HACCP導入手順
- 手順1:HACCPチームの編成および適用範囲の特定
- 手順2:製品の記述
- 手順3:意図される用途および使用者の特定
HACCP制度化に伴い、専門書や厚生労働省の資料を参考にHACCPの運用をはじめた事業所も多いのではないでしょうか。
製品の安全性を高めるにはHACCP7原則12手順に従って、HACCPプランをもう一度見直す必要があります。
今回はHACCP7原則12手順のうち、HACCPプランを作成する準備段階である手順1~3までの内容を解説します。
この記事を読めば、HACCPシステムを円滑に進めるためのチームを作ることができ、自社の製品をさまざまな視点で見直すことができるでしょう。
HACCPのチーム編成をしよう!(HACCP導入手順1)
HACCP導入における最初の手順は 「チーム編成」 です。
チームで取り組むことで情報共有がスムーズにでき、普段の業務にも好影響をもたらします。
しかし何人で編成すればよいのか、どんなメンバーを集めればよいのかなど分からないことも多いものです。
HACCPチーム編成のおけるポイントは次の通りです。
ポイント1:1人だけのHACCPのチーム編成はNG
社内のHACCPチームの人数はとくに定められてはいません。
多くのメンバーが必要なわけではありませんが、 一人だけに任せるのは避けましょう。
なぜなら、HACCPは会社全体で取り組むものであり、担当者一人で行う業務ではないからです。
HACCPチームには次のような責任が伴います。
!HACCPチームが負う責任
- HACCPプランの作成
- HACCPプランを従業員に説明
- 従業員へのトレーニングを実施
- HACCPプランの見直し・更新
このようにHACCPチームは社内の中心となってHACCP運用を行うため、一人に任せるのは荷が重すぎます。
小さな工場や加工場でそもそもいるスタッフが少ない場合は、全員がHACCPメンバーになってもかまいません。
事業所内でHACCPプラン作成が難しい場合、外部の専門家や厚生労働省が作成・公開している手引書を活用するのも良いでしょう。
しかしこの場合、手引書や一般的なHACCPプランが自社の製造や工程と一致しているかどうかをHACCPチームで確認する必要があります。
参照:HACCP導入のための手引書|厚生労働省ポイント2:各部門の実務に精通した専門性の高いメンバーが望ましい
効果的なHACCPプランの作成は、チームメンバーの選出にあるといっても過言ではありません。
自社製品の製造に関わる全ての情報が集まるよう、それぞれの実務に精通した従業員をメンバーに選出しましょう。
まずは経営者など 予算権限を持つ組織のトップをHACCPプランの総責任者として配置します。
次に各部門の担当者を配置します。
この時製造部門や品質部門などだけではなく、より幅広い観点から危害要因分析ができるよう、その他の部署からもメンバーを選出しましょう。
たとえば機器のメンテナンスを担当する工務部門であれば、「過去にメンテナンスを怠り異物混入が発生したことがある」原材料や資材の仕入れを担当する購買部門であれば「この仕入先が扱っている原料に残留農薬が検出されたことがある」といった具合に、過去のトラブルや事例をHACCPプランに活かせる場合があるからです。
HACCPのメンバーには雇用形態に関わらず現場に精通した従業員を置くようにしましょう。
ポイント3:専門家を活用する
小規模事業所の場合、そもそも製造メンバーのみで仕入れや機器メンテナンスなど品質管理に精通している従業員がいないということもあるでしょう。
そのような場合は、外部から専門家を招集するのも1つの方法です。
HACCPコンサルタントや各分野の個別の専門家に依頼すると、客観的なアドバイスをもらえます。
その際には、製造している商品の工程に詳しい専門家であることを確認しましょう。
製品説明書を作成しよう!(導入手順2)
HACCPチームを編成したら、次は製品説明書を作成します。
製品説明書とは、 安全管理における製品の情報を整理して書き出したもの。
手順2はHACCP導入の手順の中でおろそかにされがちな工程ですが、じつは非常に重要です。
出典:製品説明書例|厚生労働省-食品製造におけるHACCP入門のための手引書製品の情報や特徴は、この後の手順で危害要因分析をする際に役立つもの。
たとえば製品の包装形態が真空包装の場合、ボツリヌス菌による食中毒のリスクが高まります。
このように製品の特徴に応じてリスク(危害要因)は変化するため、あらかじめ情報をリストアップしておく必要があるのです。
HACCPの製品説明書の書き方は?
