食品製造現場では、商品の安全性と品質を守るため衛生管理を徹底する必要があります。
そのため、使用する備品や消耗品は適当なものを選ぶのではなく、食品衛生法に適合したものを適切に管理することが不可欠です。
この記事では、食品製造現場で使用する備品や消耗品の種類や選び方、管理方法についてわかりやすく解説します。
食品製造現場で使用する備品・消耗品の種類
食品製造現場で使用する備品・消耗品にはさまざまな種類があります。食品製造現場で使用される主な備品・消耗品は次の通りです。
備品
- 食品を保管・収納しておく食品棚
- 従業員に貸し出す作業服(白衣・エプロン・帽子など)
- すのこ
- 調理備品(まな板・包丁・計量カップ・保管容器など)
- 清掃用具
消耗品
- 衛生用品(ビニール手袋・マスクなど)
- 食品シート
- 洗浄・殺菌用の洗剤・薬品(中性洗剤・ハンドソープなど)
上記の備品・消耗品は、食品製造現場に欠かせないものばかりですが、1つ1つ揃えるとコストがかかります。
しかし、「安いから」という理由だけで備品や消耗品を選択してしまうと、洗浄不足による食中毒や異物混入のリスクが高まるため注意が必要です。
次の章で詳しく見てみましょう。
食品製造現場で使用するのに適さない備品を選択したときのリスク
食品製造現場で使用するのに適さない備品や消耗品を選択した場合、次の2つのリスクが高まります。
- 備品・消耗品の破損
- 備品のメンテナンスが十分できない
2つのリスクをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
備品・消耗品の破損
食品製造現場に適さない備品・消耗品を使用すると、破損のリスクが高まります。
例えば、コストカットのため消耗品の1つであるビニール手袋を、食品衛生法に適さない薄手のものにしたとします。製造現場によっては、作業途中にビニール手袋が破けてしまい、その一部が食品中に含まれてしまう可能性があるでしょう。
また安全性が確認されていないゴム手袋は、食品や食品添加物に触れると化学反応を起こし有害物質を発生させてしまうかもしれません。
そうなると、安全が保証された商品を消費者に届けられなくなるだけでなく、会社の信用を失い経営にも大きなダメージを負うことになります。
備品のメンテナンスが十分できない
食品製造現場で使用するのに適さない備品を使用すると、メンテナンスが十分にできず、錆びやカビを発生させ、食中毒や異物混入リスクが高まるため注意が必要です。
例えば、食品や食品添加物を保管する食品棚にはワイヤーラックがよく使用されます。
ワイヤーラックを使用するのには問題ないのですが、耐久性が低いものを選んでしまうと、棚がゆがんでしまいます。
ゆがむと使いづらくなるだけでなく、ゆがんだ部分の防さび加工が剥がれやすくなり、錆が発生してしまう可能性があります。
もし、ワイヤーラックに化学薬品を置いていたら、ゆがんだ棚で化学薬品が落下し、大きな事故につながるかもしれません。
またワイヤーラックの下段の高さが足りないと、床の掃除がしづらくなり、掃除が行き届かず食中毒の原因になる可能性もあります。 さらに取り外しや移動がしにくいものだと、洗浄や消毒がしにくくなるなどの弊害もあります。食品製造現場で使用する備品を選ぶ6つのポイント
食品製造現場で使用する備品や消耗品を選ぶときには、次の6つのポイントを押さえておくと間違いないでしょう。
食品衛生法に適したものを選ぶ
食品製造現場で使用する備品や消耗品を選ぶときには、食品衛生に適したものを選ぶのが絶対条件です。
食品衛生法では、食品を製造するときに使用する調理器具や容器包装は、清潔で衛生的なものでなければならないこと。
また、調理器具や容器包装などが食品に触れた時に化学反応を起こすことがないよう、製造方法の基準を定めています。
食品事業者においては、食品衛生法に適しない調理器具や容器包装などの備品・消耗品は使用しないよう定めています。
洗浄しやすいものを選ぶ
食品製造現場で使用する備品は、洗浄しやすいものを選びましょう。
構造が複雑なものは、隙間に汚れや水が付着しやすく、カビや錆びの発生の原因になるためです。
とくに調理器具は、食品が直接触れるため残渣や油が溜まりやすくなります。
洗浄するときの洗い残しを防止するため、フチに折り返しのないものや、R構造のものを選びましょう。
一度設置したら、動かさないような重量のある備品棚などは、床が掃除しやすいように、最低でも15センチ底上げできるようなものや調整できたりするようなものを選びましょう。
耐久性に優れているものを選ぶ
食品製造現場で使用する備品は、耐久性に優れているものを選ぶようにしましょう。
熱に強く、落下や接触など万が一大きな衝撃を受けても破損しにくい材質のものを選ぶことで異物混入を防げます。
使用する温度帯に合った素材のものも選ぶポイントです。
混入時に発見しやすいものを選ぶ
食品製造現場で使用する備品や消耗品は、混入時に発見しやすいものを選びましょう。
