

アルコール消毒液はあらゆる食中毒菌に有効ですが、ノロウイルスを消毒するにはいたりません。

ノロウイルス対策には、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が有効です。

高い殺菌力を持ち、消毒後も一定期間殺菌効果が持続するため、広範囲な消毒ができます。

ノロウイルスが蔓延する時季は、アルコール消毒液とともにノロウイルス対策用に事案塩素酸ナトリウム溶液で作った消毒液も常備し、予防に努めましょう。

一方で、次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用や腐食作用が強いため金属や床に塗布すると変色してしまう恐れがあります。

また酸性の洗剤と混ぜると有毒ガスを発生させてしまう恐れがあるため、注意が必要です。

まとめ

食品事業に欠かせないアルコール消毒液は、食品添加物アルコールと医療部外品アルコールの2つに大別されます。

食中毒菌を製造現場に持ち込まないよう、適材適所に合ったアルコール消毒液を選びましょう。

まとめ

  1. 食品添加物アルコールは安全性が高い
  2. 指定医薬部外品アルコールは手指の消毒液に使用
  3. エタノール濃度60%以上のアルコール消毒液は危険物の1つなので取扱に注意

アルコール消毒液は、使用目的に応じて、しっかり使い分けるか汎用できるものを選ぶようにしましょう。/p>

アルコール消毒液は、エタノール濃度が60%以上になると危険物に該当します。

事業所にいる化学物質管理者の指示のもと、取扱には十分注意しましょう。

また適切なアルコール消毒液を適材適所に配置しても、使い方を誤ると本来の性能を発揮できず、食中毒のリスクが高まる可能性があります。

消毒液の正しい使い方についても、事業所内で従業員教育をおこない、すべての従業員が正しく消毒液を扱えるよう指導していきましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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