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重要管理点(CCP)の設定方法とは?ポイントや注意点を解説【手順7原則2】

重要管理点(CCP)の設定方法とは?ポイントや注意点を解説【手順7原則2】

HACCP

HACCP導入手順7原則2

重要管理点(CCP)の決定


HACCP導入手順7原則2では、導入手順6で特定した重大な危害要因(ハザード)の管理手段のなかから、重要管理点(CCP)を決定する作業を行います。

しかし、手順6で特定された重大なハザードの管理手段を列挙してみると、全て重要管理点に見えてしまうこともあるでしょう。

重要管理点の判断に迷ったときは、その管理手段が重大な危害要因を管理するために十分な効果があるかを検討してみるのがおすすめです。

今回は重要管理点とはなにか設定のポイントや要件、決定するときのポイントを解説します。

重要管理点(CCP)とは

重要管理点(CCP)とは

CCPとは、Critical Control Pointの頭文字をとった言葉です。

食品から危害要因(ハザード)を取り除くまたは害のない範囲まで低減するために特に管理すべきポイント(工程)を指します。

食の安全を管理する際に最後の砦といわれるのがCCPです。

したがってHACCP導入手順6のハザード分析をした上で、手順7で慎重にCCPを決める必要があります。

ただし必要以上にCCPを設定すると現場の仕事が増え、本当に必要なCCPの管理ができなくなるおそれもあるため注意したいところです。

一般的にCCPは1~2箇所、多くても3箇所以内の設定が望ましいといえます。

現場によっては、ハザード分析をした結果、CCPの設定がないケースもあります。

とはいえ、CCPを見つけるにあたって不安に陥ってしまい、どの工程も重要度が高いように思えてくることもあるでしょう。

そんなときはコンサルタントなど第三者の目で確認してもらうと安心です。

また、そもそも基本的な衛生管理ができておらず、汚染や異物混入の危険性が高い工程がある場合は施設全体の衛生管理を見直す必要があります。

重要管理点(CCP)を決定するポイント

CCPを決めるポイントは、その工程でしかハザードを除去または許容できる範囲で低減することができないという点です。

HACCP衛生管理の手引書 付録Ⅰ食肉編|厚生労働省
引用:HACCP導入のための手引書 食肉製品編 付録Ⅰ|厚生労働省

例えば、上記のワークシートの鶏肉受入れ時点を見てみると、生産者の不適切な管理によってサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などの病原微生物が検出される恐れがあることを重要ハザードとしています。

サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などの病原微生物を減菌または滅菌するには、加熱処理が必要です。

この加熱処理は、重要ハザードの管理手段の1つになります。

チルドミートボールのその後の工程を確認してみると、No.35の工程で加熱による殺菌処理が行われるため、ハザードとなるサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌は製造工程内で減菌または滅菌することができそうです。

HACCP衛生管理の手引書 付録Ⅰ食肉編|厚生労働省
引用:HACCP導入のための手引書 食肉製品編 付録Ⅰ|厚生労働省

このように重要ハザードの管理手段として特定したものの、その後の工程でコントロールできるものは重要管理点(CCP)から外されます。

CCPの決め方に迷ったら、ccp決定樹を参考にする方法もあります。

CCP決定樹
引用:JFS-E-B 規格 製造ガイドライン|一般財団法人食品安全マネジメント協会

CCPの要件

重要管理点(CCP)には次のような要件があります。

重要管理点(CCP)の要件

  • あらかじめ設定したモニタリング方法で監視できる
  • 科学的根拠に基づいた基準(管理基準)がある
  • 管理基準から逸脱した場合に何らかの対応や処理が必要である
  • 設定された管理手段(例:加熱殺菌の殺菌温度、時間の管理)は重大な危害要因を管理するために十分な効果がある

これらの要件をすべて満たすものは重要管理点と決定されます。

CCPを決めるときの注意点

重要管理点(CCP)とは

CCPに設定されることが多いのは食中毒菌の滅菌工程(加熱)と異物混入検査の工程(金属探知機による検査)などです。

だからといって、安易にすべてをCCPに設定すればよいというわけではありません。

加熱する工程には滅菌を目的としている場合だけでなく、「粉の原材料を溶かしてゼラチン状にする」、「砂糖を溶かしてコーティングする」などさまざまな目的があるためです。

また、滅菌を目的として加熱している工程の場合でも、たとえばサルモネラ菌とセレウス菌では危害要因を除去できる手段が異なります。

サルモネラ菌は75℃の1分間の加熱で死滅する一方で、セレウス菌は100℃で30分間加熱しても毒素が消えません。

したがってセレウス菌が付着する可能性が高い場合、サルモネラ菌を滅菌する目的の加熱では効果がなく、危害要因は除去できないということです。

このように誤った工程をCCPにしないためには、HACCP導入手順6の危害要因分析をしっかり行う必要があります。

また特定された重要な危害要因に対する管理手段がどの段階にも存在しない場合、製品または製造工程を修正しなければならないことも合わせて覚えておきましょう。

まとめ

まとめ

重要管理点とは、食品の危害要因を除去または低減するために特に管理する必要がある工程のことです。

安全な商品をお客様に提供するための最後の砦となるチェックポイントなので慎重に決める必要があります。

まとめ

  1. 重要管理点とは危害要因(ハザード)を除去または害のない範囲まで低減するために特に管理すべきポイントを指す
  2. 重要管理点は一般的に3つ以内が望ましい
  3. 誤った工程をCCPにしてしまうと最後の砦が崩れてしまい安全な商品を提供できなくなる

重要管理点を必要以上に設定してしまうと、現場の仕事が増え、本当に必要なCCPを監視できなくなる恐れがあるので注意が必要です。

CCPの設定が自社でうまくいかない場合は、コンサルタントなど第三者の目で確認してもらうと解決の糸口が見えるかもしれません。

この記事は、【Codex 食品衛生の一般原則2020-対訳と解説】を元に作成しております。

食品安全マネジメントシステムの基準となる食品衛生の一般原理とHACCPの基本原理をわかりやすく解説した書籍です。ぜひご覧ください。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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