
食品工場における「窓」は、採光や換気など作業環境を整える上で欠かせない設備です。
しかし衛生管理の観点では、窓は虫の侵入やカビの発生、温度・湿度の乱れなど、多くの問題を引き起こすリスクの高い場所でもあります。
近年では、FIX窓や高気密窓といった新しい窓構造や、防虫フィルム・LED照明の活用など、窓まわりの環境改善によって衛生レベルを向上させられる事例も増えてきました。
この記事では、食品工場の窓が抱える具体的な衛生リスクから中小規模工場でもすぐ始められる実践的な対策まで、分かりやすく解説します。
食品工場の窓が抱えるリスク
食品工場では採光・換気を目的に窓が設置されていることも多いですが、衛生管理の視点ではさまざまなリスクを抱える設備でもあります。
主なリスクは次のとおりです。
- 虫・埃などの異物侵入
- 窓枠の隙間や劣化による菌汚染
- 結露によるカビ発生
- 清掃不十分による汚れ蓄積
- 遮熱・断熱不足による温湿度管理の乱れ
それぞれのリスクについて詳しく見ていきましょう。
虫・埃などの異物侵入
窓は虫・ホコリが入り込みやすく、異物混入につながるリスクが高い場所です。
窓を開けたときのわずかなすき間からゴキブリやハエなどの虫が入ってしまうと、直接製品に混ざったり、排泄物によって細菌汚染を起こす可能性があるためです。
ホコリは窓枠のたまりやすい部分に積もり、風で舞って食品に付着する恐れがあります。
また窓を開けている時間が長いと外からの光に虫が引き寄せられやすくなり、壁の破損部分からネズミが出入りしてフンが混入した事例も多く報告されています。
窓枠の隙間や劣化からの菌汚染
食品工場の窓枠のすき間や劣化部分は、菌が入り込む大きなリスクになります。
たとえ1mmほどの小さなすき間でも、ゴキブリやハエが侵入し、排泄物や死骸に付着したサルモネラ菌・大腸菌などがホコリと一緒に食品へ移ってしまうことがあるためです。
さらに、窓枠が古くなって腐食したり、表面が剥がれたりするとカビが発生しやすくなり、カビの胞子が結露に溶け込んで壁を伝って流れ落ち食品を汚染する危険もあります。
厚生労働省の基準では「ホコリがたまらない構造」が求められていますが、すき間にたまったホコリは風で舞い上がりやすく、菌が食品に移るリスクがあります。
結露によるカビ発生
窓まわりは室内外の温度差で結露が生じやすく、水滴にホコリや汚れが付着するとカビが繁殖する可能性があります。
増えたカビが窓表面からはがれて食品に混入したり、胞子が空気中に広がる危険があるためです。
中小規模の工場では湿気がこもりやすく、結露が発生しやすい環境が見られます。
清掃不十分による汚れ蓄積
食品工場の窓まわりは、普段の清掃が行き届きにくい場所です。
そのため、ホコリや油汚れ、食品の細かいカスが窓枠や網戸にたまりやすく、表面がベタついてゴミや虫の死骸がくっつき、悪臭の原因にもなります。
これらの汚れは虫にとって「えさ」になるため、ハエや蚊が寄りつきやすくなり、繁殖を助けてしまうことがあるため注意が必要です。
中小規模の食品工場では、人手不足や作業量の多さから、窓まわりの拭き掃除が後回しになりがちです。
その結果、網戸の細い繊維に汚れが絡みつき、簡単には取れなくなってしまいます。
こうしてたまった汚れは、風や作業動作の影響で空気中に舞い上がり、製造ラインに飛んでしまうことで、異物混入の原因になる恐れがあります。
遮熱・断熱不足による温湿度管理の乱れ
食品工場の窓に遮熱・断熱の機能が足りないと、夏は太陽の熱がガラスを通して工場内に入り込み、室温が外気より高くなることがあります。
逆に冬は、室内の暖かい空気が窓から逃げてしまい、急に室温が下がることがあります。
このように温度が大きく変動すると、工場内の温度・湿度のバランスが崩れ、食品の品質が落ちたり、細菌が増えやすくなったりするリスクが高まります。
中小規模の食品工場が今すぐ取り組める窓対策
食品工場において「食品工場の窓をリニューアルしたい」「食品工場を新築したい」と思っても、中小規模の食品工場では、なかなか実現が難しいかもしれません。
リニューアルにしろ、工場を新築するにしろ、時間もお金もかかります。
しかし、窓対策の中には低予算で今からすぐ取り組めるものもあるので、ご安心ください。
ここからは、中・小規模の食品工場が今すぐ取り組むことができる窓対策をご紹介します。
日常清掃の徹底
窓は食品工場において、虫が入り込みやすい代表的な場所です。
特に網戸のすき間や破れがあると、ハエなどの飛ぶ虫が簡単に侵入してしまいます。
日常清掃では、まず窓枠や網戸にたまったホコリや食品カスを、やわらかいブラシと中性洗剤を使ってていねいに取り除きましょう。
