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PFAS・PFOS・PFOAとは?食品事業者が今すぐ確認すべきリスクと対応策

PFAS・PFOS・PFOAとは?食品事業者が今すぐ確認すべきリスクと対応策

水の管理

衛生管理

「PFAS」という言葉をニュースで見かけるようになったものの、食品製造との関係がよくわからないという事業者の方も多いのではないでしょうか。

PFASは製造用水や食品原料を介して製品へ混入するリスクがあり、国内では令和7年から令和8年にかけて水質規制が相次いで強化されています

この記事では、PFASの基礎知識から国内の検出状況、食品事業者が取るべき具体的な対応策までをわかりやすく解説します。

PFAS・PFOS・PFOAとは?食品事業者が押さえるべき基礎知識

PFAS・PFOS・PFOAという言葉を、ニュースや行政の通知で目にする機会が増えています。

しかし「環境問題の話であって、自社の食品製造には直接関係ない」と感じている事業者の方も多いのではないでしょうか。

実際には、製造用水や食品原料を介した混入リスクとして、食品事業者にとっても無視できない課題となっています

まずはPFASとはどのような物質なのか、PFOS・PFOAとの関係性とあわせて基礎から整理します。

PFASとはどのような物質か

PFASとは、炭素とフッ素が強固に結合した有機フッ素化合物の総称で、その種類は1万種類以上にのぼります。

撥水・撥油性や熱・薬品への高い耐性から、撥水剤や半導体用反射防止剤、泡消火薬剤など幅広い用途で世界中で使用されてきました。

しかしその安定性の高さゆえに、自然界でほぼ分解されない「難分解性」と、生物体内に蓄積しやすい「高蓄積性」という重大な性質を持っています。

一度環境中に放出されると土壌や水環境に長期間残留し、食物連鎖を通じて飲料水や食品を汚染するリスクから、人体への健康影響を懸念する声が近年世界中で高まっています。

直近では、沖縄県の宮古島や石川県の河川で基準値以上のPFASが検出されたことが話題となっています。

PFOS・PFOAとPFASの違いと関係性

PFASの中でも代表的な物質がPFOSとPFOAです。どちらも優れた特性から長年にわたり幅広く使用されてきましたが、難分解性・高蓄積性のリスクから国際的なPOPs条約で規制対象となり、日本でも化審法により製造・輸入が原則禁止されました

現在も過去に排出されたものが水源から検出されるケースがあり、私たちの日常生活を守るうえで正確な現状把握が求められています。

PFOS PFOA
物質名 ペルフルオロオクタンスルホン酸 ペルフルオロオクタン酸
主な過去の用途 半導体用反射防止剤、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤など フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤など
POPs条約の分類 2009年に「制限」対象物質に分類 2019年に「廃絶」対象物質に分類
国内の規制(化審法) 2010年に第一種特定化学物質に指定、原則禁止 2021年に第一種特定化学物質に指定、原則禁止

なぜ食品事業者にとって無視できないのか

過去に環境中へ排出されたPFOSやPFOAは、今なお地下水や河川から検出されることがあります。製造用水や食品原料を介して製品へ混入するリスクも否定できず、衛生管理担当者にとって見過ごせない課題です。

こうした状況を受け、国内では規制・監視体制の整備が進んでいます。

農林水産省は国産農畜水産物の含有実態調査を継続実施し、内閣府食品安全委員会は令和6年6月に「評価書 有機フッ素化合物(PFAS)」を公表して食品健康影響評価を行いました。

水質や原材料のリスクを適切に管理するためにも、最新の動向を正確に把握しておくことが重要です。

日本国内における飲料水・製造用水のPFOS・PFOA基準値

PFOS・PFOAをめぐる国内の水質規制が、令和7年から令和8年にかけて相次いで強化されています。

水道水・河川・地下水・食品製造用水と、規制の対象範囲は幅広く、食品事業者にとって他人事ではありません。

「うちは水道水しか使っていないから大丈夫」と思っていても、製造用水の管理基準や原料の安全確認など、見直すべき点は多くあります。

ここでは、各水源ごとの基準値と規制の内容を整理します。

水道水の暫定目標値から水質基準への格上げ(2026年4月施行)

国内の水道水におけるPFOS・PFOAへの対応が、大きな転換期を迎えています。

これまでは令和2年に設定された合算値50ng/L以下という「暫定目標値」で管理されてきましたが、令和7年6月30日の省令公布を受け、令和8年4月1日からは「水質基準項目」へ格上げされます

