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TCS食品とは?危険温度帯と正しい冷却・保存方法をやさしく解説

TCS食品とは?危険温度帯と正しい冷却・保存方法をやさしく解説

食中毒対策

衛生管理食中毒

TCS食品とは、時間と温度の管理が特に重要な“デリケートな食品”のことです。

わずかな管理ミスでも細菌が急増するため、日本のHACCPでも調理・冷却・保存まで一貫した温度管理が欠かせません。

この記事では、TCS食品の特徴や該当する食品、扱い方から冷却プロセスまでをわかりやすく解説します。

安全な食品提供のためにも、基本事項をあらためて確認しておきましょう。

TCS食品とは?日本の衛生管理での位置づけ

TCS食品とは「Time / Temperature Control for Safety(安全のための時間・温度管理)」のことで、食品の安全を守るために、温度と時間を適切に管理する考え方です。

一方で非TCS食品とは、塩漬けやシロップ漬け、ジャムなど時間と温度をそこまで厳密に管理しなくても食中毒リスクの低い食品を指します。

項目 TCS食品 非TCS食品
定義 時間と温度の管理が必要な食品 時間・温度管理の影響を受けにくい食品
食中毒リスク 高い 低い
管理温度 5℃以下または60℃以上 常温可(商品による)
常温放置 原則NG 可能なものが多い
保存期間 短い 比較的長い
HACCPでの扱い 重点管理対象 一般衛生管理
代表例 弁当、惣菜、加熱後の肉・魚、乳製品 米、乾麺、砂糖、未開封の缶詰

これは食品が細菌やウイルスに汚染されたり、増殖したりしないようにするための基本となる概念で、特に水素イオン濃度 (pH) や水分活性(Aw)だけでは増殖を抑えきれない食品で重要になります。

アメリカの FDA Food Code ではTCS食品を管理するルールを以下のように定めており、国際的な枠組みとして定着しています。

  • 5℃以下で冷蔵
  • 57℃以上で保温
  • 調理後は4~6時間以内に使用

また、pH とAwの組み合わせでTCS食品かどうかを判断する基準も定めています。

この概念は日本のHACCP制度でも活用されており、厚生労働省のガイドラインに取り入れられています。

日本の基準(要冷蔵・高リスク食品)との関係

日本では「TCS食品」という用語は一般的ではなく、食品衛生法やHACCPガイドラインの中では「要冷蔵食品」「高リスク食品」といった表現で示されています。

これらは温度管理が必須となる食品をまとめた分類で、加熱調理済食品の冷却基準として、

  • 30分以内で中心温度20℃付近
  • 60分以内で中心温度10℃付近

など、明確な基準が設けられています。

日本とアメリカの温度設定には違いがありますが、実質的には同じ考え方といえます。

TCS食品が食中毒リスクを高める理由

2024年の国内の食中毒発生は1,037件・14,229人と前年より増加しています。原因として特に多かったのは以下の通りです。

  • ノロウイルス(8,656人・60.8%)
  • ウェルシュ菌(1,889人・13.3%)
  • カンピロバクター(1,199人・8.4%)

これらの病原体は 水分と栄養が豊富な食品で増殖しやすい という特徴があります。

TCS食品のようにpH4.6より高く、水分活性が0.85以上ある食品 が 5~57℃の危険温度帯 に置かれると、微生物が急速に増殖するリスクがあります。

TCS食品に該当する食品

TCS食品に該当するのは、日本の「高リスク食品」「要冷蔵食品」とされる食品とほぼ同じです。 具体的な商品は次の通りです。
肉類 牛肉・豚肉・鶏肉
牛乳・乳製品
鮮魚・甲殻類・貝類
野菜・果物 大豆製品・茹でたジャガイモ・スプラウト・かいわれ・もやし・スライスしたメロンやカット生野菜
その他 ごはん・生ニンニクをつけたオイル

