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ボツリヌス菌は自然界最強の毒素を持つ菌!特徴や予防方法を解説

ボツリヌス菌は自然界最強の毒素を持つ菌!特徴や予防方法を解説

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「ボツリヌス症ってはちみつを摂取した乳幼児がかかる病気でしょう?」

「ボツリヌス菌食中毒は、日本では発症例はないのでは?」

ボツリヌス菌と聞くと、乳幼児とはちみつをイメージする人が多いかと思います。

しかしながらボツリヌス菌は、酸素の少ない環境下で増殖するという特徴があるため、真空包装された食品や缶詰などが原因でボツリヌス菌食中毒を発症することがあります。

食品を誤った方法で真空包装したり、温度管理を誤ったりすると増殖しボツリヌス毒素が生成されてしまうので注意が必要です。

ボツリヌス毒素は自然界最強の毒素と言われ、大人であっても死に至る可能性があります。

この記事では、ボツリヌス菌の特徴から予防方法までわかりやすく解説します。

安全が保証された商品をお客様に提供するためにも、ボツリヌス菌の正しい知識を身に付けましょう。

ボツリヌス症とは?

ボツリヌス症とは?

ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が増殖するときに生成する毒素が原因で発症する食中毒です。

ボツリヌス症は次の4つの分類に分けられます。

病態名 発症する原因
ボツリヌス菌食中毒(食餌性ボツリヌス症) 食品中でボツリヌス菌が増殖して生成された毒素を喫食し発症
乳児ボツリヌス症 1歳未満の乳幼児がハチミツや黒砂糖などに含まれるボツリヌス菌の芽胞を摂取。腸管内で発芽し発症
成人腸管定着ボツリヌス症 腸内に疾患がある1歳以上の人がボツリヌス菌の芽胞を摂取。乳児ボツリヌス菌と同じメカニズムで発症。
創傷ボツリヌス症 傷口に付着したボツリヌス菌芽胞が発芽、増殖し発症

ボツリヌス症とは|NID 国立感染症研究所

ボツリヌス症は、感染症法の4類感染症の1つで、発症した場合は保健所に届け出る必要があります。

なお、人から人への感染はありません。今回は、ボツリヌス食中毒にスポットを当てて、解説します。

ボツリヌス菌食中毒とは?

ボツリヌス菌食中毒とは?

ボツリヌス菌が食品中に増殖するときに生成された毒素によって、発症する食中毒です。

ボツリヌス菌は土壌や河川、動物の腸管など自然界に広く存在する菌の1つで、熱に強い芽胞を持っています。

ボツリヌス菌の芽胞は、健康な人であれば食しても腸内の自浄作用により発芽することはありません。

しかし、ボツリヌス菌の毒素が生成された食品を食してしまうと、ボツリヌス食中毒を発症します。

ボツリヌス毒素は、非常に毒素が強く脳神経系にダメージを与え、重症化すると死に至ることもあります。

ボツリヌス菌食中毒の症状

ボツリヌス菌食中毒の初期症状は、他の食中毒と同じような症状が現れます。

ボツリヌス菌食中毒の初期症状

  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢
  • 便秘

その後、脳神経系に影響を与え、次のような症状が現れます。

ボツリヌス菌食中毒の脳神経系の症状

  • 複視
  • 嚥下障害
  • 構音障害(正常に言葉を発せなくなる症状)

脳神経に障害が出ているときも、発熱はなく意識もはっきりしています。

重篤化すると筋力低下や呼吸麻痺が起き、処置が遅れると死に至ることもある食中毒です。

ボツリヌス菌食中毒の潜伏期間

ボツリヌス菌の潜伏期間は、通常18時間から48時間と短いのが特徴です。

早いと6時間、遅いと10日後に症状が現れることもあります。

ボツリヌス菌の治療法

ボツリヌス食中毒を発症したら、毒素を中和する抗血清を使用し治療を行います。

なお抗生物質は、ボツリヌス菌を壊した際に、菌内の毒素が流出する恐れがあるため使用を控えます。

ボツリヌス菌食中毒の発生状況

ボツリヌス菌食中毒の直近10年の発生状況は次の通りです。

西暦食中毒事故数患者数死亡件数
2021年 1 4 0
2020年 0 0 0
2019年 0 0 0
2018年 0 0 0
2017年 1 1 1
2016年 0 0 0
2015年 0 0 0
2014年 0 0 0
2013年 0 0 0
2012年 1 2 0
2011年 0 0 0