その後、網戸は細かい網目まで水でよく洗い、しっかり乾かしてください。これにより、虫の付着物や卵を取り除き、発生源を断つことができます。
週1回は徹底した清掃を行い、その記録を残しておくと、HACCPの監査にも対応しやすくなります。
窓の隙間・侵入経路の封鎖
窓枠のひび割れやゆがみがあると、たった1mmの隙間からでも虫が侵入するため、早めの補修が必要です。
よって、すき間を早めにふさぐことがとても重要です。
窓枠まわりにひび割れやゆがみがないかを目で確認し、市販のシーリング材(コーキング)でしっかり埋めていきます。
防カビタイプで耐久性のあるものを選び、ヘラで平らになるように伸ばしてから、24時間ほど乾かしてください。
また換気が必要な場合は、締め忘れを防ぐために「自動で閉まる窓」を使用すると効果的です。
搬入口付近では、防虫エアカーテンを併用すると侵入をさらに抑えられます。
網戸の選び方
通常、窓には網戸が設置されていますが、網目の細かさ(メッシュ)に種類があるのをご存じでしょうか。
メッシュとは、網の目のことで、「1インチあたりの網目の数」を指します。
メッシュの数が大きくなればなるほど、網目が細かいということになります。
| メッシュ数 | 網目の大きさ | 防げるもの | 用途 |
|---|---|---|---|
| 16メッシュ | 約1.2㎜ | ハエ・蚊 | 一般的な住宅用。通風性が高い |
| 18メッシュ | 約1.0㎜ | 蚊・小さな虫 | 標準的でバランスが良い |
| 20メッシュ | 約0.9mm | 蚊・コバエ | 虫対策を少し強化したい場合 |
| 24メッシュ | 約0.8mm | コバエ・チョウバエ | 室内侵入を減らしたい家庭向け |
| 30メッシュ | 約0.6mm | ユリスカ・微小昆虫 | 虫対策重視(通風やや低下) |
| 40メッシュ | 約0.4mm | さらに小さな虫 | 工場・食品関連施設向け |
一般的な網戸は18~24メッシュですが、これだと体長1~2mm程度の小さな虫は侵入してきてしまうため、食品工場の網戸には向いていません。
食品工場の窓に設置する網戸は、40メッシュを選ぶと安心です。
また網戸の中には、虫が嫌う忌避剤が塗られたものもありますが、これはあくまでも補助対策として取り入れましょう。
網戸の忌避剤の寿命は長くても1年と非常に短いためです。
食品工場では強い寒気や蒸気、洗剤・アルコール清掃により忌避剤の寿命は、さらに短くなることが予想されます。
また忌避剤入りの網戸を使用する場合は、SDSを入手し、食品工場で使用しても問題ないか確認するのを忘れないようにしましょう。
忌避剤入りの網戸を使用するよりも、細かいメッシュの網戸を使用した方が、防虫対策の効果が期待できます。
ただし、メッシュが細かい網戸は、ほこりが目詰まりしやすくなるため、こまめの掃除が大切です。
さらに、すき間にはモヘアパイルと呼ばれるテープを入れて密着させると、虫の入り込みをほぼ防げます。
照明・換気の工夫
窓まわりの照明には、虫を引き寄せる紫外線を出すタイプだけでなく、低誘引LEDランプや「マジックオプトロンLED」などの虫が寄りにくい照明もあります。
虫は紫外線に強く反応するため、屋外の照明も同様に交換すると効果が高まるためです。
光漏れ防止フィルムを貼ると、屋外への光漏れを減らし、虫の侵入をさらに抑制できます。
大成ファインケミカル株式会社の検証では、飛ぶ虫の侵入を約80%抑えられたと報告されています。
換気口には目の細かい高性能メッシュフィルターを取り付け、外気を取り入れる際に虫が入り込まないようにしましょう。
まとめ
食品工場の窓は汚染された外気が直接入ってくるだけでなく、虫の侵入や菌汚染、結露によるカビ発生など、衛生リスクが集中しやすい場所でもあります。
特に窓まわりのすき間や網戸の劣化、清掃不足は、異物混入や食中毒事故につながるおそれがあります。
こうしたリスクを抑えるためには、日常的な清掃や防虫対策を継続して行うことが重要です。
まとめ
- 食品工場の窓は虫・菌・カビの侵入リスクが高い
- 細かいメッシュの網戸(40メッシュ)や隙間封鎖で物理的に侵入を防ぐ
- 忌避剤や照明対策は補助策として組み合わせることが重要
食品事業者は、窓まわりを「後回しにしがちな場所」とせず、日常管理の一部として位置づける必要があります。
小さな対策の積み重ねが、異物混入や衛生トラブルの防止につながります。
安全で信頼される食品づくりのためにも、窓から始める衛生管理を徹底していきましょう。
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