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食品の保温の正しい温度管理|現場で多い失敗と是正対応まで解説

食品の保温の正しい温度管理|現場で多い失敗と是正対応まで解説

食中毒対策

食中毒飲食店

調理後の食品を保温して提供する――飲食店や惣菜店、給食・弁当づくりの現場では、ごく当たり前の光景です。

けれどもその「当たり前」の裏側で、温度管理があいまいなままになっているケースは少なくありません。

「設定は60℃にしているから大丈夫」「忙しくて毎回は測れていない」そんな状態が続くと、知らないうちにリスクを抱えたまま営業してしまうことになります。

食中毒は、特別な失敗がなくても起こります。だからこそ大切なのは、日々の保温管理を“感覚”ではなく“仕組み”として整えることです。

この記事では、現場で無理なく実践できる温度管理の考え方と、その具体策を解説していきます。

食品を保温すべき温度の基準

調理後すぐに提供できない場合、食品は一定時間「保温」することになりますが、その温度管理を誤ると、かえって食中毒リスクを高めてしまうことがあります。

ここでは、現場で最低限おさえておきたい「安全な保温温度の基準」と、その考え方について詳しく見ていきましょう。

食品保温は何度以上が安全か

一般的な食品衛生管理の考え方では、調理済み食品の中心温度を60℃以上で保つことが安全の目安とされており、この温度帯であれば多くの食中毒菌の増殖を抑えることができます。

一方、60℃を下回ると「危険温度帯(5~60℃)」に入り、細菌が増えやすい状態になるためです。

また設定温度が60℃以上であっても、不具合や庫内によって温度差が出ることがあります。

設定温度ありきではなく、実際の食品の温度が60℃以上になっているかをチェックしましょう。

大量調理施設衛生管理マニュアルの考え方

学校給食や病院など、1回に300食以上を提供する施設を想定した「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、加熱調理した食品をすぐに提供できない場合、0℃以下または65℃以上で管理することが求められています。

加熱調理した食品をしばらく保管するときに、危険温度帯(10℃~60℃)に放置してしまうと、ウェルシュ菌などの食中毒菌が増殖してしまうためです。

保温が必要な場合は、保温庫などを使って食品の中心温度を65℃以上に保ち、定期的に温度計で確認・記録することが基本となります。

液状の食品は時々かき混ぜて全体を均一に温め、固形の食品は詰め込みすぎず隙間をあけて、温風がしっかり回るように配置しましょう。

理想は調理後2時間以内に喫食されることですが、提供までの間も65℃以上を維持できていれば、細菌の急激な増殖は抑えられます。

保温でよくある失敗と改善ポイント

調理済食品の保温管理では、「設定温度」「保温時間」「庫内環境」の3点を誤ることで、知らないうちにリスクを高めてしまうことがあります。

ここでは、現場で特に多い失敗例と、その具体的な改善方法を詳しく見ていきましょう。

設定温度が低すぎる

設定温度が低すぎることは、調理済食品の保温でよくある失敗の1つです。

機器の目盛りを60℃に合わせていても、実際の庫内温度や食品の中心温度が55℃前後までしか上がらず、危険温度帯(10~60℃)に入ってしまうケースが少なくありません。

主な原因は次の通りです。

保温庫内の温度が下がる理由

  • 機器の経年劣化
  • 料理を詰め込みすぎて温風がうまく循環しない
  • ドアの隙間から熱が逃げてしまうこと

改善策としては、まず非接触温度計(表面確認用)やプローブ温度計(刺入式)を使って、食品の中心温度を定期的に測定し、65℃以上を保てているかを確認することが重要です。

そのうえで、設定温度は70℃以上に上げ、庫内は7割程度までに抑えて隙間をあけ、液状の料理は時々かき混ぜて全体が均一に温まるようにするなど工夫が必要です。

また保温庫は月に1回、庫内温度の表示モニターの数値と実際の庫内温度が一致しているかの確認や温度計の校正を実施しましょう。

合わせて定期的な機器点検も重要です。

また保温庫のドアの歪みで熱が逃げている可能性もあります。保温庫のドアが確実に閉まるようパッキンの破損やゆがみがないかを確認・補修することで熱の逃げを防ぐことができます。