例えば金属入りの青色絆創膏は、万が一食品に混入しても見つけやすいのはもちろんのこと、検品時の金属探知機に反応するため商品の発送を未然に防げます。
消耗品は使い捨てのものを検討する
ゴム手袋や手洗い後のタオル、食器や調理台を拭く布巾などは、使い捨てのものが望ましいでしょう。
これら消耗品は、消毒や使い分けを徹底しなければ、交差汚染につながるためです。
どんなにルールを徹底していても、誤って使用してしまうこともありますし、洗浄や消毒を怠ると食中毒リスクが高まります。
調理器具など製造現場のすべてのものを使い捨てにすることは、現実的ではありません。
しかし、交差汚染が発生しやすい手洗い場や調理台のタオルや布巾、ゴム手袋は使い捨てのものを選ぶ方が良いでしょう。
メンテナンスしやすいものを選ぶ
食品製造現場で使用する備品は、メンテナンスしやすいものを選びましょう。
食品製造現場にある備品は、定期的に洗浄・消毒を実施し、清潔を保つ必要があるためです。
食品製造現場は、水分や食品の残渣が残っていると、カビや食中毒菌が発生し、食中毒リスクが高まります。
また、ほこりが長年堆積すると害虫発生にもつながります。
備品が洗浄しにくいものだったり、壊れやすいものだったりするとメンテナンスに時間を要し、従業員の業務負担が増えてしまうでしょう。
従業員が効率よく仕事を行い、食中毒の発生を防ぐためにも事業者が備品を選ぶときは、購入後のメンテナンスも考慮して備品を選ぶ必要があります。
現場で使用する備品や消耗品の管理方法
食品製造現場の備品や消耗品を揃えたら、それらを管理する方法を考えましょう。
備品や消耗品をただ空いているスペースに置いたり、ルールなく倉庫に詰め込んだりしてしまうと、業務効率が落ちるだけでなく、食中毒リスクが高まります。
ここからは、備品や消耗品の管理方法を詳しく見ていきましょう。
どこに何があるのかをわかりやすく明示する
食品製造現場で使用する備品や消耗品は、どこに何があるのか分かりやすく明示しておきましょう。
備品や消耗品の場所を、全従業員に通知してもわかりにくい場所にあったり、似たような備品や消耗品が近くにあったりすると見つけきれないためです。
具体的には、棚や備品を入れておく容器に「保管している備品や消耗品の名称」「数量」を大きく書いて置き、見つけやすくするとよいでしょう。
情報を明示しておくことで、製造現場の従業員が迷うことなくスムーズに備品や消耗品を取りに行けます。
また新しい従業員が製造現場に入っても、情報を明記していればすぐに見つけることができます。
現場に必要な分だけ置いておく
食品製造で使用する備品や消耗品は、必要な分だけ置いておくようにしましょう。
消耗品は、製造現場の規模によっては消費量が多くなることもあります。
しかし製造現場にストック分まで置いてしまうと、作業スペース内で散らかったり、探す手間がかかったりしてしまう恐れがあります。
また、ストックが必要以上にあるとその分コストもかかってしまうでしょう。
一方で少なすぎると、消耗品が足りず、食中毒リスクが高まる恐れがあります。
製造現場に置く備品や消耗品は、製造現場の規模や消費具合に合わせて、必要な時に必要な分だけ補充し、保管しておくことが大事です。
定期的にチェックをする
食品製造現場で使用する備品や消耗品は、保管場所を決めても定期的にチェックするようにしましょう。
一度保管場所を決めても、実際に働いてみると使いづらさを感じたり、よりよい保管場所がみつかったりするためです。
備品や消耗品の保管場所を定期的に回って写真を取り、従業員同士で話し合う場を設けましょう。
従業員同士で話し合うことで、よりよい保管場所を決めたり、備品や消耗品の使い方を工夫したりできるため、結果的に業務効率化に繋がります。
破損しやすい包丁やプラスチック製の備品(計量カップなど)は、ぶつけたり経年劣化でヒビがはいりやすくなるため、使用前後で目視確認が必要です。
まとめ
安全な食品を消費者に提供するには、製造現場の衛生管理が欠かせません。
製造現場を清潔に保つには、適切な備品・消耗品を選び使用する必要があります。
しかし消耗品は1つ1つが安くても毎日使用するものなので、コストがかかるものもあります。
また備品もコスト重視で選んでしまうと、何度も買いなおさなければならなかったり、破損や錆びで食中毒や異物混入などのリスクが高まります。
まとめ
- 製造現場で使用する備品や消耗品は食品衛生法に適したものを選ぶ
- 長く使う備品はメンテナンスがしやすいものを選ぶ
- 備品や消耗品を適切に管理すると衛生管理がしやすくなるだけでなく業務効率も向上する
製造現場で使用するのに不適切な備品や消耗品を選択し、使用すると破損したり、食中毒リスクが高まったりしてしまうため注意が必要です。
また備品や消耗品は定期的にチェックし、補充やメンテナンスを行い、製造現場の衛生管理に努めましょう。
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