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食品添加物とは?事故を防ぐための対策も紹介

食品添加物とは?事故を防ぐための対策も紹介

食品の製造には多くの食品添加物が活用されています。

安全性を担保する基準はあるものの、食品添加物の中には有害な化学物質もあるため、使用量や用途を誤ると人体に悪影響を及ぼす食品事故につながる恐れがあります。

この記事では、食品添加物の基礎知識から事故を防ぐために事業者ができる対策までまとめました。

食品添加物を適切に使用し、安全が保証された食品を消費者に届けましょう。

食品添加物とは?

食品添加物とは?

食品衛生法第4条では、食品添加物を以下のように定義しています。

添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。
食品衛生法第4条 | e-Gov法令検索

保存料や着色料、甘味料などが食品添加物にあたります。

食品添加物と聞くと、「身体に悪い」というマイナスイメージを持たれることが多いですが、食品添加物がないと今の食生活は成り立たなくなるでしょう。

たとえば食品添加物の1つである保存料がないと食中毒リスクが高まるため加工食品は流通されなくなる恐れがあります。

また食品添加物を含む調味料がないと料理の味付けのバリエーションが少なくなったり、調理に手間がかかったりするため食の楽しみが失われる恐れがあります。

食品添加物の分類

食品添加物は大きく4つの分類に分けられます。

分類 内容 品目数※
指定添加物 内閣府食品安全委員会が行う食品健康影響評価を踏まえ、有効性や安全性などの基準をクリアし、厚生労働大臣が指定した添加物 474
既存添加物 天然の原料から作られ長年使用されてきた天然添加物。厚生労働大臣の指定なしで使用・販売が認められている 357
天然香料 動植物から得られ食品の着香の目的で使用される添加物。 621
一般添加物 一般に食品であるものが添加物として使用されるもの。 214
※2023年4月時点での集計数

添加物の品目数は、常に見直されているため増減します。

使用が認められている添加物であっても国内外の安全評価技術の向上により安全性に疑問を生じたものは、再び食品健康影響評価を行い、問題があると認識されると削除されるからです。

また食生活や食品加工技術の向上により有用性や必要性がなくなった添加物も同じように削除されます。

一方で新たに食品添加物として使用するには、原料や製造方法に関わらず安全性と有効性の基準をクリアし、厚生労働大臣により食品添加物として指定してもらわなければなりません。

食品添加物の役割

食品添加物の役割

食品添加物は国で安全性と有効性が認められたもののみ使用を許可されています。

多くの人は食品添加物の安全性に目を向け、露骨に避けようとしがちです。

たとえば、ハムやソーセージの発色剤として使用される亜硝酸塩(あしょうさんえん)は発がん性物質だと多くの人から嫌悪されています。

「見た目の良さを重視して、健康を損なう添加物を入れるなんて許せない!」と亜硝酸塩のないハムやソーセージを探そうとする方もいるかもしれません。

しかし、亜硝酸塩には発色剤の効果だけでなく、殺菌剤の効果もあるのを忘れてはいけません。

亜硝酸塩は自然界の猛毒ともよばれるボツリヌス菌をほぼ100%抑えられます。

ボツリヌス菌に怯えることがなく、ハムやソーセージを食べられるようになったのは、まさに亜硝酸塩の効能のおかげなのです。

このように食品添加物は食品の外観や風味をよくするだけでなく、食の安全を保証してくれる役割も担っています。

なおハムやソーセージなどの加工品をどれくらい食べれば、がんのリスクが高まるかについて、まだわかっていません。

ここからは、食品添加物の役割をみていきましょう。

食品の製造や加工に使用

食品添加物は食品の製造や加工にも使用されます。

たとえば、豆腐の製造に必要な「にがり」成分の1つである塩化マグネシウムは、豆腐を固めるのに欠かせません。

みかん缶詰を製造するときの皮剥きの工程では、希塩酸溶液と希水酸化ナトリウムの溶液を使い処理します。

人体に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質がみかんの缶詰に残らないのか、気になる方もいるでしょう。

でもご安心ください、その後の製造工程(水洗いなど)で最終製品に残存しないよう製造されるため、人体への影響はありません。

食品の風味や外観をよくする

食品の風味や外観をよくするためにも食品添加物が使用されます。

たとえばハムやソーセージの風味を改善するためには発色剤として亜硝酸ナトリウムが、キャンディーやチョコレートに艶を出すためには光沢剤として、ミツロウなどの食品添加物が用いられます。

食品の保存性を高める

加工食品の保存性を高めたり、食中毒のリスクを減らしたりするのにも食品添加物が用いられます。

たとえば保存料は、pHを調整して微生物の発育・増殖を阻止し食中毒予防や保存性の向上に役立ちます。

それにより加工食品の保管期間が長くなったり、常温で保管できるようになったりすることから食品ロスを減らす効果も期待できます。

食品の栄養成分を強化する

食品添加物の中には、原材料の一部として栄養成分を強化するものもあります。

2020年に行われた厚生労働省による「国民健康・栄養調査」では、どの年代も以下の栄養素が基準値を満たしていませんでした。

基準値を満たさない栄養素

  • 炭水化物
  • 食物繊維
  • ビタミン群
  • カリウム
  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 亜鉛