保温時間が長すぎる

保温時間が長すぎることは、調理済食品の保温でよくある失敗の1つです。

調理済み食品を6時間以上、保温庫であたため続けていると、たとえ中心温度65℃以上を維持していても、長時間の保温によって温度ムラや一部の温度低下が生じます。

その結果、ウェルシュ菌などの芽胞をもつ菌が発芽・増殖しやすくなり、リスクが高まるのです。

ウェルシュ菌のような耐熱性のある菌は、60℃を超えても芽胞の状態で生き残り、いったん温度が下がると急速に増殖し、条件がそろうと毒素を産生することがあります。

ビュッフェ形式で大量に提供する場面では、過去にも食中毒事例が多く報告されています。

大量調理の指針では2時間までが安全な許容範囲とされています。

2時間を超える場合は小分けにして、こまめに新しく調理・補充するとよいでしょう。

保温庫内の食品は1~2時間ごとに残量を確認し、残りが3割を超えている場合は廃棄・入れ替えを行うといったルールを決めておくと管理しやすくなります。

あわせて、温度と時間の記録を必須とし、「調理後1時間経過」などのラベルを貼って提供時間を見える化することで、スタッフも利用者も状況を把握しやすくなります。

また、保温時間をできるだけ短くするため、料理を大量に作り過ぎず、提供分のみ作ることも大事です。

温度ムラ・乾燥・劣化

温度ムラ・乾燥・品質劣化は、ビュッフェなどでの保温管理におけるいわば「三大トラブル」です。

庫内に料理を詰め込みすぎると温風がうまく回らず、角に置いた食品の温度が50℃台まで下がる一方、中心部だけが過度に加熱されることがあります。

その結果、温度の低い部分では細菌が増えやすくなり、安全性のリスクが高まるのです。

また、長時間の保温によって水分が失われると、料理が乾燥して食感がパサつき、見た目や味の劣化につながります。

これが積み重なると、満足度の低下やリピート離れの原因にもなるでしょう。

こうした問題の主な原因は、過密な配置と通気の悪さです。

多くの保温庫は上部に熱がこもりやすく、下部や隅は冷えやすい構造になっているため、何もしないと温度差が生じやすくなります。

改善策としては、庫内容量を全体の6~7割程度に抑え、食品同士の間に5cm以上の隙間をあけることが基本です。

さらに、定期的にトレイの位置を入れ替えたり、液状のものは軽くかき混ぜたりして、温度が均一になるよう調整しましょう。

乾燥対策としては、蓋付き容器や湿度保持シートを活用し、水分の蒸発を抑える工夫が有効です。

あわせて、プローブ温度計で複数箇所の温度を定期的に測定し、65℃を下回るものがあればすぐに補充・入れ替えを行いましょう。

保温中の温度測定と記録のポイント

保温庫や保温器の設定温度を合わせているだけでは、食品の安全性は保証できません。

本当に大切なのは、「今この食品が何度なのか」を自分たちの目で確認することです。

ここからは、どこを・どれくらいの頻度で測ればよいのか、温度測定と記録の基本を見ていきましょう。

測るべき場所と頻度

保温中の温度測定では、食品の表面ではなく中心部の温度を確認することが基本です。

中心部は熱が伝わりにくく温度が上がりにくいため、プローブ温度計を深さ5cm以上差し込んで測定します。

庫内全体の状況を把握するために、上部・下部・角・中央の4か所を測定し、液体の食品は軽くかき混ぜてから複数箇所を確認しましょう。

いずれも65℃以上を保てているかを基準にチェックします。

例えばビュッフェの場合、最低限の測定タイミングは次の通りです。

測定のタイミング

  • 提供開始時
  • 提供中は1~2時間ごと
  • 補充時
  • 提供終了前

測定の流れとしては、まず非接触温度計で庫内全体の温度分布をざっと確認し、その後、プローブ式温度計で中心温度を正確に測るという二段階の確認が有効です。

中心温度と表面温度のちがい

調理済み食品は、保温器や保温庫の温度設定を65℃にしていても、中心温度と表面温度が設定温度に達していないことも少なくありません。

中心温度と表面温度の違いは、ビュッフェの保温管理において安全性を左右する重要なポイントです。

表面は庫内の温風に直接さらされるため70℃を超えやすい一方で、食品の中心部は熱が伝わりにくく、50℃台にとどまりやすい傾向があるためです。

その結果、食品の中心部が細菌の増えやすい危険温度帯に入ってしまうことがあります。

「大量調理施設衛生管理マニュアル」で示されている65℃以上という基準も、あくまで「食品の中心温度」を指しています。

表面だけが高温でも、内部でウェルシュ菌などの芽胞が生き残り、毒素を産生するリスクは否定できません。

測定の際は、プローブ温度計の先端(感温部)が食品の中心部に届くよう斜めに刺したり・中心に刺したり・横から刺したりしましょう。

中心部に刺したら、10秒ほど待って表示が安定してから読み取ります。

液体の食品は軽くかき混ぜてから複数箇所を測定し、固形の食品は最も冷えやすい底面中央を重点的に確認しましょう。

表面温度の測定は庫内の全体傾向を見る参考として活用し、中心温度が基準に達していない場合は、迷わず廃棄・入れ替えを行うというルールを徹底することが大切です。

記録を残す意味

保温中の調理済食品は定期的に温度測定をし、その結果を記録していきましょう。

温度測定の記録を残せば、HACCPに基づく衛生管理を行っていたことを示す科学的な証拠になるためです。

万が一、食中毒などのトラブルが発生した場合でも、「65℃以上を維持していた」という事実を記録で示すことができれば、原因の切り分けや説明がスムーズになります。

「大量調理施設衛生管理マニュアル」でも、これらの記録は1年間の保管が求められており、保健所の指導や立入検査の際に、すぐ提示できる状態にしておくことで、指摘や是正リスクを減らすことができます。