TCS食品の特徴

TCS食品は Aw0.85以上、水分が多く栄養価が高いため、細菌が増えやすい性質があります。

特にAw0.92以上では増殖速度がより速くなり、厳しい温度管理が必要です。

また、肉・魚・乳製品・卵などタンパク質を多く含む食品が多く、pHが中性に近いほど細菌の増殖が活発になります。

加熱調理後の食品は、調理中に内部に菌が入り込みやすく、冷却・保存を誤ると爆発的に増殖することがあります。

食中毒統計からわかる特に注意すべきTCS食品

2024年の食中毒統計のデータを見ると、まず注意したいのが鶏肉です。カンピロバクターによる患者数が最も多く、中心温度75℃で1分以上の加熱が必須となります。

その他、注意したいTCS食品は次の通りです。

特に注意すべきTCS食品

  • 貝類・魚介類:ノロウイルスが多い。二枚貝は濾過摂取でリスク上昇
  • 卵・卵加工品:サルモネラに注意
  • 乳製品・加熱後食品:リステリアが問題となり、妊婦・高齢者は重症化しやすい
  • カット野菜・もやし:腸管出血性大腸菌(EHEC)リスクが高い

これらのTCS食品は、とくに管理の優先度が高く、日々の衛生管理でリスクを下げるために最も注意すべき食品といえます。

TCS食品を安全に提供するために必要なTT管理

TCS食品を安全に提供するためには、適切な頻度で食品の中心部もしくは保管している冷蔵・冷凍庫の温度を測り、記録する必要があります。

なぜなら、記録を確認しながらTCS食品が一定時間、危険ゾーン内の温度にならないよう、冷却・再加熱する必要があるからです。

食品を温度(Temperature)と時間(Time)を組み合わせて、食品の品質と衛生を守る管理をTT管理と言います。

適切なTT管理を行うとTCS食品で増殖しやすい食中毒菌も抑制することができます。

危険ゾーン(5~57℃)とは

危険ゾーンとは、5℃を超えて57℃未満の温度帯のことで、この範囲では食中毒菌が非常に増えやすくなります。

菌の増殖は温度だけでなく、その温度にどれだけの時間さらされていたかによって決まり、しかも増え方は指数関数的に進みます。

そのため、温度を測るだけでは十分ではなく、その温度にとどまった時間を記録する「TT管理」が欠かせません。

危険ゾーンに長く置かれた食品は、菌が急速に増えるためリスクが一気に高まります。

TCS食品の調理・再加熱の温度基準

TCS食品を調理するときの適切な温度

TCS食品は適切な温度で調理することで、細菌や食中毒菌を死滅させることができます。

とくにTCS食品を加熱調理する場合は、食品の中心温度が適切な温度帯に達しているかどうかを確認しましょう。

また、交差汚染しないよう洗浄・消毒された調理器具を使用し、一度使用した調理器具は、再利用せず調理のたびに1回1回洗浄・消毒をします。

TCS食品ごとに調理するときの適切な温度を以下にまとめました。

調理時の適切な温度TCS食品とその調理法
73.8℃(165°F) ・鶏肉・ソーセージ、ウィンナー(加熱調理した食品を2時間以内に再加熱)
68.3℃(155°F)
  • ひき肉
  • 卵(再加熱するとき)
62.7℃(145°F)
  • ローストビーフ
  • 魚介類
  • 卵(調理するとき)
57.2℃(135°F)
  • 果物、野菜、穀物の再加熱
  • 製造されたTCS食品の再加熱(ただし2時間以内)
5℃以上~57.2℃(41°F~135°F) 危険ゾーン
※食中毒菌が増殖しやすい温度帯※
5℃以下(41°F以下) 調理済の食品を冷蔵・冷凍食品

原則として、TCS食品は2時間以内に適切な温度帯にコントロールする必要があります。

冷たい食品の場合、安全な温度帯は5℃以下。熱い食品の場合、74℃以上です。

また冬場の寒い時季であっても、TCS食品を常温で放置するのは厳禁です。

TCS食品に該当する食材を入荷したときには、食中毒菌が増殖しないよう、冷蔵庫や冷凍庫にすばやく保管するようにしましょう。

TCS食品の冷却プロセス

加熱調理したTCS食品を常温で放置すると、ウェルシュ菌などが加熱で死滅せずに残り、20~50℃の危険温度帯で一気に増殖してしまいます。そのため、リスクが非常に高くなります。

