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HACCPの危害要因分析とは?3ステップでリスト作成し事故の危険を回避しよう【HACCP導入手順6原則1】

HACCPの危害要因分析とは?3ステップでリスト作成し事故の危険を回避しよう【HACCP導入手順6原則1】

HACCP

HACCP導入手順6原則1

各工程に関連して発生する可能性のあるすべての潜在的ハザードをリスト化し、重要なハザードを特定するためハザード分析を行い、特定されたハザードを管理する手段を検討する


HACCP導入手順6の危害要因(ハザード)分析では、自社の製造工程内で起こりうるハザードを全て挙げてリスト化し、その中から重要なハザードを特定する作業を行います。

しかし、実際に自社の製造工程内のハザードをリスト化してみると、全てが重要なハザードに見えてしまうという方も少なくありません。

逆に、どのハザードも重要だと判断できないという方もいるでしょう。

重要ハザードの判断に迷ったときは、発生時の被害の大きさと発生時の発生の頻度を数値化してみるのがおすすめです。

数値化することで、誰でも同じ視点でハザードを評価できます。

今回は、HACCPの危害要因分析をわかりやすく3つのステップ毎に紹介します。

ハザード分析に手こずってしまった方やこれからハザード分析を見直しを予定している方はぜひご覧ください。

HACCP導入手順6原則1の概要

HACCP導入手順6原則1の概要

HACCP導入手順6では、まず原材料や製造工程内で起こりうる全てのハザード(危害要因)をリスト化し、その中から重要なハザードを見つけ出す作業を行います。

そこから、最終製品の安全性を確保するには重要なハザードをどのようにコントロールすればよいのかまで考えるのがHACCP導入手順6原則1の作業です。

HACCP導入手順6原則1は次の3ステップで進めていきましょう。

  1. 原材料及び製造工程で発生する可能性のある全てのハザード(危害要因)をHACCPチーム全員で出し合い、リスト化
  2. リスト化したハザードを評価し重要なハザードかどうかを判断する
  3. 重要なハザードと特定された工程(原材料)の管理手段を検討

ここからは、厚生労働省が公開しているHACCP導入のための手引き書の付録「危害要因分析表」を見ながらHACCP導入手順6原則1を解説していきます。

ステップ1:危害要因(ハザード)をリスト化

ゆでめんの危害要因リスト

引用:HACCP導入のための手引き書 麺類 付録Ⅰ|厚生労働省

全ての原材料と製造工程を危害要因表に書き込んだら、HACCPチーム全員で起こりうるハザード(危害要因)を全て挙げていきます。

ハザードはできるだけ具体的に挙げていきましょう。

例えば、そば粉の受け入れ時に発生しうるハザードは「食中毒菌」ではなく、サルモネラ菌やボツリヌス菌など具体的な菌名を出すようにします。

ゆでめんの危害要因リスト2

引用:HACCP導入のための手引き書 麺類 付録Ⅰ|厚生労働省

そのほかにも、金属探知機での最終検品で発生しうるハザードでは、ただ「金属片」と記載するのではなく「包丁の破片」「粉砕の工程で壊れた刃による金属異物」など汚染源や存在する理由も書き出します。

食品安全における3つの危害要因

食品安全における危害要因とは、最終的にできあがった食品に残ってしまうと健康に悪影響を及ぼすおそれがあるものです。

危害要因は以下のように3つに分類できます。それぞれチェックしておきましょう。

お客様に聞き取る内容

  • 生物的危害要因
    「生物的危害要因」とは食中毒菌や寄生虫、カビなどの微生物に起因するものです。サルモネラ菌や腸炎ビブリオ、ノロウイルスなどのほかに、魚介類に潜むアニサキスなども生物的危害要因に含まれます。
  • 化学的危害要因
    「化学的危害要因」とは殺虫剤や洗剤などの化学薬品の混入、残留農薬などおもに化学物質に起因するものです。最近ではアレルゲンも化学的危害要因に含まれることが一般的となりました。場合によっては、被害の規模が非常に大きくなる可能性があるため、注意する必要があります。
  • 物理的危害要因
    「物理的危害要因」とは金属片やガラス片、プラスチックなど口の中を切ったり、歯が欠けたりといった健康被害を引き起す硬質異物によるものを取り挙げます。健康被害のないビニール片やクレームの多い毛髪は健康被害がなく、一般衛生で解決すべき課題でありここでは取り扱いません。

