食品製造現場で毎日のように使用する温度計ですが、今まで校正をしたことがないという現場も多いのではないでしょうか。
温度計の校正はメーカーが行うものだと決めつけ、自社で取り組んでいない食品事業者もあるかもしれません。
温度計は長期間使用すると電池の摩耗や劣化、破損により正確に計測できなくなったりするので、自社でも誤差がないか定期的に校正しましょう。
この記事では、自社でできる温度計の校正の仕方や校正の必要性を解説します。温度計の校正を自社で徹底すれば、誤差をいち早く見つけられ食中毒などの事故を未然に防ぐことができるでしょう。
温度計校正の仕方は?4つの校正方法をご紹介
食品製造における品質管理に欠かせない温度計などの測定機器は、定期的な校正をしましょう。
なぜなら、温度計の測定機器は長期間使用しているうちに、劣化したり壊れたりするケースは多く、気づかないうちに測定値に誤差が生まれてしまうことがあるからです。
メーカーに依頼して温度計を校正する方法もありますが、基本的には自分たちで行う方法で問題ありません。
自分たちでできる温度計校正の仕方には次の4つの方法があります。
校正方法1:熱湯や氷水を使って校正を行う
熱湯は常に100℃を、氷水は0℃を指す性質を利用して校正を行う方法です。
熱湯は電気ケトルで沸かしたお湯を用意し、氷水は細かく砕いた氷を水に入れてしばらく放っておいたものを使い、温度を計測します。やかんは直火による放射熱の影響を受けるので、電気ケトルを使うのがおすすめです。
それぞれ100℃、0℃が基準になるので、プラスマイナス1度を指せば温度計の精度に問題はありません。
費用もかからず、手軽に行える方法ですが、環境に左右されることが多く、目安の点検として行うのがおすすめです。
校正方法2:複数の温度計で比較する
温度計を複数用意し、同じ環境条件(沸騰させたお湯、氷水)のもとで計測する方法もあります。
例えば2本の温度計で同じ商品の表面温度を測定したときに、それぞれ違う数値を指したら、どちらの温度計の精度に問題があるのかわかりません。
したがって3本以上(できれば4本以上あるとベター)の温度計を使うと、異なる数値が表示された温度計は精度に問題があると判断できます。
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校正方法3:すでに校正されてる標準温度計を使う
標準温度計を使い、使用している温度計の測定値が正しいかどうか調べるのも1つの方法です。
標準温度計とは精度が高く、温度計の校正に使われる温度計のこと。
トレーサビリティ、校正証明書付きのタイプであれば、安心して使えますが、高額のものが多いです。しかし、食品工場のCCPの温度計測や校正に使用する場合は、精度の高さが求められるので、標準温度計の使用がおすすめです。
校正証明書付きの標準温度計をお求めの方はこちらをご覧ください。
ただし、標準温度計も普通の温度計と同じように校正が1年に一度ほど必要となり、その場合はメーカーに依頼する必要があることを知っておきましょう。
校正方法4:校正方法4:毎年新品の温度計を購入する
新品の温度計を標準温度計代わりに利用する方法もあります。
温度計はメーカーから出荷される前に校正され、多くの場合1年ほどの保証期間があります。
その期間中は測定値の精度が保証されるため、標準温度計としての利用が可能です。
期間が終わったら通常の温度計として使用します。
実際に使う際には他の温度計と見分けがつくように、ラベルなどをつけておくとよいでしょう。
許容される温度の誤差範囲は±1℃が目安
食品製造の際に使用するにあたって、温度計の精度には寸分の狂いも許されないというわけではありません。
しかし校正を行う人それぞれの感覚に任せると「1℃の誤差も許されない」、「5℃くらいなら誤差があっても大丈夫」などバラバラになってしまうおそれがあります。
とくに決まりはありませんが、食品事業者の場合は±1℃の誤差を許容しているところが多いです。
誤差の範囲は、計測したい温度の基準と整合性が取れるようにします。
例えば、75℃1分間の加熱が必要な食品の温度計の誤差が1度だった場合、+1度であれば76℃で問題ありませんが、-1度になると74℃になるため食品が加熱不十分になる恐れがあります。
誤差の範囲はどこまで許容されるのか決めておき、あらかじめスタッフへ周知しておくとよいでしょう。
温度計校正を行う頻度・タイミング
温度計を使う頻度や、計測する対象などによっても異なりますが、月に1回以上の頻度で行うのをおすすめします。
可能であればできるだけ高い頻度で行う方が温度計の精度が落ちていることに早く気づけます。
始業前や曜日などタイミングを決めて、前述した「熱湯と氷水を使う方法」や「複数の温度計を使う方法」など簡易的な方法で行うことをルールにしておくと従業員の負担軽減になるのでおすすめです。
校正を実施したら必ず記録を残しておきましょう。その際には、表示された温度計の温度を記載します。
温度計校正を怠るとどうなる?考えられるリスク
温度計の校正を怠ったとしても、何らかの不具合やデメリットが直ちに発生するわけではないとお考えかもしれません。
しかし校正を怠り、温度計の測定値の精度が低下していることに気づかないまま使い続けていると、以下のような思わぬリスクが発生することがあります。
正しい温度の測定・記録ができない
温度計校正を怠り、精度が下がったまま使い続けていると、温度を正しく測定・記録できません。
HACCPにおいて、温度管理や記録は重要な項目として挙げられていますが、誤った計測値では記録が有効でなくなってしまいます。
つまり、万が一 製品に何らかのトラブルなどが起きた場合、温度管理の記録が意味を持たず原因究明できないなどのおそれもあります。
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食品事故につながるおそれがある
精度が落ちた温度計を使っていると、食品事故につながるおそれがあります。
たとえば食中毒対策のために「90℃で2分間」加熱するよう設定されている場合、使用する温度計の精度が低くなっていると実際の温度は80℃なのに90℃と表示されてしまうことがあるかもしれません。
すると 規定通りに加熱されなかったのでできずに菌が死滅せず、その結果として食中毒事故を引き起こすことも考えられます。
とくに大規模な食品工場の場合には大きな事故になりかねないため、注意が必要です。
商品回収のリスクがある
温度計の精度の低下は、出荷した商品を回収しなければならない事態を招くおそれもあります。
万が一商品に何らかのトラブルが生じた場合、製造工程をさかのぼり、温度管理が適正だったかなどチェックを行います。
しかし、温度計に誤差が生じていたことが判明すると、その計測が正しかったのか確認をとることができません。
その結果、その商品が安全かどうかきちんと確認がとれるまで出荷できず、もしすでに出荷している商品がある場合、その商品に食中毒が発生する恐れがあるためは回収しなければならなくなってしまいます。
製造した商品を出荷できない、回収するなどの事態になると、被る損失も決して小さいものではなくなってしまいます。
まとめ:定期的に温度計校正を行い、安全な食を提供しよう
食品事業者にとって、温度管理は製品の安全性に直結します。
そして適切な温度管理をする上で、温度計の校正は欠かせない点検です。
普段の業務に組み込み、従業員にもその重要さを周知しておく必要があります。
まとめ
- 温度計の校正は自社で行うことが可能
- 簡易的な温度校正でも頻回に実施すれば故障や劣化にいち早く気付ける
- 温度計の本体と電池の予備を準備しておく
- 温度計の校正は衛生管理や安全管理の面からも非常に重要
食の安全を確保するため、 定期的に温度計の校正をきちんと行い、常に正しく温度を測定できるようにしておきましょう。
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