日常業務の中でも、記録は単なる義務ではなく、私たちがきちんと管理を行ったという証拠となり、いざというときに私たちを守るための資料になります。

また過去のデータを振り返ることで、特定の時間帯に温度が下がりやすい、特定の配置でムラが出やすいといった傾向を把握でき、庫内レイアウトの見直しや機器不調の早期発見につなげることができます。

スタッフ教育の場で「なぜ測るのか」「なぜ記録するのか」の目的を共有することで、現場全体の衛生意識を高める効果も期待できるでしょう。

異常が起きたときの対応と是正措置

どれだけ気をつけていても、保温中の食品で異常が起こることはあります。

そのときに「どう動くか」「何を判断基準にするか」を決めておかないと、現場は混乱しやすくなります。

ここからは、温度が下がっていた場合の対応と、その後の見直し方法を確認しましょう。

温度が下がっていた場合の対応

保温中の食品の温度が60℃未満に下がっていることが確認された場合は、まずその食品をすぐに庫内から取り出し、提供を中止します。

HACCPの考え方では、食品が危険温度帯(10~60℃)に2時間以上滞在すると、ウェルシュ菌などの増殖リスクが高まるとされているためです。

60℃未満に下がっていることが確認された食品は、原則としては廃棄しましょう。

再提供する場合は中心温度75℃で1分以上の再加熱を行い、その後に新しい料理として補充します。

温度低下が起きた時間を必ず記録し、4時間以内であれば再加熱による対応を検討、4時間を超えている場合はすべて廃棄する、というルールを決めておくと判断に迷いません。

温度低下の原因の確認と是正

異常が確認された後、その商品の提供をすばやく中止することも大事ですが、あわせて原因の確認と是正をしましょう。

なぜなら、原因を確認し是正しなければ新たに調理済食品を提供しても、時間が経つと同じように60℃未満になる可能性があるためです。

庫内温度計の表示、機器の設定温度、扉の閉まり具合や隙間、料理の詰め込みすぎなどをチェックし、必要に応じて設定温度を70℃に引き上げる、配置に余裕を持たせるといった対策を行います。

その後、次回測定で改善されているかを必ず確認しましょう。

記録と再発防止の考え方

異常が発生したときは、記録を必ずとりましょう。

異常の発生と対応の記録は、HACCPのPDCAサイクルにおける「Check(確認)」と「Act(改善)」の土台となる重要な要素です。

記録があることで、是正措置の原因を整理し、再発防止につなげることができます。。

記録書には、次のような項目を具体的に記載します。

異常発生時の記録

  • 発生日時
  • 異常の内容(例:中心温度が58℃まで低下)
  • 即時対応(例:廃棄量2kg)
  • 原因分析(例:庫内が過密で温風が循環していなかった、ピーク時にドアの開閉が多かったなど)
  • 是正措置(例:配置の見直し、設定温度を70℃に変更)
  • 検証結果(次回測定で65℃以上を確認)

これらを記録したうえで責任者が承認し、最低でも1年間保管します。

さらに、記録は保管するだけでなく、月次レビューなどで振り返り、傾向を分析することが重要です。

たとえば「お客さんが少ない時間帯に温度低下が多い」といったパターンが見えてくれば、配置や補充方法の見直し、スタッフへの追加教育につなげることができます。

デジタルで記録していれば、グラフ化や集計によって変化を視覚的に把握でき、保健所の指導時にも客観的な証拠として提示できます。

再発防止を考える際には、「なぜ」を繰り返して掘り下げる5Why分析が有効です。

機器の不具合が原因であれば修理や更新を、人為的なミスであればマニュアル改訂や教育の強化を行い、その内容を衛生管理計画に反映させていきましょう。

まとめ

調理済食品の保温は「設定して終わり」ではなく、食材の(実際の)中心温度を基準にした運用が重要です。

一般的には60℃以上、さらに大量調理では中心温度65℃以上(または0℃以下)での管理が求められます。

まとめ

  • 食品の保温は「設定温度」ではなく「中心温度」で管理することが重要
  • よくある失敗は「低温・長時間・ムラ」で、仕組みで防ぐ
  • 異常時の対応と記録が、安全管理と再発防止の要になる

現場では設定温度不足、保温の長時間化、庫内の温度ムラや乾燥が起こりやすく、詰め込み過ぎや通気不良が原因になりがちです。

対策として、中心温度を定期測定し記録を残すこと、配置や設定温度の見直し、小分け補充などのルール化が有効になります。

温度低下が確認された場合は提供中止を基本とし、再加熱・廃棄判断や原因是正、記録による再発防止につなげます。

個人の感覚ではなく仕組みで管理することで誰が作業しても同じ結果が得られ、安定した衛生管理の土台になります。

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【記事監修】株式会社エッセンシャルワークス 代表取締役 永山真理
HACCP導入、JFS規格導入などの食品安全、衛生にまつわるコンサルティング、監査業務に10年以上従事。形式的な運用ではなく現場の理解、運用を1番に考えるコンサルティングを大事にしている。

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