これにより水道事業者には、定期的な水質検査の実施と基準値の遵守が法的に義務づけられることになります。基準値はPFOSとPFOAの合算値で0.00005mg/L(50ng/L)以下です。

食品安全と直結する水質管理において、この法的な格上げの意味を正確に捉え、自社のリスク評価を見直すことが求められます。

▼参照
「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について | 報道発表資料 | 環境省

河川・地下水の指針値

水道水だけでなく、工場周辺の河川や地下水への監視も厳しくなっています。

公共用水域・地下水におけるPFOS・PFOAは、これまで「暫定目標値」として合算50ng/L以下の指針が示されていましたが、今般の規制動向のなかでより明確な「指針値」へ格上げされることになりました

特に注意が必要なのは、河川水や井戸水を自家水源として使用しているケースです。公的な水道水と異なり、自社で地下水等を取り扱う場合は、その取水源自体が監視対象となるリスクを正しく認識する必要があります。

HACCPの危害要因分析においても、取水源の状況把握は不可欠です。指針値を明確なリスク管理の指標として捉え、自主的な水質検査や活性炭ろ過等の低減措置を検討しましょう。

ミネラルウォーター類の規格基準改正と対応期限

令和7年6月30日に食品衛生法に基づく規格基準が改正され、殺菌・除菌を行うミネラルウォーター類の成分規格として、PFOS・PFOAの合算値0.00005mg/L(50ng/L)以下が法的義務となりました。

他の清涼飲料水も製造基準上、連動して規制対象となります。施行は令和7年6月30日ですが、令和8年4月1日以前に製造・輸入された製品には経過措置が設けられています。

また、食品製造用水(水道水以外)についても、義務化ではないものの合算値50ng/Lを参考とした自主的な濃度管理や低減措置への努力義務が通知に明記されており、自社の使用水リスク評価を見直す重要な契機となっています。

▼参照
「ミネラルウォーター類のPFOS及びPFOAに係る規格基準」に関するQ&A│消費者庁

国内のPFOS・PFOA検出状況

PFOS・PFOAは「過去の問題」ではなく、今も国内の水環境や食品から検出が続いています。

環境省や農林水産省による調査では、地下水・河川だけでなく、農畜水産物への含有実態も明らかになってきました。

自社の取水源や取り扱う原材料にリスクがないか判断するためにも、国内の検出状況を正確に把握しておくことが重要です。

ここでは、水道水・地下水と食品それぞれの検出状況を整理します。

水道水・地下水での検出状況

国内でのPFOS・PFOA検出は、過去に環境中へ排出されたものが今も残留しているケースが主です。

環境省が令和元年度から令和3年度に実施した延べ1,477地点の水質測定では、指針値を超過した延べ139地点が主に都市部およびその近郊に集中している傾向が確認されています。

また令和2年度に排出源となり得る施設周辺等143地点を対象とした全国調査では、12都府県の21地点で指針値を超過し、最大で合算値5,500ng/Lという高濃度が検出された例も報告されています

その背景として、PFOS等を含む泡消火薬剤を使用した施設が今も市中に残っていることが挙げられており、空港や米軍基地の周辺、消火訓練が行われた場所などとの関連性が指摘されています。

▼参照
環境省│PFOS、PFOA の国内の検出状況

食品中の検出状況と農林水産省の実態調査

農林水産省は、食品中のPFAS含有実態や農業環境からの移行に関する情報収集を進めています。

これまでの予備調査を通じて、一般的な食生活では魚介類が主たる摂取源と推定され、令和3~4年度には水産物を対象とした予備的な実態調査が実施されました。

令和6年度にはリスク管理措置の必要性を検討するため、ばれいしょ・キャベツ・コメなどの農産物、牛肉・豚肉・鶏卵などの畜産物、マイワシ・カツオなどの水産物を対象とした含有実態調査が実施されました。

▼参照
農林水産省│令和6年度国産農畜水産物のPFAS含有実態調査の結果について

水産物など一部の食品にはPFASの含有が確認されましたが、通常の食生活において食品を通じて摂取するPFASの量は安全基準(TDI)と比較して十分に少なく、現時点では健康影響が生じる状況にはないと考えられています。

