HACCP導入・運用をサポートする補助金制度は?申請してスムーズな運用に役立てる

衛生管理 HACCP 運用のコツ

「HACCPの衛生管理を従業員に徹底させるため、専門家を呼びたい」
「手洗い場の老朽化が進んでいるからHACCP導入を機に整備したい」
2021年6月より完全義務化となったHACCPに沿った衛生管理ですが、未だに手探り状態のまま進めている方も少なくないでしょう。
また完全義務化に合わせて、資料はなんとか揃えたものの、円滑な運用までには至っていない事業者も多いのではないでしょうか。
しかしながら、HACCP運用のための費用や時間が捻出できない事業所もあるはずです。
「事業所の規模が小さくなればなるほど、HACCP導入や運用が上手くいっていないのが現状です。」
そこで今回は、食品製造の中小企業の課題を解決する補助金制度【HACCP支援法】について解説します。

HACCP導入・運用を助ける補助金制度―HACCP支援法

HACCP導入・運用を助ける補助金制度―HACCP支援法
「HACCPの衛生管理を従業員に徹底させるために専門家を呼びたい」
「手洗い場が古いからHACCP導入を機に整備したい」
HACCP導入に伴い、従業員の指導や施設・設備の整備などを計画している事業者も多いことでしょう。
しかしながら、いずれも資金がかかります。
事業資金からHACCP導入に係る費用を捻出できれば、いいのですが小規模事業者では難しいこともあるかもしれません。
「資金ゼロでHACCP導入・運用しなければならないのか?」
と頭を抱える経営者の方もいるかもしれませんが、待ってください。
HACCP導入の資金調達のために使える補助金制度は、意外と多いのです。
補助金は、市や地方自治体そして国で公募しています。
補助金を申請し、うまく利用すれば事業資金ゼロで施設整備や専門家を呼ぶことも可能です。
ここでは国の補助金制度である、HACCP支援法について解説します。

HACCP支援法とは

食品製造業業界の中小事業者のHACCP導入を促すために、平成10年5月に制定されました。
HACCP支援法は、限定法であり5年ごとに見直しが行われます。
現在のHACCP支援法は平成25年6月に制定され、有効期限が10年(令和3年5月まで)に制定されています。
過去の支援法は既にHACCP導入を行っているまたは導入中の事業所のみを対象にしていました。
しかし、現行法ではHACCP導入の前段階での施設や体制の整備である「高度化基盤整備」が支援対象となっています。

HACCP支援法の仕組み

  1. 「高度化計画」又は「高度化基盤整備計画」を作成
  2. 指定認定機関に提出
  3. 指定認定機関が厚生労働省と農林水産省に計画を提出
  4. 指定認定機関、厚生労働省、農林水産省からの認定
  5. (株)日本政策金融公庫に長期・低金利の融資が受けられる
ここからは、融資の限度額や期間、対象となる事業について見ていきます。

対象事業

HACCPの対象事業は次の3つになります。

HACCPの対象事業

  • 建物の整備
  • 衛生管理設備の設置
  • 監視抑制システムのための機械・設備の設置
また、上記に合わせて支出される次の費用も対象となります。

対象となる費用

  • HACCP導入に係るコンサルティング費用
  • システム開発費
  • 研究費等
  • HACCP導入施設の円滑な立ち上げに必要な費用

融資の限度額や期間

HACCP支援法の融資の限度額や返済期間は次の通りです。
《HACCP支援法の融資限度額・返済期間》
融資の限度額 負担額の80%以内または20億円のいずれか低い額
返済期間 10年超15年以内(うち据置期間3年以内)

対象となる食品事業者

HACCP支援法の対象は次の2つの条件を満たしている企業になります。

対象となる食品事業者

  • 食品の製造又は加工の事業を行う中小企業者
  • 資本金3億円以下または従業員300人以下

HACCP支援法で補助金を受けるための申請方法

HACCP支援法で補助金を受けるための申請方法
HACCP支援法での融資金額は、最大20億円と金額も高額です。
そのため、認定を受けるには自社の課題と融資を受けた後に得られる利益についてしっかりと明記する必要があります。

必要書類

HACCP支援法を受けるための申請書は次の通りです。

必要書類

  • 高度化計画の認定を受ける…「高度化計画申請書」
  • 高度化基盤整備計画の認定を受ける…「高度化基盤整備申請書」
なお高度化基盤整備計画の作成方法については、以下の農林水産省のページをご覧ください。

申請場所

HACCP支援法の融資を受けるには、まず指定認定機関の認定を受ける必要があります。
25あるそれぞれの食品業者の指定認定機関は次の通りです。
対象となる食品の種類と指定認定機関

HACCP支援法のほかに活用できる補助金はある?