加工食品の中には、不足しがちな栄養価を補充したり、加工中に消失してしまった栄養価を補充したりするために食品添加物を入れることがあります。

食品添加物の使用基準・成分規格

食品添加物の使用基準・成分規格

食品添加物は国から認められている添加物しか使用できないだけでなく、使用基準(使用制限ルール)や成分規格も法律で定められています。

たとえば、シリコーン樹脂は加工工程中で発生する泡を消すためだけに使用するよう定められています。

使用量も食品1kgに対し0.050g以下とごくわずか。使用量をオーバーしてしまうと、シリコーン樹脂が食品に残存してしまう恐れがあるからです。

シリコーン樹脂は、大量に摂取しない限り無害ですが、生体分解しないため摂取してしまうと、体内に蓄積される恐れがあります。

このように安心・安全な食品を提供するため、厳しい基準が設けられています。

食品添加物の違反事例

食品添加物の違反事例

食品添加物の違反事例の内容はさまざまですが、その中でも近年、増加傾向にあるのが輸入食品による食品添加物の違反事例です。

海外で使用が認められている添加物でも日本での使用が認められていないこともあるため、輸入食品を扱う業者は輸入食品に使用不可の添加物が含まれていないか確認しておきましょう。

逆に日本で使用が認められている添加物が海外では使用禁止扱いになっていることもあります。

日本から海外へ食品を輸出する際には、製品に含まれる添加物に問題がないか輸出国の法律を確認しておきましょう。

その他、輸入食品以外にも食品に使用している添加物の表示欠落や使用基準・成分規格違反などの事故が発生しています。

なお食品添加物による違反を指摘されると製品リコールをしなければならないので覚えておきましょう。

ここからは、食品添加物の違反を防ぐポイントをご紹介します。

使用原材料としての食品添加物の確認

食品表示ラベルには、製品に含まれている食品添加物をすべて記載する必要があります。

「自社製造の製品に含まれている食品添加物だから、食品表示ラベルの記載ミスなんてあるわけない」と思っている事業者もいるでしょう。

しかし実際は、加工食品に含まれる食品添加物の一部が商品表示ラベルに記載されていないと保健所から指摘され、リコール対象となった商品が毎日のように報告されています。

食品表示ラベルの記載漏れを防ぐには、社内でラベル原稿のダブルチェックを行うのはもちろんのこと、自社で作成した製品説明書や原材料の仕様書や規格書を見直し、含まれている食品添加物を確認しましょう。

なお、以下の食品添加物は食品表示ラベルへの転記を省略できます。

食品表示ラベルへの転記を省略できる食品添加物

  • 加工助剤
  • キャリーオーバー
  • 栄養強化のための食品添加物

上記3つに該当しない食品添加物は、使用原材料としての食品添加物に当たるため、食品表示ラベルにすべて記載する必要があります。

加工助剤の使用基準の確認

加工助剤とは、以下の条件のいずれかに該当する食品添加物のことを言います。

加工助剤の条件

  • 最終的に食品として包装する前に食品から除去されるもの。
  • 食品中に通常存在する成分に変えられ、かつ、その成分の量が食品中に通常存在する量を有意に増加させないもの。
  • 最終食品中に、ごくわずかなレベルでしか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの。

加工助剤は最終製品に残存することがないため、業務の効率化のため使用量を増やしたり、コスト削減のために成分規格の基準をクリアしていないものを使用したりしても、問題ないと思われるかもしれません。

しかし、これらの行為は重大な事故のリスクが高まるため大変危険です。

また最終製品に食品添加物が残らないから、多少の不正が外部に漏れることはないと考えるのは大きな間違い。

多くの場合、保健所の抜き打ち検査により違反を指摘され、製品のリコールを命じられます。

添加物の保管が適切か確認

食品添加物の中には、使用基準を守らないと人体に悪影響を及ぼす化学物質もあるので注意が必要です。

人体に悪影響を及ぼす恐れのある食品添加物と原材料を同じ場所に保管してしまうと、製造時に原材料と誤って食品添加物を入れてしまう恐れがあります。

このようなミスがないよう、食品添加物は適切な場所に保管するよう徹底しましょう。

また、食品添加物の多くは使用制限があり、1回の製造で使用する量が微量であることもめずらしくありません。

そのため、気づかないうちに賞味期限が過ぎていたということも有り得ます。

食品添加物を使用する前には、期限も確認するよう忘れないようにしましょう。

まとめ

まとめ

食品添加物の中には人体に悪影響を及ぼす化学物質もあるため、多くの人はマイナスイメージを持っているかもしれません。

しかし食品添加物がなくなると食品の殺菌・防腐ができなくなります。

その結果、常に食中毒リスクにさらされたり、長期保存ができなくなったりするので食品ロスの問題が深刻化する恐れがあります。

まとめ

  1. 食品添加物は国で認められているもののみ使用可能
  2. 日本で使用可能な食品添加物は常に見直され増減している
  3. 食品添加物の使用時には食品衛生法で定められた使用基準・成分規格を遵守する

食品添加物の不適切な使用は、保健所の抜き打ち検査により指摘されリコールが命じられます。

安全が保証された加工食品を消費者に届けるためにも、食品衛生法に沿って食品添加物を適切に使用しましょう。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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