食中毒統計資料|厚生労働省

国内でのボツリヌス菌による食中毒事故は発症数が少なく、直近10年では7件となっています。

そのうち、死亡例は2017年に東京都で起こった事故は、乳児ボツリヌス症の事例で乳幼児の離乳食にハチミツを使用したことが原因で発症しています。

また2021年7月には、熊本県で原因食材は特定されていませんが、ボツリヌス菌食中毒事故が発生し、発症した2名が言語障害や呼吸困難で入院する事態となりました。

ボツリヌス菌の特徴

ボツリヌス菌の特徴

強い毒素を生成するボツリヌス菌には、次のような特徴があります。

ボツリヌス菌の特徴

  • 酸素がないところで増殖
  • 熱に強い
  • 10℃以下の低温下では増殖しづらい
  • 温度以外にボツリヌス菌が増殖しない条件

ここからは、ボツリヌス菌の特徴について詳しく見ていきましょう。

酸素がないところで増殖

ボツリヌス菌は、嫌気性菌の一種で酸素の少ない土壌や河川の泥砂の中に生息しています。

ボツリヌス菌が低酸素で温度の高い場所にあると、増殖し毒素を生成するので注意が必要です。

一方、酸素がある場所では増殖できません。

またボツリヌス菌の毒素は80℃で20分または100℃で数分の加熱調理で毒性を失うと言われています。

なので食べる直前に加熱することは食中毒予防に有効とされています。

熱に強い

ボツリヌス菌は芽胞を形成する菌です。

ボツリヌス菌は栄養が不足したり、環境が悪化したりすると厳しい環境下でも生き延びるために芽胞を持っています。

一般的な食中毒菌と違い、通常の加熱では死滅しません。

この芽胞は熱に強く、120℃で4分又は100℃で360分以上の加熱による芽胞の完全殺菌が必要です。

最終製品の包装状態によって加熱の温度と時間の条件や保存温度を科学的な根拠を持って見極める必要があります。

10℃以下の低温下では増殖しづらい

ボツリヌス菌にはさまざまな型がありますが、そのほとんどが10℃~48℃の間で増殖します。

このことからボツリヌス菌を増殖を防止するには、10℃以下の適切な温度管理が重要になります。

温度以外にボツリヌス菌が増殖しない条件

ボツリヌス菌はpH4.6未満の酸性下では、増殖しづらくなります。

ただし、それまでに菌が増殖し生成された毒素は分解されないので注意が必要です。

またボツリヌス菌の芽胞は乾燥にも強い性質を持ちますが、食品中の水分活性が0.94未満でも発芽できず増殖しづらいという特徴も持ちます。

ボツリヌス菌食中毒の原因食品

ボツリヌス菌食中毒の原因食品

ボツリヌス菌増殖による毒素は、酸素の少ない環境下と10℃以上の温度、食品の水分含有量が組み合わさったときに産生されます。

このことから、処理が不十分な次の食品を喫食するとボツリヌス菌食中毒を発症するおそれがあります。

ボツリヌス菌食中毒の原因食品

  • 真空包装・缶詰・瓶詰など容器包装に密封された食品
  • pHが4.6を超える食品
  • 水分活性が0.94を超える食品

近年、長期保存が可能な食品が流通しています。

その中でも「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」と低温輸送・保管の表記がされているものは、適切な温度管理が必要なのでご注意ください。

なぜなら、製造時に問題はなくても常温下に長時間置くとボツリヌス菌が増殖し、毒素を産生成する恐れがあるからです。

表示に従い、低温輸送、低温保管をおこない期限内に消費しましょう。

ちなみに、常温で長期保存できるレトルトパウチ食品は、食品を機密性のある容器に入れ密封した後に加圧加熱殺菌をおこなっています。

この加熱加圧殺菌では、熱に強いボツリヌス菌の芽胞が死滅する高温下で十分な加熱がおこなわれるため、常温での輸送・保管が可能です。

なぜ乳児にはちみつを与えてはいけないのか?

なぜ乳児にはちみつを与えてはいけないのか?

1歳未満の乳児にはちみつをあたえると、乳児ボツリヌス症を発症する恐れがあります。

乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の乳児がはちみつや黒糖などの含まれるボツリヌス菌の芽胞を摂取することによって発症します。