HACCP支援法のほかに活用できる補助金はある?
HACCP導入や運用に使える補助金は、国が行っているHACCP支援法だけではありません。
各都道府県はもちろんのこと、市町村単位でも補助金制度を行っています。
しかしながら、補助金の情報は誰かが親切に教えてくれるわけではありません。自ら情報を取りに行く必要があります。
また各都道府県や市町村が行っている補助金制度は、公募期限が1ヶ月未満と短いものもあります。
資金問題でHACCP導入や運用ができない事業経営者こそ、常にアンテナを張り使える補助金がないか探しましょう。
各都道府県の補助金情報については、次のサイトが参考になりますのでぜひご覧ください。

食品製造業が抱えるHACCP導入・運用の課題は「資金」

食品製造業が抱えるHACCP導入・運用の課題は「資金」
農林水産省は令和2年6月に、「令和元年度の食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況の実態調査」の結果を発表しました。
ここでは、その調査結果を見ながら、食品製造業のHACCP導入・運用で抱えている問題を探っていきます。

令和元年10月時点でHACCP導入及び導入中の企業は40.5%

結果報告書によると、令和元年10月現在でHACCPを導入済みの事業者は22.5%、導入途中が18.0%となっています。
令和元年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果(概要)
つまり、調査対象の事業者の約4割は、既にHACCPに沿った運用を行いはじめていることがわかります。
一方で令和元年10月時点で、未だに「導入を検討している、未定である」の事業者も6割以上を占めており、令和2年6月30日の完全義務化に果たして間に合ったのか気になるところです。

小規模事業者でHACCP導入している事業所は10%

事業者の売上規模別のHACCPの導入状況を見てみると、次のようなことがわかっています。
令和元年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果(概要)
  • 売上規模100億円以上…約9割導入済
  • 売上規模5,000万~1億円未満及び5,000万未満…約1割導入済
このことから、小規模事業者のHACCP導入が遅れているのが明らかとなりました。

HACCP未導入の事業所が抱えている問題

HACCP未導入の事業所を対象に「導入ができない理由」を尋ねたところ、次のような結果が出ています。
令和元年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果(概要)

  • 「施設・設備の整備に係る資金」(62.3%)
  • 「HACCP導入までに係る費用(コンサルタントや認証手数料など金銭的問題)」(47.0%)
  • 「HACCP導入後に係るモニタリングや記録管理コスト(金銭的問題)」(35.4%)
小規模事業所の多くはHACCP導入にかかる資金が捻出できないことにより、「HACCP導入が進められない」という結果となっていたのです。
HACCP導入に必ずしも【施設・設備の整備】は必要ありませんが、運用を円滑にしていくために必要な場合もあります。
またHACCP導入について右も左も分からない事業者であれば、真っ先に思いつくのが【施設・設備の整備】でしょう。
正しい知識を得るためのコンサルを雇う費用も安くはありません。
このように費用が捻出できず、HACCP導入や運用ができない小規模事業者が多いことが調査結果で明らかとなりました。

まとめ:補助金を使ってHACCP導入の費用を捻出しよう

まとめ:補助金を使ってHACCP導入の費用を捻出しよう
食品製造業を営む中小企業の多くは、HACCP導入や運用に係る費用の捻出に頭を悩ませています。
ただでさえ、新型コロナウイルス感染症で業務に多大な影響が出ているのに、HACCP運用にまで手が回らないというのが本音ではないでしょうか。
HACCP支援法は、中小企業がHACCP導入や運用に必要な資金調達を低金利・長期間融資でサポートするものです。
認められれば、設備に必要な資金を調達することができます。

まとめ

  • HACCP導入・運用にかかる資金調達に悩む中小企業が多い
  • HACCP支援法は施設・設備の整備だけでなくコンサル費も対象となる
  • 国の補助金以外にも各都道府県や市町村でHACCPに使える補助金がある
HACCP支援法だけでなく、各地方自治体や市町村の補助金制度でHACCP導入に使えるものもあります。
資金調達に悩んでいる経営者は、これらの補助金を活用してHACCPの運用に役立ててみてはいかがでしょうか。