ここまで紹介した3つのハザードは、原料や備品・環境、製造工程が由来で発生することがあります。

ハザードをリスト化する場合は、何が由来で発生するのかイメージするとよいでしょう。

ハザードの由来については、厚生労働省が公開している「食品等事業者団体による衛生管理計画手引書策定のためのガイダンス(第4版)」内の別紙1が参考になります。

ただし、ハザードは製品の性質や対象になる消費者によって変わるので、ハザード分析の際には、手順2の製品説明書の情報が重要になってきます。

ステップ2:リスト化したハザードを評価する

リスト化したハザードは、次の2つの基準で重要なハザードかそうでないかを判断します。

  • 発生したときの被害の大きさ
  • 発生の頻度(自社のみでなく他社も含める)

リスト化したハザードの中には、誰が見ても重要ハザードだと判断できるものばかり並んでいるとは限りません。

中には、重要か重要でないか迷ってしまうようなハザードもあります。

このようなハザードの評価を担当者の感覚やさじ加減で決めてしまうと、挙げたリストがすべて重要なハザードとして該当してしまったり、逆に重要なハザードにすべきものを見逃してしまったりする恐れがあります。

ハザード評価で迷ったときは、発生したときの被害の大きさと発生の頻度をマトリクスにした表を活用し、ハザードを数値化させて評価することもできます。

致死性あり 重症・後遺症あり リコール クレーム なし
頻発する 22 24 22 19 15
時々発生 23 21 18 14 10
他社で発生 20 17 13 9 6
他社でもイレギュラー 16 12 8 5 3
考えられない 11 7 4 2 2
数値 判断
25~20 重要なハザードの可能性が高い。HACCP手順7原則2の重要管理点になる可能性もある。
19~12 重要はハザードではないが、一般衛生管理の徹底が必要。
11以下 現状の管理手段で管理できている
参照:一般財団法人 食品安全マネジメント協会(JFSM)|企画・文書

例えば冷凍のサバの切り身を製造するときのハザードとして受入れ時にヒスタミンが産生されている可能性があるとリストに入れたとします。

冷凍サバの切り身

引用:HACCP導入のための手引き書 水産加工品編 付録Ⅰ|厚生労働省

ヒスタミン食中毒は症状は軽症ですが、1件あたりの患者数が多くひとたび発生すると大規模食中毒になる可能性があるので注意が必要です。

また過去の食中毒事例を見ると、冷凍食品が原因のヒスタミン食中毒が頻回に発生しています。

これらの事実を数値化すると、発生頻度は「しばしば発生する」、発生したときの被害の大きさは「リコール」に値するでしょう。

マトリクス表より数値は「22」になるので、サバの受入れ時のヒスタミン産生は、重要なハザードの1つとしてピックアップできます。

またCodex GPFH2020では、リスト化されたハザードが重要かどうかを判断するときには、以下の条件も検討するよう注意喚起しています。

  1. 原材料および工程を含む製造加工する食品の種類に関連する危害要因(例えば、フードチェーンにおける危害要因の調査またはサンプリングおよび検査、回収、科学的文献情報または疫学的データから)
  2. GMP(PRP) を考慮に入れて追加のコントロールがない状態での、危害要因の発生の起こりやすさ
  3. コントロールがない状態で、食品中の危害要因による健康への悪影響の発生頻度と重篤性
  4. 特定された、食品中の危害要因の許容レベル(例えば、規則、意図する使用法および科学的情報に基づく)
  5. 食品を製造している施設および機械器具の性質
  6. 病原体の生残または増殖
  7. 食品中での毒素(例、カビ毒)、化学物質(例、農薬、動物用医薬品、アレルゲン)または物理的危害要因(例、ガラス、金属)の生成または持続性
  8. 意図した用途および/または消費者による製品の誤った取扱いにより食品が安全ではなくなる可能性
  9. 上記につながる条件

