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食品衛生法改正で営業許可制度はどう変わる?新設された営業届出制度についても解説

食品衛生法改正で営業許可制度はどう変わる?新設された営業届出制度についても解説

HACCP食品にまつわる法律

飲食店

「食品衛生法が改正されて営業許可制度のどんな点が変わった?」
「食品衛生法の改正でやるべきことは?」
食品衛生法の改正によって2021年6月から営業許可制度が変わりました。
従来の制度から大幅に見直され、戸惑っている方も多いかもしれません。
そこで今回は食品衛生法の改正によって変わった営業許可制度について詳しく解説します。
「食品衛生法の改正により、業種によっては手続きが必要となることもあります!」
後半では新設された営業届出制度や届出の提出方法についても解説していますので、新たな制度の対応に役立ててくださいね。

食品衛生法改正による営業許可制度はどう変わる?

食品衛生法改正による営業許可制度はどう変わる?

2021年6月、改正食品衛生法が施行され、新たな営業許可制度がスタートしました。

食のグローバル化により、食品衛生の基準が変わってきたことが改正の理由のひとつです。

それではまず、新たな営業許可制度のポイントを4つ挙げましょう。

変わるポイント1:新たに営業許可が必要になる業種が追加された

これまで営業許可が不要だった一部の業態に、営業許可の取得が義務付けられるようになりました。

変わるポイント2:営業許可が必要な業種の一部が営業届出のみでOK

これまで営業許可が必要だった業種のうち、一部が営業届出の提出のみとなりました。

変わるポイント3:一部の業種は営業許可を取ると扱える食品の範囲が拡大

これまでいくつかの業種では、製造している食品の種類から複数の営業許可を得る必要がありました。

たとえば、「菓子製造業」の営業許可を取得しているパン屋が調理パンを製造・販売している場合は、次の3つの許可が必要でした。

パン屋が調理パンを製造・販売する場合に必要な営業許可

  • 菓子製造業
  • 惣菜製造業
  • 飲食店営業

しかし、今回の食品法改正により1つの営業許可のみで対応できるようになりました。

変わるポイント4:原材料や製造工程が共通する業種は統合

原材料が製造工程が共通する業種は、ひとつの営業許可に統合されました。

たとえば、大豆が主原料の味噌と醤油の場合、今までは次の2つの営業許可が必要でした。

大豆が主原料の味噌・しょうゆの営業許可

  • みそ製造業
  • しょうゆ製造業

今回の改正で統合され、「みそ又はしょうゆ製造業」に一本化されます。

他にも、喫茶店を営みながら食事も提供する場合、今までは次の2つの営業許可が必要でした。

飲食店の営業許可

  • 飲食店営業
  • 喫茶店営業

「飲食店営業」に一本化されました。

食品衛生法改正により営業許可が必要となる32業種一覧

食品衛生法改正により営業許可が必要となる32業種一覧

従来の食品衛生法では営業許可が必要な業種は34種類でしたが、今回の改正によって32種類に変更されました。

今回の改正で営業許可が必要となる32業種は次の通りです。

!営業許可が必要となる32業種

  1. 飲食店営業
  2. 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業
  3. 食肉販売業
  4. 魚介類販売業
  5. 魚介類競り売り営業
  6. 集乳業
  7. 乳処理業
  8. 特別牛乳搾取処理業
  9. 食肉処理業
  10. 食品の放射線照射業
  11. 菓子製造業
  12. アイスクリーム類製造業
  13. 乳製品製造業
  14. 清涼飲料水製造業
  15. 食肉製品製造業
  16. 水産製品製造業
  17. 氷雪製造業
  18. 液卵製造業
  19. 食用油脂製造業
  20. みそ又はしょうゆ製造業
  21. 酒類製造業
  22. 豆腐製造業
  23. 納豆製造業
  24. 麺類製造業
  25. そうざい製造業
  26. 複合型そうざい製造業
  27. 冷凍食品製造業
  28. 複合型冷凍食品製造業
  29. 漬物製造業
  30. 密封包装食品製造業
  31. 食品の小分け業
  32. 添加物製造業

