安全が保証された食品をお客様に提供するためには、製造現場の衛生環境を整えることが大事です。
衛生環境を整える方法はさまざまですが、今回は照明の選び方にスポットを当てていきます。
食品製造現場の照明は、「明るく手元が見えればよい」というわけではありません。
万が一、落下したときを想定し被害を最小限に抑えられるものや異物混入を防止できるものを選ぶ必要があります。
食品製造現場のエリアごとの適切な照度基準もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
食品製造現場の照明の選び方
食品製造現場では消費者の口に入る商品を扱うため、ガラス飛散や異物混入などの事故を想定し、被害が最小限に抑えられるような照明を選ぶ必要があります。
ここからは、食品製造現場の照明を選ぶポイントをみていきましょう。
落下時にガラスが飛散しにくい照明
食品製造現場の照明は落下時にガラスが飛散しにくいものを選びましょう。
照明のガラスの飛散距離は想像以上に長く、製品の異物混入だけでなく後片付けや後処理で業務がストップしてしまうからです。
さらに飛散防止対策をしていない蛍光灯のガラスが割れた場合、地面に落下したときの衝撃でガラスが粉々になり飛散します。
食品製造中にもし、照明が落下してしまったら、商品はすべて廃棄せざるを得なくなるでしょう。
さらに細かいガラスの破片が製造機器に付着している可能性があるので、機器の洗浄も必要になります。
その結果、商品の製造をストップせざるを得なくなり、経営にも大きな影響が出ます。
寿命が長い照明
食品製造現場の照明は、寿命が長いものを選びましょう。
照明の寿命が短いと、交換頻度が高くなりコストや手間がかかるからです。
また、交換時に誤って照明を落下させてしまうリスクも高まります。
コスト削減や落下リスク低減のためにも、寿命の長い照明を設置するのがおすすめです。
発熱量の少ない照明
食品製造現場の照明は発熱量の少ないものを選びましょう。
食品製造現場で使用する照明は数が多く、発熱量の多いものを選ぶと室内温度が上昇してしまうからです。
食品製造の多くは、厳重な温度管理が必要で室温が上がってしまうと品質低下や食中毒リスクが上がります。
また照明の熱量が多いと、室温を下げるためにエアコンを強めに設定しなければならず、光熱費のコストも増加してしまいます。
紫外線の放出が少ない照明
食品製造現場の照明は、紫外線の放出が少ないものを選びましょう。
なぜなら虫は蛍光灯や水銀灯の照明から微量に出ている紫外線を感知し、集まる習性があるからです。
照明に虫が集まると商品に混入してしまう恐れがあります。
また紫外線は商品劣化の原因にもなるため、品質保持のためにも紫外線量の少ない照明が好まれます。
ほこりや水分が付着しにくい照明
食品製造現場の照明は、ほこりや水分が付着しにくいものを選びましょう。
ほこりは軽く空気の流れに乗って舞い上り、静電気を介してくっつき合う性質を持ちます。
そのため静電気を発する照明はほこりが付着しやすくなってしまうのです。
またその照明が熱を放出するタイプの場合、ほこりが熱を受けてこびりつき取れにくくなってしまいます。
そのまま長期間放置してしまうと、ほこりの汚れで明るさが半減してしまい、食品製造現場に必要な明るさを保てなくなる恐れもあるのです。
さらにドアの開封などによる室温の変化によって、照明に水滴が付いてしまうと、ほこりを養分に照明にカビが繁殖してしまいます。
カビが照明から商品に付着してしまうと、商品にカビが繁殖しクレームにつながります。
なぜ食品製造現場に明るさが必要なの?