数値化で重要なハザードとならなくても、上記の条件に当てはまる場合は、重要なハザードとして記録しておきましょう。

重要なハザードでないと判断されたハザードはどうする?

ハザード評価によって、重要なハザードでないと判断されたハザードは、危害要因表の項目【食品から減少・排除が必要で重要なハザードか?】に×またはNoと記録します。

ただ記録をつけるだけでなく、重要なハザードではないと判断した理由も記載しましょう。

冷凍サバの切り身

引用:HACCP導入のための手引き書 水産加工品編 付録Ⅰ|厚生労働省

例えば、上記の表では、冷凍サバの切り身の保管で「病原微生物の汚染」は重要なハザードではないと判断した理由に、「冷凍サバを保管する設備(冷凍庫)の衛生管理や従業員の衛生管理の徹底で管理できる」からと記載されています。

しかし、ただ記録するだけでは、安全なサバの切り身を消費者に届けられません。

HACCPで挙げられたハザードを社員に共有し、冷凍サバの切り身をヒスタミンの産生や食中毒菌の増殖から防ぐため、常温に放置せず冷凍庫にすぐに入れるよう指導する必要があります。

また、新しい職員が来たときも情報を共有できるよう、マニュアルの追記も必要になるでしょう。

ハザード分析によって、自社の工程内の衛生管理を改めて確認することができ、より安全・安心な商品を消費者へ届けられるようになります。

ステップ3:重要なハザードの管理手段を特定する

重要なハザードの管理手段を特定する

ステップ3では、ステップ2で挙げた重要なハザードに対して、どのような管理手段が適用できるかを考えていきます。

管理手段とは危害要因を予防もしくは除去、または許容できるレベルまで低減するために使用する処理または作業のことです。

例えば、重要なハザードの管理手段として適切な温度や時間で加熱するという方法があります。

ただし、管理手段の中にはその工程で管理するケースと後からの工程で管理するケースがあります。

また1つの重要なハザードに対し1つの管理手段が適用されるとは限りません。

重要なハザード1つをコントロールするために、複数の管理手段が必要なこともあります。

例えば、サルモネラ菌をコントロールするには、殺菌するための加熱処理が必要です。さらに食品間の汚染を防ぐため、調理器具の洗浄・消毒も必要になるでしょう。

また1つの管理手段で複数の重大なハザードをコントロールできることもあります。

例えば、食品中にサルモネラ菌と大腸菌O-157が存在する可能性がある場合、加熱処理により2つの重大なハザードをコントロールできます。

まとめ

まとめ

HACCP手順6では、製造工程内の重要はハザードを探し出し、管理方法を考えるまでを行います。

HACCP導入手順の中でも重要な作業であるとともに、製造時の衛生管理を見直す良い機会にもなるでしょう。

まとめ

  • 重要なハザードを特定するにはまずHACCPチーム全員でハザードを出し合う
  • 重要なハザードか評価に迷ったときは発生頻度と被害の大きさを数値で出してみる
  • 重要なハザードは製造工程内でコントロールできるか否か確認する

重要でないと評価されたハザードは、そのままにせず従業員に共有し、ハザードの発生を防ぐ方法を全員で確認しましょう。

この記事は、【Codex 食品衛生の一般原則2020-対訳と解説】を元に作成しております。

食品安全マネジメントシステムの基準となる食品衛生の一般原理とHACCPの基本原理をわかりやすく解説した書籍です。ぜひご覧ください。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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