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食品表示の役割とは?自主回収にならないための対策を解説

食品表示の役割とは?自主回収にならないための対策を解説

食品にまつわる法律

2021年6月より厚生労働省のWebサイトで食品の自主回収報告制度が開始されました。

全国各地から届出された食品の自主回収(リコール)情報がデータベースに登録され、公開されています。

食品の自主回収(リコール)情報には、自主回収に至った理由も登録されているのですが、その中でも多く見られた理由が「食品表示の誤り」です。

なぜ食品表示の誤りによる自主回収事案が多いのでしょうか。

この記事では、食品表示の役割から食品表示ラベルを作成・貼付するときに起こりやすいミス、その対策を解説します。

新しく加工食品を製造・販売しようとしている事業者や新製品を開発した事業者はぜひ参考にしてください。

食品表示の役割

食品表示の役割

食品表示は、食品事業者と消費者のコミュニケーションの手段の1つです。

商品の特徴はもちろんのこと、商品に含まれているアレルゲン物質や賞味期限・消費期限など、食品を安全に食するための重要な情報も掲載されているので、正しい情報を消費者に伝える必要があります。

そのため食品表示に誤りがあると、自主回収の対象になるので覚えておきましょう。

食品表示の種類

食品表示は、義務表示と任意表示にわけられています。

義務表示と任意表示

  • 義務表示
    食品表示法によって定められている表示。名称や原材料などまとめて表示してある「一括表示」と熱量やたんぱく質などが表示される栄養成分表示が義務付けられている
  • 任意表示
    表示義務以外で事業者が消費者に伝えたい内容のこと。商品の使い方やよりおいしく食べる方法などのお役立ち情報や注意点など。

義務表示は法律で決められた必ず記載しなければならない表示、任意表示は事業者が自由に記載できる表示と覚えておくと良いでしょう。

事業者の多くは、他社との差別化を図るために消費者に伝えたい特徴や宣伝など任意表示に力を入れがちです。

しかし、食品表示で重要なのは義務表示で、その中でも「安全性」に関する以下の3つ情報は、最重要項目として定められています。

!食品表示の最重要項目

  • アレルギー表示
  • 消費期限又は賞味期限
  • 保存方法

上記の3つの最重要項目は食品表示で省略できない項目となっているので覚えておきましょう。

食品表示法の新基準では、表示可能面積が30平方センチ以下の場合は、省略規定を設けており、義務表示である原材料名や食品添加物、原料産地表示などは省略可能です。

食品表示にまつわる基準

食品表示にまつわる基準

食品表示の重要さはわかったものの、いざ食品ラベルを作ろうとしたときに何をどう記載すればよいのか、わからないという事業者は少なくありません。

なぜなら、食品表示ラベルの作成には複数の法律や基準が関係してくるからです。

食品表示にまつわる代表的な法律は次の通りです。

管轄省庁 法律
消費者庁 食品表示法、景品表示法
厚生労働省 食品衛生法、健康増進法
農林水産省 JAS法、米トレーサビリティ法
経済産業省 計量法、容器包装リサイクル法

この他にも、各種業界のルール(公正取引競争規約)、地方自治体の条例などの基準もあります。

1つの食品ラベルを作成するにあたり、多い時で10個以上の法律が関連することもあるのです。

またそれぞれの法律が、それぞれの定義・基準でルールを定めているため、非常にわかりにくくなっています。

食品表示にまつわる基準を確認しよう

食品表示に関する法律や基準の知識がないまま、食品表示ラベルを作成してしまうと誤った情報を掲載してしまう恐れがあるので注意が必要です。

たとえば、マヨネーズは以下の基準を満たしていないと、商品に「マヨネーズ」という名称を付けられません。

これは農林水産省が定めた「加工食品品質表示基準」によって決められています。

名称 定義
マヨネーズ 半固体状ドレッシングのうち、卵黄または全卵を使用しかつ必須原材料に卵黄、卵白、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、香辛料、調味料(アミノ酸など)および酸味料以外の原材料を使用していないものをいう。

上記に当てはまらない「マヨネーズのようなドレッシング調味料」は、使用している原材料や形状によって次の名称を使用します。

名称 定義
サラダクリーミードレッシング 半固体状ドレッシングのうち、卵黄及びでんぷん粉又は糊料を使用し、かつ必須原材料に卵黄、卵白、でんぷん粉、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、香辛料、乳化剤、糊料、調味料(アミノ酸など)、酸味料及び着色料以外の原材料を使用していないものをいう。
半固体状ドレッシング ドレッシングのうち粘度が30Pa・s以上のものをいう。
乳化液状ドレッシング ドレッシングのうち乳化液状のものであって、粘度が30Pa・s未満のものをいう。

