「HACCPに関する従業員教育にはどんな内容が必要?」
「HACCPに対する意識を従業員に持ってほしい」
HACCPの運用は事業者全体で行う取り組みです。したがってHACCPについては従業員にも正しく知ってもらう必要があります。
そこで今回はHACCP運用にまつわる従業員教育について詳しくまとめました。
HACCPを効果的に運用するためには、HACCPについて正しく理解した従業員の協力が必要です。
「HACCPに関する教育は雇用形態や年齢に関係なく従業員全員が対象。すべての従業員のHACCPに対する知識をボトムアップし、食品安全のリスクを減らしましょう」
従業員教育に力を入れ、全員でHACCPに取り組んで食の安全を守りましょう。
HACCP運用で最低限抑えるべき従業員教育の内容は?厳選5選
HACCPを効果的に運用する上で従業員教育は必要です。
実際に作業を行う従業員にHACCPにまつわる知識がなく、目的や理由を理解しないままHACCPに取り組んでもしかるべき効果が得られません。
また一部の従業員のみが知識を持っていても、たった一人の行動ですべての対策が無意味となることがあります。
そのため、すべての従業員がHACCPや衛生管理に関する知識を持つことが重要です。
ここからは、従業員教育に取り入れるべき5つのポイントを解説します。
従業員教育に取り入れるべき5つのポイント
- 「5S活動」の理解
- 記録の残し方
- 製造手順の再確認
- CCP(必須管理点)の理解
- 食中毒やアレルゲンなどの危害要因に関する内容
それでは1つずつ見ていきましょう。
HACCP運用で抑えるべき従業員教育内容1:「5S活動」の理解
「5S活動」はHACCPのベースであり、食の安全を確保するための基本です。
5S活動が機能していない現場ではHACCPは機能しないといっても過言ではありません。
5S活動とは?
- 整理:必要なもの・不要なものとを分別し、いらないものを処分する
- 整頓:必要なものを使いやすく、適切な場所に置く
- 清掃:身の回りに汚れがない状態にする
- 清潔:整理・整頓・清掃ができており、きれいな状態が維持されている
- 習慣:決められたルールにしたがって毎日実施している
これらが壁に掲げるだけの標語になっていたり、単なる掃除の活動になったりしていませんか。
改めて5S活動について確認し、周知させることが大切です。
その際に注意したいのが、5S活動自体を目的としないということです。
5S活動では製造環境を整え、器具などを清潔に保つことはあくまで手段であり、二次汚染や異物混入を防ぎ、食の安全を確保することが目的です。
また、5S活動に取り組むことで従業員の作業効率や、全体の生産性が上がるなどの効果が得られることも伝えましょう。
従業員が自分自身で必要だと感じられる教育にすることで、主体的に取り組めるようになるはずです。
HACCP運用で抑えるべき従業員教育内容2:記録の残し方
HACCPにおいて記録は適切に管理した証拠となり、非常に重要です。
ただし、記録の残し方はどんな方法でもよいというわけではありません。
万が一のトラブルの際には工程ごとに衛生管理をさかのぼって確認できるよう、全員がその方法を正しく知っておく必要があります。
記録は正確に残し、信憑性の高いものでなくてはなりません。以下の内容を中心に、従業員への周知を図りましょう。
!記録のルール
- 鉛筆では簡単に修正できるため、ボールペンなどを使用する
- 訂正する場合は二本線を引き、その上に正しい記録を残す。その際に訂正した人の名前、訂正した年月日を記入する
- 記録はデータをとった後すぐ記入し、記憶に頼らない
- 記録はデータを予測して記入しない
単に「記録を残しましょう」と伝えるのではなく、記録の方法やルールについても従業員全体で共有することが重要です。
HACCP運用で抑えるべき従業員教育内容3:製造手順の再確認
製造手順について、改めて確認しておきましょう。
HACCP導入の際には製造手順や製品についての情報など基本的な内容を改めて確認し、書き出す必要があります。
これらは毎日業務にあたる従業員にとって当たり前すぎる内容のため、わざわざ確認することが少ないものです。
しかし誤った認識のまま業務に取り組んでいると、思わぬ事故やトラブルを引き起こす可能性があります。
基本の内容を今一度確認し、従業員全員で認識を統一することが重要です。
HACCP運用で抑えるべき従業員教育内容4:CCP(必須管理点)の理解
CCP(必須管理点)はHACCPにおいて重要なポイントです。「食品安全の最後の砦」とも呼ばれ、すべての従業員が正しく知っておく必要があります。
