HACCP導入手順11~12
- HACCPプランの妥当性確認と検証
- 文書化及び記録方法の設定
HACCPの導入手順11と12では製造工程がHACCPプランに従って実施され、正しく機能しているか検証し、さらに適切に記録・管理の方法を確立させる作業をおこないます。
HACCPプランの安全性をさらに高めるためには、検証や記録は欠かせません。
今回は導入手順の11・と12について検証のポイントや記録の方法などを詳しくまとめました。
HACCPプランをしっかり機能させるためにも、検証と記録について正しく知っておきましょう。
HACCPの検証は前後のチェックが重要!検証の3つのポイント(手順11)
HACCP導入手順11原則6ではここまで作成したプランの妥当性を確認します。
妥当性のない不適切なHACCPプランを実施してしまうと、食中毒や異物混入などのリスクが高まり、安全が保証された商品を消費者に届けられないからです。
HACCPプランの妥当性確認では、作成したプランが適切な重要ハザードを特定し、コントロールすることができるかを1つ1つ検証していきます。
例えば、ハザードの管理手段およびCLの妥当性は、HACCPプランの作成中に行うことが一般的です。
妥当性の確認の方法
- 科学的文献の見直し
- 数学的モデルの使用
- 妥当性を確認するための社内研究
- 権威ある情報源が作成した指針を確認
妥当性が確認でき適切なHACCPプランができたら、製造条件下で一貫性を持ってコントロールできるか検証していきます。
検証には、記録・現場の2つの確認が必要です。
多くの事業者において記録の検証はできている一方、現場での検証がおろそかになっているケースがよくみられます。
現場スタッフへ「エラーが起こった場合はどう対応する?」などの質問を定期的に行い、社内ルールが徹底しているか確認しましょう。
もし答えられない場合、原因はスタッフではなくシステムにあり、教育が行き届いていないという証拠。仕組みを見直す必要があります。
検証を行う際のポイントは次の3つです。
!検証の3つのポイント
- CL(管理基準)に科学的根拠と妥当性はあるのか
- HACCPプランでやると決めたことをやっているのか
- 使用している機器は正しく作動しているのか
検証の結果、もし不具合が見つかればプランを修正し、改善しましょう。
ポイント1:CLの基準に科学的根拠と妥当性はあるのか
手順8で設定したCL(管理基準)などの決めたことに科学的な根拠があるか、プランそのものに妥当性があるか確認します。
科学的な根拠があるかどうかについて、当事者以外のチェックによって検証を行います。
たとえばサンプルを取り出して細菌検査に出したり、社外の専門家にチェックを受けたりすることで確認しましょう。
HACCPプランそのものに妥当性があるかどうかも定期的に検証する必要があります。
最低でも年に1回以上は確認し、
- 原材料
- 製造工程
- 想定する消費者
などに変更が合った場合、さらに製品の安全性にまつわる新たな情報が加わった際などに再度検証を行いましょう。
ポイント2:HACCPプランでやると決めたことをやっているのか
HACCPプランに従って管理が行われているかどうかを確認します。
たとえばモニタリングの記録を手順通りに行っているか、記入漏れはないかなど。
さらに基準から外れていないか、外れた場合には改善の対応をとっているかなど細かく検証する必要があります。
ポイント3:使用している機器は正しく作動しているのか
CCPや食品安全に関わる計測機器の精度が狂っていた場合、適切な測定ができないためせっかく計測していても、食品安全の担保ができなくなります。
たとえば、金属探知機・X線・温度計・糖度計・秤など現場によって対象となる機器は異なります。
毎日や毎月などの頻度や、どのような方法で行うかについて決めておきましょう。
検査機器にはそれぞれに精度確認の方法があり、もし分からない場合はメーカーに問い合わせます。
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HACCPの作りっぱなしはNG!検証で問題が出たら改善
HACCPプランは、【一度作ってしまえば終わり】ではありません。
実施と検証、さらには改善を繰り返すことで、HACCPプランはアップデートされ、さらに安全性の高い管理体制を築くことができます。
そのためにも現場での確認・検証は欠かせません。
たとえばHACCPプランで非現実的な管理基準が設定され、現場スタッフの負担となっていることなどは、記録の検証だけではみえてこないものです。
記録の検証と現場での検証、いずれも並行して取り組む必要があります。
HACCPにおける記録の必要性(手順12)