ボツリヌス菌の芽胞は、大人が摂食しても腸管の自浄作用により増殖することはありません。

ところが腸管内が未熟で不安定な乳児がはちみつを摂取してしまうと、次のようなメカニズムで乳児ボツリヌス症を発症します。

はちみつから乳児ボツリヌス症を発症するメカニズム

  1. 乳児がはちみつを摂取
  2. ボツリヌス菌の芽胞が腸内で発芽
  3. ボツリヌス菌が増殖し、毒素を出す
  4. 乳児ボツリヌス症の発症

乳児ボツリヌス症を発症すると、次のような症状が現れます。

乳児ボツリヌス症の症状

  • 全身の筋力低下
  • 脱力状態
  • 哺乳力の低下
  • 泣き声が小さくなる
  • 首のすわりが悪くなる

乳児ボツリヌス症の死亡率は3%と低い値ですが、2017年には死亡事故も発生しているので、注意が必要です。

ボツリヌス菌食中毒の予防方法

ボツリヌス菌食中毒の予防方法

ボツリヌス菌は土壌に生育しているため、食材の汚染を防ぐことは困難でしょう。

しかし、ボツリヌス菌が付着している食品を食べても多くの場合、問題はありません。

なぜなら、ボツリヌス菌食中毒は、増殖時に生成される毒素を摂取することにより発症するからです。

ボツリヌス菌に限らず、食中毒の予防には3つの原則の徹底が重要です。

食中毒予防の三原則

  • つけない
  • 増やさない
  • やっつける

具体的な予防方法は次の通りです。

ボツリヌス菌の予防方法

  • 食材を十分洗浄する
  • 保管・流通時の温度管理
  • 調理時の温度管理の徹底
  • 喫食前は十分な加熱調理

それでは1つずつ解説します。

食材を十分洗浄する

ボツリヌス菌は土壌中に生息しているため、食材を扱う際には水で十分洗浄しましょう。

洗浄することで、ボツリヌス菌の菌数を減らせます。

洗浄するだけでは、完全にボツリヌス菌をなくすことはできませんが、使用する食材の菌を少なくしておくことで、増殖のリスクを減らすことができます。

万が一のことを想定しながら、予防策を講じましょう。

保管・流通時の温度管理

ボツリヌス菌は、酸素が少なく10℃以上になると増殖しはじめ、30℃の環境下で最も増殖するとされています。

もし調理済食品を真空包装したときにボツリヌス菌の芽胞が残存しており、温度が10℃以上になってしまうと、増殖しはじめ毒素を排出する恐れがあります。

言い換えると、ボツリヌス菌を増殖させないために10℃以下の環境下の保管・流通時の温度管理を徹底しましょう。

冷蔵が必要な真空包装の原材料を仕入れた後、常温下にそのまま長時間置くと、ボツリヌス菌が増殖してしまう恐れがあります。

調理時の温度管理の徹底

ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を持っており、完全に死滅させるには、120℃で4分又は100℃で360分以上の加熱が必要です。

ただ商品の中には、高温加熱処理をすると品質が保てないものもあるでしょう。

その場合は、生産から消費まで10℃以下で温度管理をすることで増殖を防ぐ方法が望まれます。

冷蔵が必要な真空包装の原材料は、忘れずに冷蔵庫に入れ、庫内の温度が10℃を上回っていないか定期的に確認しましょう。

また、調理後に真空包装をして仕掛かり品を一時保管する場合も速やかに冷蔵庫、冷凍庫に入れて保管をします。

喫食前は十分な加熱調理

ボツリヌス菌の毒素は、内部温度が80℃で20分または100℃で数分の加熱をすると失活します。

そのため、喫食前の加熱は有効とされています。

しかし真空包装で、膨張・異臭のある場合は、既にボツリヌス菌が増殖し毒素を排出してしまっている可能性があります。

この場合は使用しせず廃棄しましょう。

まとめ

まとめ

ボツリヌス菌食中毒は、菌の増殖時に産生されたボツリヌス毒素が含まれた食品を喫食すると発症します。

健康な大人や1歳以上の子どもがボツリヌス菌の芽胞を少量摂取しても食中毒に至ることはありません。

多くの真空包装食品や缶詰食品は、事業所の厳正な温度管理、加熱処理の下で製造されているため、ボツリヌス菌が増殖した食品が流通することは稀です。

しかしながら、加熱や保存の温度管理が不十分だと食品に残存したボツリヌス菌が増殖し、毒素を排出する恐れがあります。

最終製品の包装状態によって加熱の温度と時間の条件や保存温度を科学的な根拠を持って見極める必要があります。

まとめ

  1. ボツリヌス菌は増殖時に毒素が産生される
  2. ボツリヌス菌は酸素の少ない環境下で活発化する嫌気性菌
  3. ボツリヌス菌が完全に死滅させるには加圧加熱処理が必要

ボツリヌス菌は発症数は少ないものの、自然界最強の毒素で神経系に大きなダメージを与えます。

ボツリヌス菌食中毒は正しい知識があれば防げる食中毒です。

この記事を確認し、ボツリヌス菌食中毒の予防に努めましょう。

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