引用:食品衛生法施行令 | e-Gov法令検索|第35条

実は営業許可制度は1947年(昭和22年)の法制定当時に設けられたのち、1972年(昭和47年)から見直しが行われておらず、現代の状況とそぐわない部分も多くなってきていました。

そこで今回の法改正により、現状に沿った営業許可制度に変更され、統合や新設によって32業種となりました。

食品衛生法改正により新たに営業許可が必要となった業種一覧

今回の改正で新たに営業許可が必要となった業種は次の5種です。

業種概要
水産製品製造業 干物やイクラしょうゆ漬け等魚介類やその卵を主原料とする食品の製造)
液卵製造業 鶏卵から卵殻を取り除いたものを製造
漬物製造業 漬物や漬物を主原料とする食品の製造
密封包装食品製造業 缶詰やレトルト食品など、密封包装食品で常温保存可能なものの製造
食品の小分け業 菓子等の既製品を小分けし、容器包装に入れるなどの営業

参照:営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省

これまで許可が不要だったにもかかわらず、今後は必要となった背景には

  • 食中毒の実態やリスク
  • 公衆衛生に与える影響

などが挙げられます。

食品衛生法改正により営業許可が不要となり届出のみでよくなった業種

食品衛生法の改正により、営業許可が不要な業種は一部をのぞき、営業届出の提出が必要となりました。

その中には、これまで営業許可が必要だったものが、営業届出の提出でOKとなった業種もいくつかあります。

以下、営業許可から営業届出へ変更された業種のリストです。

業種概要
乳類販売業 直接飲用に供される牛乳、山羊乳若しくは乳飲料(保存性のある容器に入れ、摂氏百十五度以上で十五分間以上加熱殺菌したもの(注1)を除く。)又は乳を主要原料とするクリームを販売する営業
食肉販売業(包装食肉) 食肉を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのまま販売する営業
魚介類販売業(包装鮮魚介類) 鮮魚介類を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのまま販売する営業
氷雪販売業 主として氷雪を仕入れて、販売する営業
コップ式自動販売機(自動洗浄装置を有し、かつ、屋内設置のもの) 調理の機能を有する自動販売機(容器包装に入れられず、又は容器包装で包まれない状態の食品に直接接触する部分を自動的に洗浄するための装置その他の食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な装置を有するもの)により食品を調理し、調理された食品を販売する営業

参照:営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省

これらの業種は営業許可が必要な業種と比較し、食中毒発生のリスクが低く、公衆衛生に与える影響も少ないと考えられます。

したがって、営業許可より基準の緩い営業届出への引き下げとなりました。

食品衛生法改正により新設された営業届出制度とは?

食品衛生法改正により新設された営業届出制度とは?