このように姿形がマヨネ―ズと似ていても、基準から外れていたら、食品表示ラベルに「マヨネーズ」と表記することができません。

もしマヨネーズではないのに、マヨネーズと記載してしまうと自主回収の対象となってしまいます。

食品表示ミスによる自主回収は多い

食品表示ミスによる自主回収は多い

商品に問題がなくても、食品表示に不備があると自主回収の対象になります。

食品表示法違反または違反の恐れにより自主回収となった事例は多く、2022年の1年間で自主回収を命じられた事案数は368件にもなります。

食品表示法違反の内容はさまざまですが、詳細を見てみると以下のようなミスがよく見られました。

  • 消費期限・賞味期限の記載ミス
  • 保存方法のミス
  • アレルギー表示の欠落

表示義務の最重要項目である「安全性」に関する内容の記載ミスによる自主回収が目立ちます。

その他にも包装用紙の入れ間違いにより商品に合った食品表示ラベルが貼付されていないという事案も多く見られました。

食品表示不備による自主回収の報告の詳細を知りたい方は、厚生労働省の以下のサイトをご覧ください。

食品衛生公開[公開回収事案検索]|厚生労働省

食品表示ミスを防ぐポイント

食品表示ミスを防ぐポイント

食品表示ミスは主に3つに分けられます。

  • 現場でのミス
  • 食品ラベルの原稿ミス
  • 食品ラベルの印刷ミス

このうち現場ミスと食品ラベルの原稿ミスは事業所の努力により未然に防ぐことが可能です。

ここからは、ミスを防ぐポイントをご紹介します。

ラベルの作成時のミスを防ぐ

食品表示ラベルは、基本的にラベルを貼付する商品に精通している者―つまり事業主や製造現場の責任者が作成します。

ここで誤った食品表示ラベルを作成してしまうと、後から出荷した商品を自主回収しなければならず会社は大きな損害を負う恐れがあるので細心の注意が必要です。

そこで、食品表示ラベルを作成する際には、決して1人に任せず複数人で担当するようにしましょう。

またチェック時には、必ずダブルチェックを行い、ミスを見逃さないようにすることも大事です。

その他、食品ラベルを作成するときには以下の点に気を付けると良いでしょう。

原材料の仕様書・規格書の確認

使用する主原料・副原料の仕様書や規格書を入手して、添加物やアレルゲンを確認しましょう。

食品添加物やアレルゲンは、食品表示でも最重要項目となっています。

製品説明書の確認

商品ラベルを作成する際には、製品説明書をもう一度確認しましょう。

製品説明書を読み直すことで、賞味期限・消費期限の妥当性や保存方法がラベルと相違ないか確認しましょう。

第三者機関に依頼

食品表示ラベルは食品表示法だけでなく、複数の法律や基準に沿った内容・形式で作成する必要があります。

食品の種類により、サンプルはありますがそれでも、法律や基準に沿った内容になっているかの最終確認は必要でしょう。

現場でのチェックでは勘違いや確認漏れがあるかもしれません。

そのようなときは、第三者機関に食品表示ラベル作成またはチェックを依頼しましょう。

食品表示のスペシャリストである第三者機関に依頼すれば、法律や基準に沿った食品表示ラベルができるはずです。

しかし、第三者機関に食品表示ラベルを任せる場合、事業所から渡す製品情報に誤りがあると、誤った情報が掲載された食品表示ラベルが作成されてしまうので注意が必要です。

最寄りの保健所に確認

第三者機関に食品表示ラベル作成を委託するには費用が発生します。

小規模事業所では、その費用を捻出できないところもあるでしょう。

しかし、自社で食品表示ラベルを作成しても、法律や基準に沿った内容や表記になっているのか自社内で確認するのは難しいかもしれません。

そのようなときは、最寄りの保健所に相談してみましょう。

保健所では、食品表示ラベルが適正か否かを相談することが可能です。

保健所での相談は無料なので、しっかりと確認してもらうとよいでしょう。

ただ、保健所に食品表示ラベルの作成をイチから指導してもらおうとすると、時間がかかるばかりか、欲しい回答がもらえない場合もあります。

保健所に相談する際には、食品表示ラベルをある程度まで完成させて、チェック目的で持ち込むとよいでしょう。

現場の包装入れ間違い

食品表示ラベルに問題がなくても、現場の包装入れ間違いにより自主回収が発生してしまうこともあります。

包装の入れ間違えが発生すると、商品とラベルの内容が異なるためアレルゲンによる健康被害や消費期限が異なることによる事故が発生する可能性があり大変危険です。

なぜ現場の包装入れ間違いが発生してしまうのでしょうか。

  • 類似商品の包装を包装機に誤ってセットしてしまう
  • 出荷ギリギリで別の種類の追加注文が誤った包装で出荷してしまった
  • 手作業で張り直そうとしていたラベルが別の商品のラベルだった

いずれも現場の確認ミスやイレギュラーな状況で発生しています。

現場の包装入れ間違いを防ぐには、次の対策が有効です。

現場の包装入れ間違いの対策

  • 作業指示・生産開始時に包装紙と商品の正誤を確認
  • 包装工程の人員が不足していないか確認
  • 最初に包装した製品と最後に包装した製品の内容・表示をチェック
  • 使用したラベルや包材のチェック・記録をおこなう

類似した複数の商品を製造・販売している事業者はこれらの対策ができているか、今一度確認してみてください。

まとめ

まとめ

食品表示に誤りがあると、商品に問題はなくても消費者が安全に食せないため自主回収の対象となります。

もし加工食品にアレルギー物質の表示欠落があり、アレルギーを持った消費者が誤って食してしまったら、命の危機にさらされることもあるからです。

食品表示の中でも安全性に関する「賞味・消費期限、保存方法、アレルギー表示」の3つの項目はとくに重要で省略不可となっています。

まとめ

  1. 食品表示には義務表示と任意表示の2つがある
  2. 食品表示ミスは原稿のミスだけでなく包装用紙の入れ間違えによるミスもある
  3. 食品表示ラベルを作成するときには社内だけでなく第三者機関や保健所でのチェックもおこなう

食品表示は、食品事業者と消費者のコミュニケーションの手段の1つです。

事業者は、自分の作った商品の情報を正確に消費者に伝えるためにも、食品表示のミスを防ぐ対策をとる必要があります。

食品表示ラベルを作成する際には、社内でのダブルチェックはもちろんのこと、第三者機関や最寄りの保健所を活用し、問題ないか確認してもらいましょう。

ABOUT ME
【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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