2018年6月に食品衛生法が15年ぶりに改正しました。
2021年より施行されましたが、「営業の許可制度」では今まで営業許可が不要だった業種に営業許可が必要になったことから、一部の業種で3年間の経過措置期間が設けられました。
3年間の経過措置期間は、2024年5月31日で終了したため、今後は現行ルールで営業許可や営業届出の申請や更新が必要になります。
この記事では、15年ぶりに改正された食品衛生法の変更点を7つのポイントにわけてわかりやすく解説します。
あわせて食品衛生法が改正された理由についてもまとめましたので、ぜひご覧ください。
食品衛生法の改正!7つの概要をわかりやすく解説
食品衛生法の改正にともない、次の7つのポイントの見直しが行なわれました。
食品衛生法改正7つのポイント
- HACCPに沿った衛生管理の制度化
- 営業許可業種の見直し・営業届出制度の創設
- 食品のリコール情報は行政への報告
- 広域的な食中毒事案の対策強化
- 特別の注意を必要とする成分等を含む食品への健康被害情報の届出を義務化
- 食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度を導入
- 輸入食品の安全性確保
それぞれのポイントについて詳しく解説しましょう。
食品衛生法改正1:HACCPに沿った衛生管理の制度化
今回の食品衛生法改正の目玉ともいえるのが、HACCPによる衛生管理の制度化です。
2021年6月から完全施行され、原則としてすべての食品事業者にHACCPによる衛生管理が求められます。
食品衛生法改正2:営業許可業種の見直し・営業届出制度の創設
現状に見合うよう営業許可業種が見直され、営業許可が必要な業種が34種から32種に変更されました。
これは単に数が減ったわけではなく、原材料や製造工程が共通する業種が統合されるなどしたためです。
また、新たに営業届出制度が創設されました。
これにより、営業許可が不要だった業種が届出の対象に、またこれまで営業許可が必要だった業種が、届出に変更といった変更が行なわれています。
これにより、営業許可が不要だった業種が営業許可の対象に、またこれまで営業許可が必要だった業種が、届出の対象になっています。
なお、新たに追加された営業許可の取得が必要な業者で、3年間の経過措置が適用される業種は次の通りです。
経過措置の対象となる業種
- 液卵製造業
- そうざい半製品の製造
- つけ物加工業
- 魚介類加工業
- 生食用のほや若しくはうにのむき身処理加工業
- 行商
経過措置期間の期限が2024年5月31日に終了したことから、食品事業者は今後、旧制度での営業許可証での営業は認められません。
今後は、新制度し従って、営業許可の申請・更新をおこない営業する必要があります。
コロナ禍の後、新商品やデリバリなど新しいことを始めた事業者も多いと思いますが、現在の許可の範囲でできるのか、追加が必要なのかをあらかじめ確認してからスタートさせましょう。
食品衛生法改正3:食品のリコール情報は行政へ報告
自社で製造や輸入した製品にリコール(自主回収)が必要となった場合、都道府県への届出が義務化されました。
これはリコールに関する情報を各行政がきちんと把握し、的確な監視や指導を行うためです。
届出されたリコールの内容は都道府県から国に報告され、厚生労働省のホームページなどで公表されます。
いざ、自分が提出する側になった時には焦って頭が真っ白になってしまわないよう、火災の避難訓練の同様、もし自分が事故を起こしてしまった場合、速やかな対応ができるよう連絡先や届出先、報告書の書き方を確認しておくことをおすすめします。
食品衛生法改正4:広域的な食中毒事案の対策強化
物流の発達や店舗拡大により、都道府県をまたぐような広域にわたって発生した食中毒事案に対し、国や都道府県が相互に連携し、情報共有や協力できるよう対策が強化されました。
具体的には、地域ブロックごとに「広域連携協議会」が設置され、感染源の早期発見や対応に力を入れられるようになったことが挙げられます。
これまで広域で発生した事案を取りまとめる組織がなく、対応が遅れることが多かったことを受けた形です。
食品衛生法改正5:特別の注意を必要とする成分等を含む食品への健康被害情報の届出を義務化
健康食品のうち、厚生労働省が特別な注意が必要と認める成分を含む食品によって健康被害が出た場合、行政への届出が義務化されるようになりました。
近年、サプリメントなどによる被害が増えていることが背景です。
たとえばホルモンのようなはたらきを持つ成分が含まれている食品において、製造管理の不備によって含有量が均一でなかったり、科学的根拠に基づかない摂取目安量が設定されていたりしたために、健康被害が生じたケースがあります。
また、これまで健康被害に関する情報収集が制度化されていないことを原因に、必要な情報の収集・共有ができていませんでした。
このような実態を受け、今後は事業者に健康被害情報の届出義務が、都道府県などの保健所は厚生労働省に報告義務が課されます。
食品衛生法改正6:食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度を導入
食品用の器具や容器、包装の原材料に含まれる物質は安全性が担保されたもののみを使用できる、「ポジティブリスト」制度が導入されました。
多くの海外の国でポジティブリストが採用されている一方、これまで国内では使用を制限する物質を定める「ネガティブリスト」制度が採用されていました。
ネガティブリストの制度の場合、海外で使用が禁止されている原材料でも規格基準を定めるまで国内で規制することができません。
つまり、安全性が確認されていない原材料でもネガティブリストに記載がなければ使用可能ということです。
そこでポジティブリストを採用することで、今後は安全性が確保できない原材料に対して規制をかけられるようになります。
また食品が直接触れる容器が食品衛生法に適合しているものか、きちんと確認してから購入しましょう。
食品衛生法改正7:輸入食品の安全性確保
食品を輸入する際にはHACCPに基づく衛生管理の確認や、乳製品や水産製品の衛生管理証明書の添付が必要な条件となりました。
これまでは輸入時に検査することで対策していましたが、国内でHACCPが制度化されたことにともない、より確実に輸入品の安全性を確保できる体制が整えられました。
また、輸出時にも輸出先国の衛生要件を満たせるよう、国や自治体で衛生証明書を発行するなどを法規定することが定められています。
食品衛生法改正!その理由は?