この取り組みは継続的なものであり、令和7年度も新たな品目を対象とした調査が進められています。

自社が取り扱う原材料に該当するカテゴリがあれば、最新の調査結果を確認しておくことが重要です。

食品事業者・製造現場が取るべき対応策

PFASへの規制強化が進むなか、「何をすればよいかわからない」という事業者の声も少なくありません。

対応の優先順位は、使用水の安全確認、基準値超過時の対処、そして設備や包装資材由来のコンタミリスクの把握の3点です。

いずれもHACCPの危害要因分析と直結する内容であり、「確定してから動く」のではなく、疑いの段階でリスクを洗い出し、先手を打った対応を取ることが重要です。

ここでは、現場で取るべき具体的な対応策を整理します。

使用水の自主検査と確認ポイント

令和8年4月以降、水道水を使用する事業所では水道事業者による検査義務が生じますが、井戸水や地下水などを使用している場合は、事業者自身による自主検査と安全管理の努力義務が求められます。

民間の分析機関へ依頼する際は、対象とするPFASの種類・定量下限・価格・納期が機関によって異なるため、事前の確認が欠かせません。

また、PFASは理化学機器や衣服・化粧品にも使用される物質であることから、周辺環境による汚染対策がなされているかどうかも確認ポイントです。

なお、農林水産省のウェブサイトでは食品中のPFAS受託分析を行う分析機関一覧が公表されており、依頼先の選定に活用できます。

▼参照
食品中のPFASの受託分析を行っている分析機関一覧(2026年1月)│農林水産省

基準値を超えた場合の対応と行政への相談窓口

水道水については、令和8年4月1日から水質基準項目が52項目に改正され、PFOS・PFOAの合算値50ng/L以下という基準が義務化されています

一方、水道水以外の食品製造用水(井戸水など)については、この52項目の水質基準は適用されず、PFOS・PFOAの規格基準(義務基準)は現時点では設定されていません。

ただし、厚生労働省・環境省の通知により暫定目標値(50ng/L)が示されており、これを踏まえた濃度管理や、超過時の水源切替などの低減化措置が求められています。

自主検査でこの目安を超えた場合は、代替水源への切り替えや活性炭処理設備の導入を検討しましょう。

自社だけで判断せず、行政の相談窓口を活用することも重要です。

相談先は業態によって異なるため、まずは事業所を管轄する保健所(食品衛生法上の営業許可元)または都道府県の生活衛生担当課に相談するのが基本になります。

地下水汚染そのものに関する相談は、環境省または都道府県環境部局が窓口です。

なお、自社がミネラルウォーター類の製造も行っている場合は規格基準を所管する消費者庁食品衛生基準審査課、国産農畜水産物を扱う場合はその含有実態調査を行う農林水産省消費・安全局食品安全政策課が、それぞれ追加の相談先となります。

包装資材・設備におけるPFAS混入リスクの確認

PFASのリスクを洗い出す際は、水や原材料だけでなく、周辺環境や設備由来のコンタミリスクへの理解も欠かせません。

PFASは理化学機器や分析用消耗品、作業者の衣服・化粧品にも含まれる場合があり、意図せず微量が混入して分析結果に影響を及ぼすおそれがあります。

また、自社工場の防災設備にも注意が必要です。過去の消火訓練等で使用されたPFOS等を含む泡消火薬剤が、現在も設備内に残留しているケースがあります。

万が一漏出した場合、地下水や近隣の公共用水域を汚染する致命的な危害要因となりかねません。

自社が保有する防消火設備に規制対象の薬剤が含まれていないか、仕様や保有履歴を早急に確認しておくことが重要な対応策です。

まとめ

PFASは難分解性・高蓄積性という性質から、環境中に放出されると長期間残留し、製造用水や食品原料を介して製品へ混入するリスクがあります

国内では令和7年から令和8年にかけて水質規制が相次いで強化されており、食品事業者にとっても他人事ではありません。

まとめ

  • PFASは1万種類以上ある有機フッ素化合物の総称で、PFOS・PFOAはその代表的な物質
  • 令和8年4月から水道水のPFOS・PFOA基準が法的義務へ格上げ
  • 井戸水・地下水を使用している場合、法的な検査義務はないが、国の通知に基づき濃度管理・自主検査が要請されている

食品の成分規格としてPFASの法的要件が定められているのは、2026年6月時点でミネラルウォーター類のみです。

ただし水道水や公共用水域・地下水などの水環境については、すでに法的な基準値(PFOS・PFOA合算で50ng/L以下)が設定されています。

しかし、食品製造用水として使用している水道水や井戸水などは、環境の変化により水質が変わる可能性があります。

食品事業者は、PFASに関する知識は持っておき、最新情報を入手しておきましょう。

「確定してから動く」のではなく、疑いの段階でリスクを洗い出し、先手を打った対応を取ることが、食品事業者としての信頼につながります。

自社の取水源や設備の状況を今一度確認し、必要に応じて行政の相談窓口も積極的に活用しましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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