食品製造現場の照明は、万が一の事故や異物混入に対応したものを選ぶのはもちろんですが、明るさ(照度)も大事です。
ここからは、なぜ製造現場の照明に明るさが必要なのかを解説していきます。
異物混入を防ぐ
異物混入を未然に防ぐには製造現場の目視確認や検品作業が重要です。
製造時現場に明るさがないと商品内の小さな異物を確認できないまま出荷してしまう恐れがあります。
出荷した商品に異物混入があると、対象商品のリコールを要請したり、異物の詳細を確認するために異物同体検査を申し込んだりと、イレギュラーな業務が発生します。
その結果、従業員の作業負担が増えてしまい最悪の場合、業務がストップし経営にも影響が出てくるかもしれません。
従業員が安心・安全に作業できるようにするため
多くの食品製造現場では、作業効率化と大量生産のため機械を採り入れているところが多いでしょう。
製造機器は便利ですが、使い方を誤ると思わぬ事故につながります。
製造現場の明るさが足りないと、従業員が機器の操作を誤ったり、機器に体の一部が巻き込まれたりするような事故が発生する恐れがあり大変危険です。
従業員が怪我無く安心して働くためには、操作盤や作業時の手元がはっきり見えるくらいの照度が必要です。
適切な作業環境で作業効率を上げるため
製造現場が暗いと従業員の集中力が落ちてしまうため、作業効率が下がります。
製造現場が暗いと商品や製造機器の異常を発見しづらくなりますし、手元をよく見ようと目を酷使するため、肩こりや眼精疲労など従業員の体調不良にもつながるからです。
また明るさは人の感情にも影響を与えます。
製造現場が暗いと従業員のモチベーションが上がりにくくなるからです。
製造現場が明るいと手元や細かい部分がよく見えるのはもちろんのこと、従業員のモチベーションもアップするため作業効率が上がります。
リスクを把握し対応方法を事前に考えておく
製造現場の照明は明るくて、万が一の事故に備えたものがよいことはわかりました。
食品製造現場の照明のさまざまなリスクやメリットを考えると、照明は蛍光灯よりもLEDや飛散防止形のタイプをおすすめします。
しかしながらLED灯は蛍光灯よりも価格が高いため、中小規模事業所では工場内のすべての照明を一斉交換する費用や時間が足りないこともあるでしょう。
その場合は、リスクの高い場所から順次交換していき、合わせて万が一落下したときの対応方法を事前に考えておくことが大事です。
たとえば飛散したら製造途中の商品を全量廃棄する、目に見えないガラス片を取り除くために機器を洗浄するなど具体的な作業をまとめておくと良いでしょう。
そして、新たな照明を交換する時期がきたら、先ほど紹介した照明の選び方のポイントを見ながら適切な照明に交換します。
飛散防止対策
飛散したときの対応方法を考えることも大事ですが、落下時の飛散を最小限に抑えるための対策もしておきましょう。
最近では、ガラスの飛散防止や防塵のための照明フィルムやカバーなどが安価で販売されています。

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時計の前面ガラスを傷や汚れを保護し、落下時等によるガラスの飛散を低減します。
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【エリア別】食品製造工場の照度基準
一般的な工場の照度基準は、JIS Z 9110-2010(日本工業規格)によって定められています。
ただ食品工場に限定した照度基準は定められていません。
よって製造する商品や製造工程に合わせて、エリアごとの照度基準をそれぞれ設置する必要があります。
食品製造工場のエリア別の照度基準の目安は次の通りです。
- 検品作業場…750lx
- 製造現場…500lx
- 作業を伴う倉庫…300lx
- 手洗い場・職員の更衣室…150lx
lx(ルクス)とは明るさの単位で、数値が大きいほど明るいことを指しています。
検品作業を行うエリアの場合、商品全体に光が当たらないと異物を発見できないため、製造現場内でも高い照度の照明が必要です。
また適切な照度を設置していたとしても、人の影や機械の影で商品に光が届かないこともあるでしょう。
その場合は、天井の照明だけでなく手元が照らせる局所照明が必要になることもあります。
さらに照明が多すぎると照明の発熱により室内温度が上昇してしまうことも考えられます。
生鮮食品を扱う工場では発熱量が少なく、少ない本数でも明るい照明を選ぶ必要があるかもしれません。
自然光が届きやすい場所にある工場では照度が基準を満たなくても作業ができるでしょう。
逆に自然光が届きにくい場所にある場合は、基準を満たしていても暗く感じるかもしれません。
このように食品製造工場では製造する商品の特徴や製造エリア、工場の立地によって、必要な照度が異なるため、各事業所で必要な照度は大きく変わります。
先ほど提示した照度の目安を参考に、現場の従業員とも話し合いながら適切な明るさの照明を設置していきましょう。
今の製造現場の照度がどれくらいあるのかは、照度計で調べることができます。
まとめ
食品製造現場の照明を選ぶときには、作業が快適にできる明るさだけ求めればよいわけではありません。
万が一、落下したときの被害リスクを最小限に抑えられるかどうか、虫やほこりを寄せ付けないものかどうかも考えながら選びましょう。
まとめ
- 食品製造現場の照明は落下時にガラスが飛散しにくいものを選ぶ
- 食品事業所の立地環境や商品の種類、作業エリアごとに必要な照度が異なる
- 照明の照度だけでなく設置場所も検討し手元や作業現場が暗くならないようにする
照明の選び方が大事であることはわかるものの、中・小規模事業所の場合、今の照明を一斉に変更するのが難しいこともあります。
その場合は、リスクの高い場所から順次交換し、照明の落下が起こった場合にどうしたらガラス飛散の被害を最小限に抑えられるか、対策を考えておくと安心です。
この機会に安心・安全な食品を提供するためにも、製造現場内の照明を見直してみてはいかがでしょうか。

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