HACCPの指針では、加熱終了後 30分以内に中心温度を20℃付近まで。または 60分以内に10℃付近まで冷却することが推奨されています。

さらに、米国FDAの基準(2時間以内に21℃以下、6時間以内に5℃以下)も参考に、より厳しい管理を行うと安全性が高まります。

TCS食品を可能な限り食中毒菌が増殖する危険ゾーンの温度にならないよう、冷却するまでの時間制限と温度制限が設けられています。

もし、時間制限内に既定の温度までTCS食品を冷却できなかった場合は、その商品は廃棄しましょう。

冷却記録の例

TCS食品を冷却処理するときは、1時間おきに食品の温度を測り記録します。

《TCS食品の冷却記録簿(例)》

日付食品開始時1時間2時間冷却チェック3時間4時間5時間6時間冷却チェック
2月1日 豆のスープ 9:00
60℃
10:00
48℃
11:00
25℃
×
廃棄
         
2月1日 ご飯 9:00
55℃
10:00
32℃
11:00
20℃
12:00
13℃
13:00
10℃
14:00
7.2℃
15:00
5℃

上記は豆のスープとご飯を冷却したときの記録簿です。

1時間毎に温度を計測したところ、2時間後の中心温度は、豆のスープで26℃(80°F)、ご飯は20℃(68°F)でした。

この場合、豆のスープは規定温度よりも4℃高くなっています。

わずか4℃くらいと思われるかもしれませんが、豆のスープは2時間以内に21℃以下に冷却できなかったので、ここで廃棄します。

ご飯はその後も計測し続け、6時間以内に5℃以下に冷却することができたので、そのまま保存することが可能です。

TCS食品を素早く冷却するための工夫

TCS食品は温度管理が欠かせない食品であり、加熱調理後に細菌が増えるのを防ぐためには、できるだけ早く冷却することが重要です。

効率よく冷やすために、まずは食品を清潔な浅い容器やトレイに小分けし、表面積を広げて空気に触れる面を増やすことで、冷却のスピードが大きく向上します。

食品を露出したまま冷却すると二次汚染の可能性があるので、製品の衛生や冷却機の場所など時間だけでなく環境にも配慮しましょう。

冷却機を使ったり、氷水や流水で冷却する方法も有効で、中心温度を

  • 30分以内に20℃付近
  • 60分以内に10℃付近

まで下げることを目標にします。

特に、20~50℃の温度帯は細菌がもっとも増えやすい範囲のため、できるだけ早く通過させることが大切です。

TCS食品の温度管理失敗例とリスク

TCS食品の温度管理でよくある失敗が、加熱後すぐに冷却を行わないことです。

加熱しても、ウェルシュ菌やセレウス菌のように熱に強い芽胞をつくる菌は生き残ることがあります。

そのまま放置すると、20~50℃の危険ゾーンで再び芽を出して増え始めます。

特にウェルシュ菌は45℃付近で約10分ごとに分裂するほど増殖が早く、セレウス菌は加熱に強い嘔吐毒素(セレウリド)を作るため、食中毒の原因になりやすい菌です。

また、深い容器のまま冷やすと中心部の温度が下がりにくく、長時間危険ゾーンに留まってしまうため、菌が増えやすくなります。

調理時に中心温度75℃1分以上を達成していても、その後の冷却や保存が不十分だと菌が増え、過去の炊飯米や豆類などで起きたような集団食中毒を引き起こすリスクがあります。

小規模事業者こそ、浅い容器への小分けと、冷却・温度記録の徹底が、安全管理の要になります。

まとめ

TCS食品とは時間と温度管理が必要な食品のことで、食中毒菌が増殖しやすい食品とも言えます。

TCS食品を取り扱うときは、食中毒菌が増殖しやすい危険な温度帯をできるだけ避けるため、適切なTT管理を行う必要があります。

まとめ

  1. TCS食品を管理するには時間ごとの記録も重要
  2. 加熱処理したTCS食品は2段階の冷却プロセスが必要
  3. TCS食品を適切に管理することで廃棄物の削減ができる

食品事業者は食中毒事件を防ぐためにも、TCS食品の特徴を理解し、適切な管理・保管を徹底する必要があります。

お客様にいつでも安心・安全な食品を提供するためにも、TCS食品の取扱いには十分注意しましょう。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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