そもそもCCPとは危害要因を取り除くために厳重に管理しなければならない工程であり、たとえば加熱や食材洗浄、冷却などがCCPに指定されることの多い工程です。
さらに定めたCCPはどのように管理すべきか基準を設け(加熱工程がCCPの場合、「◯℃で◯分加熱する」など)、さらにきちんと達成できているかモニタリングを行う必要があり、これらの工程には多くの従業員が関わります。
したがってより確実に食品の安全が守るためには、これらCCP(必須管理点)にまつわる一連の流れや、そもそもなぜこの工程がCCPに指定されているのかなどを従業員が正しく知る必要があります。
HACCP運用で抑えるべき従業員教育内容5:食中毒やアレルゲンなどの危害要因に関する内容
従業員の中でもとくに管理者は食中毒やアレルゲンに関するリスクも知っておく必要があります。
いずれも危害要因となりえる要素であり、とくに食中毒は大規模な事故を引き起こすリスクが高いため、管理者クラスであれば正しく知っておかなければなりません。
食中毒に対する有効な手立てが発表されたり、便利で効果的な製品が出ていたりすることも多く、そういった最新情報を入手し、HACCPに取り入れることも管理者としての大切や役目といえるでしょう。
また、盲点となりやすいのがアレルゲンです。
管理者は製造ラインにおいてアレルゲンの交差汚染が起こる可能性があることを知っておく必要があります。
一部の方にとってはアレルゲンを摂取することで大きな健康危害を受けることがあり、注意して管理しなければならないためです。
また、特定原材料7品目やそれに準じた20品目だけでなく、他にもアレルゲンとなる食材はあり、これらの情報もしっかりと把握しておくことが求められます。
従業員教育の3つのポイント
教育の内容が充実したものであっても、従業員の意識づけにつながらなければ目的が達成されたとはいえません。
従業員教育を通じて全員に衛生管理の意識を徹底させるためには、次のポイントに注意して指導を行いましょう。
!従業員教育の3つのポイント
- 継続的に取り組む
- できるだけわかりやすく解説
- コミュニケーションを十分にとる
それでは1つずつ見ていきましょう。
従業員教育のポイント1.継続的に取り組む
従業員教育は継続して取り組むことで、意識の維持につながります。
HACCPや衛生管理にまつわる研修、セミナーなどを月に1回や2ヶ月に1回など定期的に開催しましょう。
大掛かりな研修ではなく、15〜30分ほどの短時間で構いません。無理のない範囲で継続しておこなうことが重要です。
その際、記録のために出席した従業員全員からサインをもらい、残しておきましょう。休みの従業員がいる場合には後日に資料を渡し、サインをもらっておきます。
従業員教育のポイント2.できるだけわかりやすく解説する
すべての従業員が理解しやすいよう、できるだけわかりやすい解説を心がけましょう。
- 専門用語はやさしい言葉に置き換える
- 家庭での事例にたとえて解説する
など、HACCPを身近に感じられるように伝えると効果的です。
また、マニュアルを作成し、それぞれに配布しておくといつでも内容を確認することができ、正しく認識するのに役立ちます。
従業員教育のポイント3.コミュニケーションを十分にとる
コミュニケーションを十分に交わした、双方向的な教育は従業員の衛生管理への意識をより高めてくれます。
研修やセミナーにおいてはお互いの意思や理解状況を確認できるよう、できるだけ意見を交わしながらすすめていきましょう。
認識のズレをすぐに修正でき、目的の共有がしやすくなります。
さらに日頃の業務でもコミュニケーションがとりやすくなり、
- 業務分担がスムーズになる
- 情報共有しやすくなる
などの効果が期待できるはずです。
まとめ:HACCPをスムーズに運用するために従業員教育を徹底しよう
たった一人の誤った行動が食品衛生を脅かす可能性は決して小さくはありません。
したがって社内のHACCPチームだけではなく、従業員全員にHACCPや衛生管理の正しい知識が必要です。
まとめ
- 従業員教育では衛生管理やHACCPにおける重要なポイントを伝える
- 研修は継続して実施し、従業員の衛生管理に対する意識を維持する
HACCPの効果的な運用には従業員教育は欠かせません。繰り返し教育し、より高い衛生管理のレベルを実現しましょう。
コメント
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Reply #1 on : 土 6月 15, 2024, 11:22:00 谷 淳臣
Reply #2 on : 火 6月 18, 2024, 11:13:55 エッセンシャルさん(中の人)