次に製品説明書の書き方を解説しましょう。
まず注意したいのが、作成を一人に任せないということ。
製品説明書を一人で作成すると情報の見落としや見逃しが起こる可能性が高くなります。
できるだけ多くのメンバーに参加してもらい、役割分担を決めて情報を書き出しましょう。
書き出す内容は製品によっても異なりますが、おおむね以下のような情報をリストアップします。
製品の名称や種類
- 使用している原材料
- 使用している添加物(一括表示されない加工助剤含む)
- アレルゲン
- 最終製品の特性(規格基準など)
- 包装形態
- 容器包装の材質
- 保存方法
- 賞味期限または消費期限
最終製品の特性の欄には、下記のような法律や規格で決められている基準値を記載し、確認しておきましょう。
!法律や規格で決められている基準値(例)
- 食品添加物の限界値
- 規制上の微生物規格
- 動物用医薬品の最大残留許容基準
- 規制機関が設定した加熱処理(温度・時間)
製品の用途・対象者をHACCPチームで確認しよう(導入手順3)
次は製品の用途や対象者を明らかにします。この手順は「手順2」の製品説明書の作成と同時に行ってもかまいません。
誰がどのようにして食べるのかを書き出しましょう。
まず製品の用途の記述をするときには消費者が、製造者の想定外の方法で、製品を喫食している可能性もあることを想定しておく必要があります。
消費者が製品を製造者の意図する方法以外で食するケースがないか、外部情報をリサーチしましょう。
もし、消費者が製造者の想定外の方法で製品を食していた場合、製品の安全性が保証されるのか、後から危害要因を分析するため、記録しておく必要があります。
次に製品を食する可能性がある人を想定します。とくに気を付けるべきなのは、ハイリスク集団と呼ばれる人たちです。
ハイリスク集団の対象者
- 病者(免疫系の疾患や食事制限のある疾患を抱える人)
- 高齢者
- 妊産婦
- 乳幼児や幼児
ハイリスク集団といわれる方々を対象にした製品の場合、 他の製品とは異なる危害要因が発生し、気をつけるべき点が増える ことがあります。
たとえば免疫機能の弱い乳幼児向けの離乳食は、より衛生管理に留意する必要があります。
しかし、事業所の中には直接病院や学校などに納品するのではなく、問屋や卸業者に製品を納品することもあるので、対象者が分からない場合もあるでしょう。
学校、幼稚園や保育園などの給食、高齢者施設や病院などへ提供されているといった情報は、問屋や卸業者に確認し、共有しておくことが重要です。
またハイリスク集団へ納品する製品を製造する場合、食品が安全であることをより高い水準で保証する必要があります。
食品の安全性を高い水準で保証するには、以下の実施が必要です。
- 工程管理の評価
- モニタリンク頻度を上げる
- 製品検査でコントロールの効果を定期的に検証する
また加熱して食べるのか、そのままで食べるのかといった喫食方法の情報提供も忘れずに行いましょう。
まとめ:HACCPはチームが重要!メンバーで役割分担をして製品説明書をよりよいものにしていこう
HACCP導入にあたり、「何から始めたらよいか分からない」「専門知識を持ったスタッフがいない」といった場合には手引書を参考にしたり、 外部の専門家やコンサルタントを活用する とよいでしょう。
HACCPというとハードルが高く感じますが、製品や工程を見える化すると考えれば、そこまで難しいことではありません。
まとめ
- HACCPの導入はチームを編成し、みんなで取り組む
- 製品説明書は抜けや漏れがないようメンバーとともに作成する
- 製品の用途や対象者を明らかにし、危害要因分析に役立てる
HACCPはチームを始めとし、スタッフ全員で取り組んでこそ最大限の効果を発揮できます。
みんなで取り組めるしくみを作り、安心安全な製品づくりに役立てたいですね。
この記事は、【Codex 食品衛生の一般原則2020-対訳と解説】を元に作成しております。
食品安全マネジメントシステムの基準となる食品衛生の一般原理とHACCPの基本原理をわかりやすく解説した書籍です。ぜひご覧ください。
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