食品衛生法の改正により、原則すべての食品事業者にHACCPに基づく食品衛生管理を徹底するよう義務付けられました。

そのため、食品業者がHACCPに基づく衛生管理をしているか、監視するために営業届出制度が創設されることに。

ただ営業許可が必要な業種に比べ、食中毒のリスクが少ないと考えられることから施設基準がなく、手数料も必要ありません。

しかし、届出事業者も許可事業者と同じように

  • HACCPに沿った衛生管理の実施が必要
  • 食品衛生責任者も設置しなければならない

という点を確認しておく必要があります。

それでは、営業届出の対象となる業種についてそれぞれみていきましょう。

また、あわせて営業届出を必要としない業種についてもリストアップしていますので、確認しておきましょう。

営業届出の対象業種一覧

営業届出が必要な業種は以下のとおりです。

!営業届出が必要な業種

  1. 魚介類販売業(包装済みの魚介類のみの販売)
  2. 食肉販売業(包装済みの食肉のみの販売)
  3. 乳類販売業
  4. 氷雪販売業
  5. コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置)
  6. 弁当販売業
  7. 野菜果物販売業
  8. 米穀類販売業
  9. 通信販売・訪問販売による販売業
  10. コンビニエンスストア
  11. 百貨店、総合スーパー
  12. 自動販売機による販売業(5.コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置)及び営業許可の対象となる自動販売機を除く。)
  13. その他の食料・飲料販売業
  14. 添加物製造・加工業(法第13 条第1項の規定により規格が定められた添加物の製造を除く。)
  15. いわゆる健康食品の製造・加工業
  16. コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く。)
  17. 農産保存食料品製造・加工業
  18. 調味料製造・加工業
  19. 糖類製造・加工業
  20. 精穀・製粉業
  21. 製茶業
  22. 海藻製造・加工業
  23. 卵選別包装業
  24. その他の食料品製造・加工業
  25. 行商
  26. 集団給食施設
  27. 器具、容器包装の製造・加工業(合成樹脂が使用された器具又は容器包装の製造、加工に限る。)
  28. 露店、仮設店舗等における飲食の提供のうち、営業とみなされないもの
  29. その他

営業届出対象外の業種

以下の業種は食中毒発生や異物混入のリスクが低いと考えられることから、営業届出や営業許可を取得することなく営業できます。

!営業届出対象外の業種

  1. 食品又は添加物の輸入業
  2. 食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
  3. 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業
  4. 合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
  5. 器具容器包装の輸入又は販売業

引用:食品衛生法施行令 | e-Gov法令検索|第35条

これらの業種ではHACCPに沿った衛生管理は不要ですが、任意で取り組んでもかまいません。

食品営業届出の提出方法

食品営業届出の提出方法

食品営業届出制度は新設された取り組みのため、届出の出し方などがわからない場合も多いかもしれません。

届出の提出方法は、窓口で直接提出する方法と、インターネットを使って提出する方法の2つです。

それぞれの方法について解説します。

窓口で提出する方法

届出を手渡ししたい場合、所轄の窓口に関係書類を提出します。

必要な書類は以下のとおりです。

必要書類

  1. 営業届出用紙
  2. 食品衛生責任者の資格を証する書類(調理師免許証や養成講習会の修了証など)
  3. 営業施設の図面
  4. 法人の場合は、法人名称・所在地・代表者氏名が確認できる書類

営業届出用紙は保健所に用意してあります。

保健所によって必要となる書類が変わることもあるため、事前に確認しておきましょう。

インターネットで提出する方法

窓口へ行かず、インターネットで届出を出したい場合、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」を利用して関係書類を提出します。

また、営業届出だけでなく、営業許可の申請も可能です。

■厚生労働省「食品衛生申請等システム

マニュアルも用意されているため、わからない点は確認しながら入力するとよいでしょう。

■厚生労働省「食品衛生申請等システム システム利用マニュアル

食品営業届出に提出期限はある?

食品営業届出に提出期限はある?

2021年5月31日の時点ですでに営業している事業者に関しては、2021年11月30日までに営業届出を提出する必要があります。

ただし、「営業許可」から「営業届出」に移行した事業者の場合は届出の提出は不要です。

また、2021年6月1日以降に開業する事業者の場合は、営業開始前に届出を提出しておきましょう。

まとめ:食品衛生法の改正内容を再チェックして早めの営業手続きをしよう

まとめ:食品衛生法の改正内容を再チェックして早めの営業手続きをしよう

食品衛生法の改正で、営業許可制度が従来に比べてより現状に即した制度となりました。

また、営業届出制度により、一部の業種には新たに申請することが求められています。

まとめ

  • 食品衛生法の改正により営業許可制度が見直され、営業届出制度が新設された
  • 新たに営業届出を提出する必要となった業者は早めに手続きをする

自社の業種が新たに申請が必要なのかどうか、改めて確認しておきましょう。

「届出の申請が必要かどうか分からない」など疑問がある場合には、管轄の保健所へ相談するとよいでしょう。

営業許可制度以外にも食品衛生法改正で変わったことがいくつかあります。その他の改正内容については、以下の記事をご覧ください。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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