HACCP導入の手順12では記録の仕方や管理、保管の方法を定めています。
まずHACCPプランは流れをすべて文書にし、記録して保管する必要があります。
保管する文書は次の通りです。
HACCPプランで作成・保管すべき文書
- HACCPチームメンバー表と役割分担
- 管理基準の決定および基準設定を科学的に支援する情報
- 決定したCCP一覧
- 管理手段の妥当性を確認した文書
- HACCPプランの改定の記録
また、HACCPプランを実施したことを証明するため、製造時には以下の記録を取り文書とともに保管しておきます。
HACCPプランの実施記録
- 原材料の受け入れの記録
- 冷蔵庫や冷凍庫の温度の記録
- 製造日報
軽視されがちな記録ですが、HACCPにおいて非常に重要な文書です。
なぜなら記録することで、製造工程がプランに沿って正しく実施されたという証明となるからです。
もし製品に問題が起こった際にも記録をたどることで、衛生管理の状況を調べることが可能となり、スピーディーな原因究明の助けとなります。
また記録が残ることで、口頭だけは誤って伝わったり忘れたりというリスクを減らすことにもつながります。
ここからは、HACCPプランを実施するときの記録の仕方について、ルールや保存期間について詳しくみていきましょう。
HACCPの記録のルール
記録は適当に残せばよいわけではありません。
HACCPプランを実施した証拠となり、万が一の際の解決の助けとするためにも、信頼性のある記録を残す必要があります。
そこで、以下のようなルールに従って、適切な記録を付けましょう。
HACCPの記録ルール1:現場でその場で書く
後回しにせず、記憶を頼りに書くことがないようにしましょう。その場ですぐ書くことが重要です。記録用紙は多少汚れてもかまいません。
HACCPの記録ルール2:書きやすい記録表を作る
記録を忘れたり後回しにしたりしないよう、書きやすい記録表を作りましょう。現場で使いやすいように体裁を整えることが重要です。定期的に見直し、より使いやすく書きやすい記録表を作ることをおすすめします。
HACCPの記録ルール3:ボールペンを使い、間違ったら二重線を引いて書き直す
記録の際には消えないボールペンを使い、間違った値などを記入した場合には二重線を引き、書き直すようにしましょう。消えるボールペンや消しゴム、修正テープなどを使用すると記録の改ざんが疑われ、信憑性を失ってしまいます。さらに書き直した本人の名前を書いておくようにしましょう。
HACCPの記録ルール4:確認した日付と時間も記入する
できる限り詳細に記録するために、確認した日付と時間も記入しましょう。また、空欄のまま残すこともできるだけ避けるようにします。
HACCPの記録の保存期間
残した記録は一定期間、保管しておきましょう。記録はつけるだけでなく、定期的に見直すことも必要なためです。
記録の種類により、以下のように保管期間は異なります。
記録の種類 | 記録の保管期間の目安 |
---|---|
製造に関する記録 | 賞味期限×1.5倍 |
衛生管理に関する記録 | 半年~1年間 |
クレーム対応や従業員教育の記録 | 2~5年 |
製造に関する記録は、製品の賞味期限×1.5倍の期間保管します。たとえば賞味期限が1年であれば、製品にまつわる記録は1年半保管しましょう。
衛生管理に関する記録は、個人衛生のチェック表や掃除の記録など衛生管理にまつわる記録は半年~1年間保管しましょう。
クレーム対応や従業員教育の記録は、3~5年間保管しましょう。
記録はそれぞれに責任者と保管場所も決めておき、しっかりした管理体制の中で保管しましょう。
まとめ:HACCPの検証と記録は製造現場で実施しよう
手順11はHACCPプランが有効であるかどうかを確認する検証方法を設定する工程、手順12は実施した作業の記録を残し、適切に保管する方法を決める工程です。
より実効性のあるHACCPプランにするためにも机上だけでなく、現場での確認も忘れないようにしましょう。
まとめ
- HACCPプラン作成後も検証、改善を繰り返し、常にアップデートする
- 記録はHACCPプランに従って製造をおこなった証拠であるため正しく残し、保管する必要がある
HACCPプラン導入の手順は12で終わりですが、これ以降も常に振り返り、検証を繰り返していく必要があります。
食品安全体制をより強固なものにするためにも検証と記録の工程をおろそかにしないようにしましょう。
コメント
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Reply #1 on : 金 6月 07, 2024, 21:11:03 あやこ