食品衛生法が改正されたのは2003年以来、実に15年ぶりのことです。
前回の改正時にはBSE問題や偽装表示問題などを受け、食の安全に対する国民の不安が高まったことが背景にありました。
一方、今回改正された背景には以下のような点が挙げられます。
理由1:外食や調理食品へのニーズの高まり
近年、共働き世帯や65歳以上の夫婦のみ世帯の増加などから、お惣菜などすぐ食べられる食品を購入したり、テイクアウトやデリバリーを利用したりといった中食や外食のニーズが高まっています。
以前と比べて私たちのライフスタイルや食生活は変化し、それにともなった衛生管理の手法などが新たに必要だと考えられます。
理由2:国内の食品衛生管理を国際的な衛生基準に合わせるため
食のグローバル化が進み、輸入・輸出食品の種類も増加していることから、食品衛生改正法が見直されました。
国内の食品事業の衛生管理の手法や包装容器の衛生規定の整備などは、諸外国に比べて遅れている部分が多く、国際的な衛生基準に追いつきたいという狙いがあるためです。
理由3:食中毒や異物混入発生数が下げ止まり
毎年食中毒や異物混入などの事故が後を立たず、発生件数も約2万人でここ数年下げ止まっています。
また、都道府県を越える広域的な食中毒の発生、健康食品による被害なども多く、これらに対応し、食の安全を取り戻したいとの狙いもあります。
2024年4月から化学物質管理者の選任義務も発生
2024年4月に施行される「労働安全衛生法改正」では、食品事業者にも化学物質管理者の選定義務が生じるようになります。
化学物質管理者とは、事業所内にある化学物質を安全に管理するための知識を持ち、従業員が化学物質を安全に扱えるようリスクアセスメントや事故防止を率先的におこなう者のことです。
化学物質管理者の選定義務が対象となる業種は、規模や労働人数に関わらず、リスクアセスメント対象物(化学物質)を含む製品を製造・提供・取り扱う事業所となります。
食品事業者では、化学物質入りの洗浄剤や害虫駆除剤、食品添加物を使用することから多くの事業所で化学物質管理者を選定する義務が生じます。
現時点では、食品事業者が化学物質管理者の選任を怠っても罰則は生じません。
しかし将来的には、営業許可の申請や更新ができないなどの不都合が生じる恐れがあるため、今のうちに選任しておきましょう。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
食品事業所必見!選任が義務付けられる化学物質管理者とは?
この記事では、化学物質管理者とは何か、選任対象となる事業所や選任要件、化学物質管理者の役割について解説します。...
まとめ
2018年に食品衛生法が15年ぶりに改正されました。
改正内容を確認すると、食中毒事故やフードテロ、HACCP導入など食品衛生の課題に真摯に向き合っていることがわかります。
このことから、今後ますます食の安全性が問われることが予想されるでしょう。
まとめ
- 食品衛生法改正ではHACCP導入や営業許可制度の変更・営業届出の創設など大幅な改定が盛り込まれた
- 食品衛生法改正の背景にはライフスタイルや食生活の変化、国際化への対対応
- 食品事業者は食品衛生法だけでなく、食にまつわる法律も理解し実施しなければならない
食品事業者にとって、これらの改正内容は業務の負担となりますが、自社の商品で消費者の健康を損なうことがないよう、ルールをきちんと守っていく必要があります。
安全な食を提供するためにも食品衛生法の改正内容を理解し自社で取り組んでいきましょう。
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